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9枚目・話題の占い師【前編】④

読みやすさのため、内容を分割して調整しました。

文章の一部を変更しましたが、物語の内容には変更はありません。


作者:服を着た猫




目的地である占いの館はイズミたちが住んでいる住宅街とは線路を挟んで対極に位置するため、近くまで来た時には思っていたよりも時間が経っていた。




「えっと・・・その占い師がいるのって、このビルで良いんだよね?」


泉美の言葉に鈴蘭がスマホの画面を見ながら答えた。


「うん、地図アプリのナビ見ながら歩いて来たから、ここで間違いないよ」

「話には聞いていたけど、本当にボロボロだな」

「うん、ボロボロだね」


泉水の言葉に同意する大樹、彼らの言う通りイズミたちが到着した占い師が占いの館を開いているビルは、両側に大きく新しいビルに挟まれたボロボロの五階建ての小さなビル。

まるでそこだけ時が止まり、取り残されたようなさみしい見た目だった。


「築何十年かな?なんか50年以上経ってるようにも見えるけど?」

「いや、それはさすがにないだろう。3、40年ぐらいじゃないか?」

「どちらにしろ、結構経ってるよね・・・

本当に人気占い師がいるのかな?」


泉美と泉水がそんな話をしていると、いつの間にかビルの入り口の前に来ていた大樹が答えた。


「間違いないみたいだよ、このビルの2階だってフロアー案内板に書いてある」

「マジかよ・・・ホントだ【占い館≪ルナ≫】って書いてある。

他にも何件か入ってるな・・・名前だけじゃ何やってるのか分かんないけど」


泉水がそんな感想を言っていると、泉美も不思議そうに言った。


「こんなボロボロのビルによく借り手がいるよね」

「まあ、逆に家賃が激安なんだろ」

「確かに、これだけ古ければ家賃は安いよね。メンテナンス費は掛かりそうだけど」

「だな」


所々外装や塗装が剥がれているビルについて感想を言い合っていると、スマホを見ていた鈴蘭から声がかかった。


「お兄ちゃん、そろそろ中に入らない?もうすぐ10時になるし」

「もうそんな時間?無駄話してる場合じゃなかったな行くぞ」

「そうだね。急いでいかないと」


泉水の言葉にうなずきながら、イズミたちは階段を上り始めた。



2階へと上がった4人が見たのは、入り口に置かれた【10時:水輝 鈴蘭様】と書かれたウェルカムボード。

その後ろのドアは開け放たれ、赤いベルベットの布がのれんのように床まで垂れ下がって、入り口をふさいでいた。

独特の雰囲気の入り口に4人は小声で話し合う。



「誰から行く?」

「兄ちゃんからどうぞ」

「俺!?いやいや、ここはスズだろ」

「えっ!?あたし!?」

「そうだね。予約したのも、ウェルカムボードに書かれてるのも、スズちゃんだし」


3人の視線を一身に浴びた鈴蘭は一瞬たじろぐ。


「っ!!・・・分かったよ!入るよ!」


3人の視線の圧に負けたのだろう、鈴蘭は渋々といった様子でベルベットののれんに右腕を伸ばしていく。

1枚だと思われたベルベットののれんは、2枚だったようで中央で左右に分かれ、鈴蘭は吸い込まれるように中へ入っていく。


「こんにちは~・・・10時に予約した水輝です~」


恐る恐るといった様子で話す鈴蘭に続き3人も中へと入っていく。

中はロウソク型LEDライトの明かりだけで薄暗く、壁には入り口と同じ赤いベルベットの布が張り付けてあり、所々、波の形を模したようにたわんで壁を装飾していた。

独特の雰囲気に4人はしばらくキョロキョロと室内を観察し続けた。


やがて薄暗さに目が慣れてきたころ、鈴蘭が不思議そうな声で言った。


「【スンスン】・・・ねぇ、何か甘いような香水みたいな匂いしない?」

「え?【スンスン】・・・本当だ、甘い香水みたいな匂いがする」


鈴蘭の言葉に泉美が同意すると、部屋の奥から声の高い男の声が聞こえてきた。


「ようこそお越しくださいました。

ウェルカムドリンクとして、ローズティーをご用意しました。どうぞこちらへお越しください」


随分と若い男の声だなと思いながら、泉美は返事を返した。


「すみません、私たち予約した水輝さんに同行した者です。一緒にそっちへ行ってもいいですか?」

「どうぞ、同行したあなた方3人分、合わせて4人分のローズティーを用意していますからご安心ください」

「ど、どうして私たちが4人組だと分かったんです!?」

「これでも占い師ですから、さあ、怖がらずにどうぞ」


4人は顔を見合わせ、うなずくと奥へと進んでいく。

やがて薄明りの中に横一列に並べられた4脚の椅子とロウソクの置かれたテーブルが見え、4人は右から大樹、泉美、鈴蘭、泉水の並びで座った。


「本当は紅茶やコーヒーをご用意するべきなんですが、あいにくとボクはカフェイン系の刺激物がダメな体質なもので。

ノンカフェインのお茶やコーヒーでもよかったんですが、今日は香りが気に入っているローズティーを用意させてもらいました」


声の聞こえてくる方向から、テーブルの向かい側に座っていると思われる占い師。

だが、その姿はロウソクの明かりだけでは、僅かにシルエットが見える程度ではっきりとは見えなかった。


「さて、今回の依頼内容を詳しく聞く前に、ボクの自己紹介をしますね」


占い師がそう言うと【ズズー】という椅子を動かす音が聞こえてきた。

そして次に【コツコツ・・・】という足音が机から離れるように聞こえてくる。

そのことに4人が疑問に感じた、次の瞬間。


【パチッ】


スイッチを入れる音と共に、天井の明かりが点いた。


「キャッ!」

「まぶし!」

「うわっ!」

「まぶしい!」


薄暗さに慣れていた4人は、まぶしさに声を上げる。

やがて目が慣れると明かりの正体が、天井から垂れ下がる電球型の明かりだと分かった。

同時に暖色系の明かりに包まれた部屋で、彼らは驚き同じ言葉を叫んでいた。


「「「「こ、子供!?」」」」


そこに立っていたのは、一見黒髪に見えるほど濃い濃紺の髪に金色の瞳の見た目、小学三、四年生の子供だった。

髪型は耳が隠れるようなショートカットで、左手の親指には金色の指輪がはめられていた。

それだけでも少し変わっていると思うのだが、その服装もかなり変わっていた。

着ている服は白いワイシャツに髪と同じ濃紺の燕尾服に青い蝶ネクタイ。

さらに頭の左側には、黒色のミニシルクハットが斜めに頭にかぶさっていた。

ただミニシルクハットからは紐が伸びておらずヘアピンのようなピンで止められていると思われた。


「まっ、その反応も想定済みですけど、慣れませんね」


ため息交じりにそう言うと、男の子は机に向かって歩いてくると改めて4人の向かい側に座った。


「ボクの見た目で毎回驚かれるのが嫌で普段は部屋を暗くして接客しているのですが、今回は特別です。

改めましてボクがこの占いの館の主人であり占い師です。

信じられないかもしれませんが、これでもあなた達よりもずっと年上なんですよ」

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