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『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』  作者: Lark224a


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第73話 最悪な選択。

次の対戦相手がAクラスだと判明した瞬間、それまで勝利の余韻に浸っていたFクラスの生徒たちの表情は目に見えて曇り始めた。先程までの勢いはどこへやら、あれほど大きかった歓声も徐々に小さくなり、教室には重苦しい空気がゆっくりと広がっていく。


「なー流石にAクラスには‥‥勝てなくないか?」


一人の男子生徒が不安を隠し切れない声でそう口にすると、その言葉は堰を切ったように周囲へと伝播していった。


「いや、俺もそう思う」

「DクラスとAクラスじゃ全然違うだろ」

「流石に無理じゃね?」


誰かが口にした弱音に次々と同意の声が重なり、先程まで自信に満ち溢れていた姿とはまるで別人のようだった。


その理由は単純だった。


水瀬がクラス全体へ掛けていた白魔法が既に解除されていたのである。


精神を高揚させ、自信を増幅させる白魔法の恩恵が消えたことで、生徒たちは本来の自分を取り戻していた。そして現実的に戦力差を考えれば、Aクラスを相手に勝利を掴むなど到底あり得ないと誰もが理解していた。


もっとも、水瀬とディアブロは端からAクラスに勝つつもりなどなかった。


試験の勝敗など二人にとっては大した問題ではなく、この試合も敗北する前提で考えている以上、白魔法を維持する意味などなかったのである。


しかし、その一方で一つだけ厄介な問題が残っていた。


それが、あの二人の幼馴染の存在だった。


あいつらは試験の勝敗などどうでもいいと考えている節がある。むしろ目的は水瀬とディアブロそのものだ。勝負の最中であろうと勝利を無視して、真っ先にこちらへ向かって来る可能性は十分に高かった。


もちろん、適当に負けて終わらせることも出来る。


だがそうした場合、奴らは勝手に優越感へ浸り、更に面倒な行動へ出るだろう。今回だけで終わるとも思えず、その後も執拗に絡んで来る姿が容易に想像できたため、二人にとってもその対応をどうするべきかが悩みの種となっていた。


そうして、明確な答えが出ないまま試験開始の時刻を迎える。


転送されたステージは街。


石畳の道路が縦横に伸び、建物が立ち並ぶ市街地マップであり、障害物も隠れる場所も多い戦場だった。


そんな中、Fクラスは先程とは打って変わり守備重視の布陣を敷いていた。前回のような勢い任せの突撃ではなく、全員が慎重な表情で盾役を中心に固まっている。


対するAクラスは真逆だった。


前衛を厚く配置し、中衛と後衛を後方から支援させる完全攻撃型の布陣を取っており試合開始前から既に両者の方針の違いが明確に表れていた。


「で、どうするの?あの二人は勝負とか関係なしで私達のところに来ると思うよ?まぁ、幸いにもステージは街だから逃げやすいし、終了時間まで隠れておく?」


周囲の様子を窺いながら、水瀬が隣に立つディアブロへと問い掛ける。


だがディアブロは静かに首を横へ振った。


「なら、正面から戦って勝つつもり?」


その問いに対しても返ってきたのは同じ反応だった。


ディアブロの目的はそのどちらでもない。


試験に勝つつもりなど微塵もないが、だからといって物陰に隠れ怯えながら時間切れを待つつもりもなく、もし奴らが愚かにも勝負を無視してこちらへ向かって来るのであれば、それはむしろ好都合ですらある。


自分達がどれほど浅はかな選択をしたのか。どれほど身の程を知らなかったのかを、その全てを身をもって理解させてやればいい。


ディアブロの瞳には既に獲物を前にした猛獣のような愉悦が宿っていた。


「お前は俺の傍から離れずピッタリと付いて来い。そうしてあいつら二人を本体から離したら戦闘を始める。」


淡々と告げられた言葉に、水瀬は一瞬だけ目を細めた、その作戦の意味を理解したからだ。そして真剣な表情のまま、静かに問い掛ける。


「‥‥手加減はしなくていいの?」


それは敵を心配した言葉ではなく、その先の事を思う故の言葉だった。


水瀬は自分が勝つことを確信している。自分が本気を出せば相手の誇りも自尊心も徹底的に叩き潰してしまい場合によっては二度と立ち直れないほど深い傷を残してしまうかもしれない。


だからこそ、それは彼女なりの最後の情けであったが、ディアブロの返答は迷いなく返される。


「全力でやれ。俺も全力で楽しむつもりだからな。」


そう言って口元を吊り上げたディアブロの笑みは、これから始まる戦いを心から待ち望んでいるかのように不敵な笑みであった。


幼馴染の二人は微塵も理解もしていなかっただろう。自分たちが喧嘩を売った相手がどれほど凶悪でどれほど無慈悲な存在であったのかを、外は幼馴染の春宮であっても、その中身は覇王であることを。


もっとも、もう少し春宮に興味と優しさを向けていれば彼の変化を感じ取ることも出来たかも知れないが「あいつは絶対に変わらず弱いまま」だと決めつけていた時点で、二人の辿る未来は決まっていた。

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