↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』  作者: Lark224a


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
75/187

第75話 最後の選択。

「どうなってやがる!!」


神崎の悲痛な叫び声が響き渡るが、その声に反応する者は誰一人としていない。


まるでこの空間だけが世界から切り離されてしまったかのように静寂が支配し、叫びも足音も虚しく吸い込まれていく中、無情にも時間だけが流れ続けていた。


「どうして、陽菜の体は傷付いているんだ!!」


試験中は如何なる攻撃を受けようとも本体に傷が付くことはなく、一定以上のダメージを受ければ撃破扱いとなって自陣へと転送される、それがこの試験の絶対的なルールであるはずだった。


だが、神崎の腕の中にいる朝比奈の身体は、その常識を嘲笑うかのように深く傷付き、青白い顔色と荒い呼吸が、今すぐ治療を施さなければ危険な状態であることを物語っていた。


「誰か!!陽菜の傷を癒してくれー!!誰か‥‥そうだ!!カメラだ!!」


神崎は縋るような思いで上空を飛ぶ監視カメラへ向かって叫び声を上げる。


しかし、カメラは彼の必死な訴えなど初めから存在しなかったかのように何の反応も示さず、そのまま別の場所へと飛び去っていった。


「どうしてだ!!何で‥‥誰もこっちを見ようとしないんだ。このままじゃあ‥‥陽菜が‥‥」


喉が張り裂けるほど叫び続けても状況は何一つ変わらない。そうして精神的に追い詰められた神崎は、最後の希望へと縋り付くように、もう一人の幼馴染へ視線を向けた。


「なぁ‥‥ハルッ!!頼む!!陽菜を助けてくれ!!幼馴染なんだ‥‥ちょっとした遊びだったんだよ。なぁ、この通りだ!!陽菜を助けてくれッ!!」


額が擦り切れるほど強く地面へ頭を押し付け、必死に懇願する。しかし春宮は神崎へ視線を向けることすらなかった。まるで最初からそこに誰も存在していないかのように、彼は別の方向だけを静かに見つめ続けている。


そんな神崎へ、水瀬が冷めた声を投げかけた。


「もう諦めたらどうですか?」


「な、何を‥‥諦めるっていうんだ!!まさか、このまま見捨てろとでも言うつもりか!?」


「はい。正直に言えば、あなたたちは何もかも間違えているんですよ。私達に敵対したことも、私達を弱者だと決めつけたことも、そして彼があなたたちの幼馴染であると思い込んでいることもです。」


「はぁ?何を言ってる?ハルは‥‥春宮湊は俺達の幼馴染だ!!何も間違っちゃいない!!昔からずっと一緒に過ごして来たんだぞ!!」


「じゃあ、何で彼の変化に気付かないんですか?昔からの幼馴染なんですよね?だったら分かるはずですよね。今の彼が、あなたたちの知っている春宮くんじゃないことくらい。」


その言葉を聞いた瞬間、神崎の中で何かが繋がった。


もし目の前にいるのが自分の知る春宮なら、どれだけ酷いことをされても絶対に見捨てたりしない。最後には必ず「大丈夫か」と声を掛け、手を差し伸べてくれる男だった。


だが、今の春宮は違う。


一度もこちらを見ようとせず、心配する素振りすら見せない。その圧倒的な無関心が、逆に決定的な違和感として神崎の胸に突き刺さった。


ならば、自分の知る春宮はどこへ行ったのか。


これまで感じていた違和感の数々と、この場で起きている異常な出来事。その全てが水瀬の言葉によって一本の線となり、神崎はようやく理解した。


目の前にいる存在は、自分たちの知る春宮湊ではない。


「頼む‥‥お願いします。この人は俺にとって本当に大切な人なんです。俺はどんな罰だって受ける覚悟があります。だから‥‥陽菜だけは‥‥彼女だけは助けてください。」


神崎は深々と頭を下げた。


その姿勢は幼馴染へ向けるものではない。自分たちでは到底届かない高みに立つ存在へ、ただ救いを求める弱者の姿だった。


そして、その姿を見下ろしていたディアブロが初めて口を開く。


「俺は今までお前たちに何度も慈悲を与えてきた。今日だってそうだ。無礼な言葉を吐かれても目を瞑ってやった。だが、お前たちはその慈悲を当然のものだと思い込み、最後には牙を剥いた。


今ここで起きている全ては、お前たち自身が選び取った結果だ。それなのに、まだ最後の慈悲まで求めるのか?それはあまりにも強欲じゃないか?」


静かな声音だった。


しかし神崎には、その一言一言が首元へ突き付けられた刃のように重く感じられた。


「‥‥もちろん、全てこちらの責任です。ですので、自分は如何なる罰も受ける覚悟があります。だから彼女だけは救ってください‥‥お願い致します。」


「ふーーーん‥‥」


ディアブロは興味深そうに神崎を見下ろし、それから僅かに口角を上げた。


「分かった。彼女を救ってやる。その代わり、お前たちは今すぐこの学校を退学し、二度と俺達に関わらないという契約を結べ。どうする?」


神崎は黙り込んだ。


これまで積み上げてきたものの全てを捨てる選択だが、迷いは長く続かなかった。


「それでお願いします。俺達はこの学校を退学します。そして二度とあなたの前に現れないと約束します。」


その言葉と共に、神崎は自らの未来を差し出した。


ディアブロは神崎に悟られないよう二人の魂へ契約を刻み込む。


『この契約を破れば、その場で命を奪う』という絶対の拘束力を持つ罰則を与えた直後、ディアブロは指を鳴らした。


――パチン!!と乾いた音が響いた瞬間、閉ざされていた空間が解除される。


すると朝比奈の身体は光に包まれ、その場から消失した。試験システムによって撃破扱いとなり、安全な場所へ転送されたのだ。


「これで約束は守った。後はお前次第だ。」


「ありがとうございます。」


神崎は何度も頭を下げながら立ち上がり、その場を去ろうとするが、その肩をディアブロが掴んだ。


「そうだ。これは今までの無礼な行為への罰だ。」


「へ?」


神崎が間抜けな声を漏らした次の瞬間だった。


拳が放たれたことすら認識出来ずに、視界が激しく揺れたかと思えば身体は宙を舞い、そのまま吹き飛ばされる。


轟音と共に地面へ叩き付けられた神崎は、一撃で撃破判定となり光に包まれながら姿を消すのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。