12枚目・タイムトラベル研究者【後編】④
読みやすさのため、内容を分割して調整しました。
文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。
作者:服を着た猫
「ありがとうございます!!これで私元の世界に帰れるんですね!?」
「喜ぶのはまだ早い。問題は多々あると言っただろ」
「そ、そうでした。
問題って何ですか?私たちにお手伝いできることですか?」
「いや、そう言ってもらえるのはうれしいが、手伝ってもらえるようなことは何もねぇ。
問題は大きく分けて3つ。
まずエーテリアを大量に集めないといけない。
これはかなりの時間を要する上に、エーテリアはある一定量1ヶ所に集めると勝手にゲートを形成してしまうから、少量ずつ分けて保管しなきゃならん。
次にエーテリアを1ヶ所に集め、パラレルゲートを発生させる装置を開発しないといけない。これも時間がかかるし、金もかかる。
最後に、発生させたゲートの座標を指定する方法が全く分からない。これが一番の問題だ」
「えっ?ゲートって発生した場所は同じになるんじゃないのか?
俺たちは2人とも桜門神社の社殿の前でゲートを見て、俺が泉美の腕を引っ張ってこっちの世界に引きずり込んじまったんだけど・・・」
驚きながら話す泉水の言葉に、興味深そうに耳を傾けていた博士は少し考え込んでから、持論を話し始めた。
「恐らくだが、世界がこすれ合ってできた傷が偶然にも同じ座標に生じたためだろう。
同じ座標に同時に発生したゲートが、繋がってしまった・・・そう考えるしかない」
「ってことは、他のゲートは違うのか?」
「オレが観測した限り、ゲートの出入り口の座標は違うことの方が多いようだ。
ある時は水が噴き出してきたり、岩がゴロゴロあふれ出してきたり、スゴイ勢いで周りの物を吸い込んできたり、なぜかネズミがあふれ出してくるゲートもあった。
つまり、ただゲートを開くだけではダメだ。人ひとり通れるゲートを開けられるエーテリアを集めて、ゲート発生装置を作成することはもちろん、狙ったところに座標を指定できる方法を見つけないと・・・
どんなに短く見積もっても、6ヶ月は掛かるだろうな」
「ろ、6ヶ月も!?」
驚きの声を上げる泉美に、博士は表情を変えずに応える。
「最善は尽くすが、まぁ諦めろ。
逆に6ヶ月、こっちの世界を楽しむんだな」
「そ、そんなぁ~」
あからさまに肩を落とす泉美の姿を見て、泉水も困った表情になってしまったが、小さくため息をつくと苦笑しながら話しかけた。
「頭を切り替えようぜ。
お爺様の尽力で来週には高校に通えるんだし、一応知ってる顔ばっかりなんだしさ。ちょっと変わった留学でもしてると思って・・・な?」
「人ごとだと思って・・・」
泉水の言葉に、泉美は恨めしそうな声で応える。
だが、すぐに顔をほころばせた。
「でも、そうだね。なるようにしかならないよね。
こっちの瑞希とも仲良くなれたし、向こうの世界の生意気な大樹とは真逆の、素直でカワイイ大樹ともっといたいしね」
ニッコリと笑顔で見つめてきた泉美に、大樹は真っ赤になってうつむいてしまった。
そんな大樹を見てクスクスと笑う泉美と、ニヤニヤ笑う泉水。
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≪登場用語説明≫
DNA
分類:科学知識
DNAは通称、生物の設計図と呼ばれることがあり、植物を含む生き物の細胞の中に必ず存在している。
生物の姿はもちろん、骨や筋肉、内臓、更にはその働きから、一部の性格にまで影響していると言われ、生物のあらゆる情報が詰まっているまさに設計図である。
また、このDNA両親から半分ずつ受け継ぐ特性があり、その特性を使って両親や肉親の特定検査に利用されることもあり、またDNAは一人一人違っており、他人同士が同じDNAを持っている可能性は天文学的に低いと言われ、個人特定のためにDNA検査として利用されることもある。
今回、イズミたちに博士が渡したDNA検査キットは口から頬の内側を綿棒で擦り、その綿棒に付いたわずかな細胞に含まれるDNAを使って二人のDNAの共通点がどれだけ多いかを調べる目的で行われた。
二人のイズミは世界こそ違うが、同じ両親から生まれた同一の人間である。
博士の考えでは二人の父方のDNAは違うが、母方のDNAは同じ、つまり子供になる卵子は同じだろうと考えている。
当たり前だが、卵子にもDNAは含まれており、この卵子に含まれていたDNAが一致、つまり二人のDNAの半分は絶対に一致する。
博士はそう推測しているため、検査結果は肉親である可能性が高いという結果が出るだろうと博士は考えていると思われる。
遺伝子
分類:科学知識
よくDNAと遺伝子は混同されがちだが、厳密には全く違う。
遺伝子とはDNAの中の実際に生物に作用する塩基と呼ばれる物を読み解くための言葉を挿すものとされている。
分かりやすく例えるとDNAという本の中に書かれた文字列、これを遺伝子と呼んでいる。大雑把に説明するならばこのように例えられる。
パラレルゲート
≪通称、光の玉と呼んでいた物の正式名称≫ その③
分類:現象
空気を引き裂くような音と共に現れ、月のような淡い黄色い光を放つ球で、輝いているが熱はなく、世界同士の空間を繋げてしまう光り輝く球体。
この光の玉の正体は【エーテリア】と呼ばれる謎の物質が寄り集まったモノだと、博士は説明してくれる。
ゼロクロックワールド
分類:世界
博士の説明によると、パラレルゲートに関係するものらしいが、とりあえず後回しにされた。
エーテリア
分類:物質
パラレルゲートを形成している物質で、それ自体が淡い黄色い光を発している。
名前の由来は、かつて光を伝える媒体であると考えられていた幻の物質【エーテル】にある。
エーテリア自体は傷ついた空間を修復するための、人体の血小板のような役割があるらしく、これによって発生したパラレルゲートはまさに世界のかさぶたと言える。
この世界のかさぶたであるパラレルゲートを形成する際に近くの世界と、世界同士を繋げてしまう作用があり、泉美はこの作用によって出来た道を通って泉水の世界に来てしまった。
エーテリアにより発生したパラレルゲートは、それぞれの世界双方で同じ座標に発生する訳ではなく、繋がる座標はバラバラになる。
泉美が通ったゲートはたまたま同じ世界の座標に同時発生したパラレルゲートの出入り口が繋がったレアケースだったようで、博士はパラレルゲートの出入り口の座標軸を指定する研究に、着手することになった。
ワールドツリー形態
分類:世界
泉美のいた世界や泉水たちがいる世界を形成している世界の形、それに博士が付けた名前。
全ての世界は一つの木のような大きな幹から伸びた枝に当たる部分であり、世界に違いが生まれると枝が分かれ世界が増えると、博士は考えている。
その世界の枝が何らかの原因でこすれ合った時に生まれる空間の傷、この傷によりパラレルゲートが発生する。




