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『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』  作者: Lark224a


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第95話 裏では問題が起こっている。

「‥‥全滅してるな。」


モンスターの気配が完全に消えたことを確認したディアブロは、静かに戦場へ戻ると、辺り一面に転がる魔物の死骸を見渡しながら淡々と呟いた。


その言葉に返事を返す者はいない。


水瀬もベガも終わりの見えない連戦に次ぐ連戦で魔力も体力も限界まで消耗し、肩で荒く息を繰り返しながらその場に座り込んでいた。全身は鉛のように重く、指一本動かすことさえ億劫なほど疲弊しきっており、口を開く気力すら残されていない。


しかし、そんな二人の様子を見てもディアブロは労いの言葉を掛けることなく、その視線は地面を埋め尽くすほど散乱した大量のドロップ品へと向けられていた。


「それにしても大量だな。これだけの素材を持ち帰れば、ギルドも大喜びするだろう。ベガ‥‥回収を頼む。」


「‥‥アウ」


弱々しく返事をしたベガは、重たい身体をゆっくりと起こすと、ふらつく足取りのまま一つずつドロップ品を拾い集め始める。


その姿をぼんやりと眺めていた水瀬も、乾き切った喉を震わせるように声を絞り出した。


「‥‥本当に‥‥あんたって悪魔ね。」


「ん?悪魔?俺がか?まぁ、確かに昔はそう呼ぶ者もいたな。一体、俺の何処が悪魔なのか教えてもらいたいな。」


本人にはまるで自覚がない。


疲れ果てた二人を当然のように働かせ、自分だけ平然としているその姿に、水瀬は心底呆れたように深いため息を漏らすと、小さく――


「そういうところが悪魔なのよ。」


とだけ呟き、ベガの隣へ歩いていく。そして自分も腰を落とし、散らばったドロップ品を拾い始めた。


もちろん、その間もディアブロが動くことはない。


近くにあった程よい大きさの岩へ腰を下ろすと、腕を組み、二人が回収作業を進める様子を退屈そうに眺めているだけだった。


そうして素材の回収を終えた一行は、その後も二十一層の探索を滞りなく進め、大きな危険に遭遇することなく突破する。そして、次なる階層である二十二層へと足を踏み入れるのであった。


◇


ディアブロたちが二十一層を攻略しているその頃、かつて黒盤の覇道が所属していた公式ギルドでは、一つの重大な問題が発生していた。


よりにもよって、その日はギルドマスターが国からの呼び出しを受けて不在となっており、ギルド全体の指揮を任されていたのは副ギルドマスターの斎藤 学だった。


斎藤は探索者育成学校を優秀な成績で卒業したものの、自ら探索者の道へ進むことは選ばず、そのまま国立大学へ進学。卒業後は国の中枢を担う官僚候補として採用され、持ち前の頭脳と誰からも好かれる話術を高く評価されて、入社一年目という異例の速さで副ギルドマスターの座へ就いていた。


だが、本人はその配属に一切納得していない。


自分ほどの能力を持つ人間なら、最初から官僚という国の中枢へ配属されるのが当然であり、現場の管理など自分には相応しくないと本気でそう思い込んでいた。


その驕りと慢心が、この後の事態をさらに悪化させることになる。


「副マスター!!大変です!!ダンジョン内でスタンピードを確認しました!!」


職員が息を切らしながら飛び込んでくる。


突然の報告に斎藤の表情は一瞬だけ強張ったものの、学校で学んだ知識を思い出しながら冷静さを装い、即座に指示を飛ばした。


「全探索者へ緊急メールを送ってください!!準備が整った探索者から順次にスタンピードの対処へ向かってください!!」


スタンピード発生時の対応は、探索者育成学校でも何度も叩き込まれた内容だったので斎藤は迷いなくマニュアル通りの命令を下したのだが、ここは教科書通りでは通用しない。


現場には、マニュアルだけでは決して対応できない現実が存在するのだ。そして斎藤は、その最も重要な現実を理解していなかった。


「ダメです!!対応する探索者の数が圧倒的に足りません!!」


「なっ!!何でだ!!探索者なら大勢いるだろ!!本当に全員に送ったのか!?本当に探索者全員へメールを送ったんだろうな!?」


斎藤は数字だけを見ていた。


確かにギルドに所属している探索者の総数だけを見れば多いが、その大半は一層から十層を探索する新人探索者であり、二十層以上を攻略できる実力者は全体の四分の一程度しか存在しない。


その人数だけでスタンピードを抑え込めるはずもなく、その現実を誰より理解している探索者たちもまた、勝ち目のない戦場へ命令だけで向かうほど愚かではなかった。


「な、なら‥‥他のギルドだ!!個人ギルドへ応援要請を出せ!!それなら問題ないだろ!?」


焦りを隠せなくなった斎藤に対し、職員は表情一つ変えず淡々と答える。


「既にやっています。」


その一言だけで十分だった。


確かに立場だけを見れば斎藤の方が上だが、この場にいる職員たちはギルドマスターの下で幾度もスタンピードや緊急事態を乗り越えてきた現場の人間であり、マニュアルに書かれている程度の対応なら、とっくの昔に済ませていた。


自分が指示を出す前から全てが動いている。


その事実を突き付けられた斎藤は、自分へ向けられる職員たちの視線が責め立てているように感じ始め、徐々に冷静さを失っていく。


「お、俺を誰だと思ってるんだ!!お前らみたいなカスどもが‥‥そんな目で俺を見るな!!」


怒鳴り散らし、癇癪を起こす。


だが、その程度で動揺する職員は誰一人としていなかった。


ここに集められているのは、ギルドマスターが一から鍛え上げた現場の精鋭ばかりであり、感情だけをぶつける上司など恐れる理由がなかったからだ。


そうして現場の空気が完全に停滞し始めた、その時だった。


バンッ!!


ギルドの重い扉が勢いよく開かれ、その先に姿を現したのはギルドマスターだった。


その姿を見た職員たちは、一瞬だけ張り詰めていた表情を緩めるが、それもほんの一瞬ことで、すぐに全員が気持ちを切り替え、それぞれの持ち場へ意識を戻した。


「すぐに大手個人ギルドへ連絡を取れ!!報酬はモンスター素材の優先提供、ギルド管理の広告枠、それにスタンピードで負った怪我の補償と依頼料を提示しろ!!ただし、あまりにも法外な条件を吹っ掛けてくる相手には依頼を出すな!!


それと、ギルド所属探索者には特別報酬を支給すると伝えろ。一層から十層は新人探索者の避難と警備を優先し、ダンジョンから溢れたモンスターに備えて地上にも戦力を配置しろ!!


いいな!!ギルドの総力を挙げて‥‥この事態を収拾するぞ!!」


「「はいっ!!」」


ギルドマスターの矢継ぎ早でありながら的確な指示が飛んだ瞬間、それまで重苦しい静寂に包まれていたギルドは一変する。


職員たちは迷いなく持ち場へ散り、それぞれが次の指示を飛ばしながら慌ただしく走り出していく。その姿は、先ほどまで機能を失いかけていた現場とはまるで別物であり、ギルドという巨大な組織が再び一つの意思を持って動き始めるのであった。

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