【9.】 『仮名?しいヤツら』の話 [おまけ]
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おまけ、というか【番外編】に近い内容です。
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【仮名?しいヤツら】おまけ編
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そろそろ「記号」も打ち止めとなりつつありますが、今回は最新の話題にかこつけた『おまけ編』です。
今回ご紹介するのは【仮名だけどカナじゃない記号たち】です。具体的には『変体仮名』と呼ばれるものです。
……「変態」じゃありませんからね! 『変体』です。つまり【普通のものとは違う、仮名文字】のことです。
【変体仮名】は、簡単に言えば『ひらがなやカタカナになれなかった、古い仮名文字』です。
現在使用されている「平仮名」「片仮名」は、明治三十三年(1900年)八月二十日付けで改正施行された『小学校令施行規則』の第十六条において決定されたものです。(いわゆる「第一号表仮名」)
「仮名文字」の歴史は古く平安以前に遡りますが、長く統一されなかったこともあって色々なバリエーションが存在しました。長い年月を経て、多少は淘汰整理されてきましたが、それでも百を超える「異体字」が存在していました。
明治政府によって、現在の四十八文字×二パターン(かな/カナ)に統合された際、除外されてしまった「異体字の仮名」のことを『変体仮名』と呼びます。
現在では滅多に使いませんが、ある種の成句(花札の「あかよろし」など)や商店の看板文字(ウナギ屋など)で目にすることがあるでしょう。
しかしながら。当然「異体字」ですので、長くコンピュータ文字コードには採用されてきておりませんでした。表示させるには、特別なフォントが必要だったのです。
これがですね。
今年2017年6月20日より[10.0]にバージョンアップしました国際的文字コード【unicode】に、代表的な変体仮名285文字が追加されたのです! ばんざーい。
-----【参照表】uniode10.0[変体仮名]表-----
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《参照》 The Unicode Consortium サイトより
“A set of 285 Hentaigana characters used in Japan (historic variants of Hiragana characters)”
<http://blog.unicode.org/2017/06/announcing-unicode-standard-version-100.html>
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unocode番号としては[U+1B000]からです。
まだ、多くのIMEではunicode10.0に未対応です。実際に表示できるようになるのはまだまだ先ですが、嬉しい話題です。
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ところで。
「変体仮名」の話をすると、よくあるのが【旧仮名遣い】との混同です。
『ヰタ・セクスアリス』
『ヱヴァンゲリヲン』
上記で出てくる【ヰ】や【ヱ】は、《変体仮名》ではありません。
これは《旧仮名遣い》で使用される文字ですね。
冒頭で挙げた『第一号表』で規定されている【普通の仮名文字】です。
具体的には「わ行」の【い】と【え】が該当します。
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わ行の【い】 【ゐ】(ひらがな)/【ヰ】(カタカナ)
わ行の【え】 【ゑ】(ひらがな)/【ヱ】(カタカナ)
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他にもあります。
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【う゛ぃ】に相当するもの:【ヸ】(カタカナ)
【う゛ぇ】に相当するもの:【ヹ】(カタカナ)
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……そんなの、使いませんか? そうですか。
日本語で「文字同様に使う記号」には、他に【踊り字】と呼ばれるものがあります。これは『同じ文字を続ける場合の、省略記号』です。
具体的には、以下のものがあります。
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・漢字一文字の繰り返し記号
【々】[unicode:0X3005]
・清音ひらがな一文字の繰り返し記号
【ゝ】[unicode:0x309D]
・濁音ひらがな一文字の繰り返し記号
【ゞ】[unicode:0x309E]
・清音カタカナ一文字の繰り返し記号
【ヽ】[unicode:0x30FD]
・濁音カタカナ一文字の繰り返し記号
【ヾ】[unicode:0x30FE]
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・漢字二文字の繰り返し記号(※「二の字点」と言う)
【〻】[unicode:0x303B]
・清音ひらがな及び漢字二文字以上の繰り返し記号(※「くの字点」と言う)
【〱】[unicode:0x3031] *JISX未登録
・濁音ひらがな及び漢字二文字以上の繰り返し記号(※「くの字点」と言う)
【〲】[unicode:0x3032] *JISX未登録
◎JISX登録の「くの字点」
【〳】[unicode:0x3033] ※くの字点(上)
【〴】[unicode:0x3034] ※濁音くの字点(上)
【〵】[unicode:0x3035] ※くの字点(下)
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基本的に「くの字点」は『縦書き』でしか用いません。実際にウェブ上で使うことはほとんど無いでしょうが、せっかくなので一緒にご紹介。
なお、これらの「繰り返し記号」ですが、一般的なIMEなら『おなじ』で変換すると候補に出てくることが多いです。
実際に利用する機会はほとんどないでしょうが、『書籍化(印刷出版)する!』という際には活用できるかも知れませんね。
歴史ジャンルのみならず、異世界ファンタジー作品などの『古代語を話しているキャラ』の台詞に使ってみても面白いかも知れません。
言葉も文字も変わりゆきます。
「変体」するだけでなく、『変態!』との褒め言葉(?)をいただくような作品もまた素敵ですよ……きっと。
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そろそろネタ切れではありますが、まだ【完結】にはいたしません。
もう少し様子見した上で、あと一つか二つほどネタを仕込みましたら、一旦打ち止めとさせていただく予定です。