表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/49

11.イノマンはマッドの道へ

 からくり人形の九太郎から女性の人工体に移ったイノマンは東域宇宙和平維持連盟地球防衛基地で立派な宇宙人として一人立ちするために受けなければいけない3年間の初等教育をわずか1年で修了してる。

 まあ、リザード星人と星乃ミカに憑依して知識を得ていた事による成果が大きい。

 それに元は男性だったイノマンが何の抵抗もなく女性体に適合したのもミカに憑依したおかげによるもの。

(しかしまあ憑依は今でも簡単にできるけど、あまり同調し過ぎると精神まで融合してしまいそうで危険かもしれない、何か別の…同居みたいな方法はないものだろうか)

 イノマンは心は身体に引きずられると理解していた。

 理解はしていたのだけど、その対応策に付いてはまだ考えが至っていない。

 だから少しずつ話し言葉が女性化していっているのが自分自身でも感じられた。

(何とかしなければ、身も心も女性化したら私の本質まで変化してしまうかも知れないな)

 そう考え始めたけれど、彼、いや彼女はそれより先にやらなければならない事を実行に移そうと準備を始める。

 イノマンが基地に来て最初に受けた初等教育課程はホップ、ステップといった感じで進級し、最後のジャンプではそれまでの優秀な学業が認められ無試験で卒業した。

 その後は博士課程への道を選び特待生として入学をしてる。

 博士課程専攻科目はクローン研究が出来る生物遺伝子研究課を希望しそのまま配属が決まってた。

(自分の細胞で多くのクローンを作りさえすれば、最強の味方集団が出来ること間違いなしなんじゃあないかな、そうしたら煩わしい人間関係から解放される)

 その頃のイノマンはそんな風にしか考えていない。

 でも実際に出来上がったクローンと生活するようになってからは同族嫌悪という言葉があったということを自ら体験することになって後悔の念を抱く。

 だから最終的に彼女は研究室の雑務一切をクローンに任せ自分は殆どの時間を歓楽街で過ごすようにしてる。

 彼女が言うところの煩わしい人間関係とは、外見は女性、それも程程の美少女であるがゆえに施設内外を問わず結構な頻度で声を掛けられていた。

 最初の頃は相手の事を思い計って丁寧にお断りしてたのだけど、最近では言葉を選ぶ時間惜しさに『自分は男だ!』と言って突っ張り返している。

 ある日、女性の外見をしてるから頻繁に声を掛けられるのだろうと考えて、一時期男装をしてみた時があったのだけど、その時は女性から声を掛けられる日が続き、丁寧にお断りしても泣かれて余計に煩わしい目に遭ってしまう。

 それに女性の姿をしている方が、多方面で得をするように思えた。

 名前も男装時には『イノマン』を使用したけど女性の姿でいる時は対外的に『ハナコ』を名乗るようにしてる。

 初等教育が終わって博士課程の研究員になったばかりの頃は僅かな手当しか貰えていない。

 衣食住は提供されているので普通の生活には困らないのだけどイノマンには『自分のクローンを作って男性の身体に戻る』という強い信念の元で行動していた。

 それには多額の資金が必要でお手当て程度のお金を何年貯金しても足りるものではない。

 だからアルバイトに走った。

 でも決して自らが闇に手を染めたり身体を売ったりとか法に触れるような事はしてない。

 暗闇の中で行う採掘工事なんかも身体を張った正規のアルバイトだけどそんな小さなものではなく、もっと一回当たりの稼ぎが大きいものだ。

 イノマンが考えたのは、薬や武器または兵器を自分で作って売りさばくこと。

 最初は武器や兵器を作るための資金を得るために薬を作って売る。

 麻薬とかその類似品の製造、販売、所持が法で禁止されているのは服用した者の意識と行動が正常でなくなるという理由でどこでも一緒だ。

 基地の罰則は厳しく他の星系から来た宇宙人なら基地からの追放で済むのだけど、地球出身者はその罪の種類や大きさによって、地球に戻される者と元素にまで分解されて再利用される者に分けられている。

 しかしここでは自衛のための武器を持つことは禁じられていないし自分で作り持っていても問題ない。

 その武器を売ることも認められている。

 また自衛のために薬物を使用すること、例えば目潰し、嘔吐、睡眠剤などを相手に使用して死亡させたとしても、それが保身のためならば罪に問われる事はない。

 イノマンはそのことを最大限に利用して、多種多様いる宇宙人のそれぞれに個別対応する薬作りをおこなった。

 自分には全く影響がないのだけど、特定の人種だけには命取りとなるような薬を開発する。

 出来上がった薬のサンプルを持って胡散臭い飲み屋へ行き程好く酔った客に上手く話をして仲間となるように抱き込む。

 そして仲間になったばかりの人物と一緒にこれまた胡散臭く酔いつぶれた客を介抱する様に連れ出して人気のない裏路地へと連れ込み『楽になれるから』と言って吸引器をあてがいガスを流す。

 被験者はみるみるうちに安らかな笑顔となりそのまま目覚めることなくその魂は天に昇って行く。

 笑気ガスの組成式を協力になるように改造した毒ガスの実証実験を今出来たばかりの仲間に見せる。

 そしてハナコの姿になっているイノマンは淫魔もたじろぐ様な微笑みを向けて言う。

『買い手をお探しなさい。お金持ちが良いわね』

 言霊を乗せ憑依する要領で軽く暗示も掛けた。

 今回は毒ガスだったけど、良薬も毒薬も希望されるがままに何の抵抗もなく作っている。

 それらは当然のことだけど公にはしていない。

 それでも密売人が連れてきたり、噂を聞き付けてコンタクトを取ろうとする者が後を立たなかった。

 彼女が作る毒薬や良薬は裏社会で定評があり、いくら値段を釣り上げていっても注文数は増えていく。

 それは注文者と一緒になって効果の実証実験を目の前で行ってくれるからだった。

 幸い?なことに今のイノマンはうら若い女性の姿をしていたし顔立ちもどの星人でも好意を持つ程に整っている。

 それだけでも十分なのに厚化粧をして男女を問わず虜にする媚薬も香水代わりに振り撒いていた。

 彼女は足が付かないように細心の注意を払って行動している。

 施設から出る時は羽虫も寄り付かない高級官僚の姿をしているのだけど、途中でエッグに乗り込んだ時に中で着替え、歓楽街に足を踏み込んだ時は一目見ただけでエースホストでもメロメロになるような妖姿をしていた。

 当然ながら複数の偽名を使い分けて行動してる。

 おまけに憑依術を自分に掛けているのでたとえビデオ録画されているのを解析しようとしても研究室のイノマンと同一人物とは判断されない。

 そのうち基地を管理する人工知能AIも何とか仲間に出来ないものかとも考えを巡らせていた。

 薬の注文で資金に余裕ができはじめると材料を仕入れて超小型レザービーム銃を開発製造し始める。

 そしてやはり胡散臭い酒場へ出向き同じ要領で更に高額のアルバイト代を稼いでいく。

 そのようにして稼いだお金は研究員が経費として申請できない分野で使っている。

 胡散臭い酒場で使ったり、研究には全く関係のない部品や薬剤の購入資金だ。

 余ったお金を手元に置いておくと足が付きそうに思えたので胡散臭い組織の裏口座に貯金しようかとも思ったけど、そのお金で自分が代表を務める組織を立ち上げた方がいいような気がしてフリープラネット社を立ち上げる。

 それがイノマンクローンの一人新田剛、アイリーンが言うところのピエロが属してるフリープラネット同盟へと発展していく。

 イノマンはこの時既に近い将来において自分がこの宇宙基地からはじき出されるのではないかと危惧し始めていた。

 だからその時のために逃げ込める場所を作るのが目的というのもある。

 それほど自分の存在が周囲より浮いているように考えていた。

 いかがわしい歓楽街に行くのもそのため、非合法の薬や武器を作って売っているのもお金を稼ぐためだけではなくて、そういった方面に関わっている人間に渡りを付けておくためだ。

 そういうことで多方面に渡り深めた知識と技術をクリーンに装い纏め上げ論文として発表すると、それだけで博士としての評価が上がっていく。

 だから翌年にはさらにスキップして博士課程上席特別研究員となって希望通りの個室に入ることができた。

 それから更に2年が経過した頃には、個室の研究室に備えた10基の培養槽でそれぞれ成長課程が異なったクローンが育っている。

 成長がバラバラなのは、早い段階で成長が止まったり腐敗したりして、まあ単刀直入に言ってしまえば失敗とやり直しを繰り返してるのがあるからだ。

 イノマンが21歳になった時、成長促進剤を多目で調整したクローン3年目の1体を培養槽から出す。

 人間の年齢にして20歳と言ったところだ。

 成長促進剤を全く投与していないクローンは2体、3年目だから人間の年齢にするとそのまま3歳。

 培養槽の中にはあえて成長速度を遅らせ個としての能力向上を図っているものも2体あった。

 残り5基の培養槽でもそれぞれの条件に適した速度で順調にイノマンのクローンが育っている。

 ただ、あくまで『今のところ』を付けておかなくてはいけない、明日も順調とは限らないのだから。

 何はともあれ、今は培養槽で20歳にまで育った自分のクローンを助手にするための準備を進める。

 それにしても、助手にして様子を見るのではなく、自分が乗り移ってしまいたいと逸る気持ちを押さえ付けるのは並大抵の努力ではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ