第70話 試験のルール。
「それでは第一期実技中間試験のルールを発表します。」
教師の声が会場全体に響き渡ると同時に、正面に設置された巨大なスクリーンへと映像が映し出され、生徒たちの視線が一斉にそこへ集中した。
映し出されたのは、この試験の為だけに用意された特別ステージの映像だった。
深い木々が生い茂り視界を遮る『森』、薄暗く入り組んだ地形が特徴の『洞窟』、遮蔽物がほとんど存在しない広大な『草原』、そして建物が密集し複雑な戦闘が予想される『街』
四種類の戦場が次々と映し出され、その度に会場のあちこちから小さなどよめきが漏れる。
しかも、それらはただの訓練施設ではない。
これから使用されるステージは特殊な架空空間の中に構築され、生徒たちは実際にその内部へと入り、クラス同士で戦闘を行うことになるらしい。
《実技中間試験の主なルール》
・会場は今試験の為に設立した特別ステージで行う。
・出場できるメンバーはクラス全員で行う。人数が揃っていない場合に関しては別の方法で補填を行うことにする。
・使用できる武器に関しては基本的な武器だけが使用可能で、特殊武器に関しては使用禁止。
・ステージの選択については抽選で行う。
・陣地についてはクラスの代表者のコイントスで決め、勝った方に選択権が与えられる。
・クラスの心臓と呼ばれる核が存在し、核を破壊した方が勝利となる。
・また時間以内に核を破壊しきれなかった場合は、人の撃破数で勝敗を決め、それでも均等だった場合に関しては代表10名による一対一の決闘で勝敗を出す。
・勝利した方には勝ち点3が与えられ、負けた側は0となる。
・クラスの総当たりを行い、一番多くのポイントを取ったクラスには最高評価のAが与えられ、最下位はFとなる。
スクリーンへと映し出されるルールを見ながら、生徒たちはそれぞれ小声で話し始める。
核の破壊を優先するべきか、それとも人数を削るべきか。地形次第で有利不利も大きく変わることは誰の目にも明らかであり、特に『街』や『森』などは待ち伏せや奇襲が容易な分、戦術面での差が大きく出るだろう。
だが、説明はそれだけでは終わらなかった。
《禁止ルールに関して》
・通常武器以外の武器の使用を確認した場合は即刻で失格とする。
・他クラスの買収に関しては、確認した場合は対象者に重い厳罰を与える。
・撃破された生徒は復活のポジションで待機時間の3分を待たずして出発した場合、即刻に撃破扱いとなり相手の撃破ポイントとなる。
試験内容が実戦形式である以上、不正や抜け道への対策も徹底されているのだろう。
特に復活制限については、戦場へ無理に戻ろうとした者を即座に撃破扱いにする辺り、この試験がただの模擬戦ではなく、かなり本格的な集団戦を想定して作られていることがよく分かる内容だった。
「以上が今試験のルールとなる。ルールについて質問がある場合は解散後に各クラスの担任に尋ねて疑問を解消するように。では、第一回戦の組み合わせを発表する。」
教師がそう告げた瞬間、会場の空気が一段階張り詰める。
生徒たちは自然と息を呑み、巨大スクリーンへと意識を集中させた。
「――第一戦の選択ステージは‥‥森。」
その言葉と共に映像が切り替わり、深い木々が生い茂る森林地帯が画面いっぱいに映し出される。
視界を遮る木々、複雑に入り組んだ地形、高低差のある足場――正面衝突だけでなく、索敵能力や連携も重要になるフィールドだ。
「そして組み合わせは‥‥Bクラス対Cクラス、Aクラス対Eクラス、Fクラス対Dクラス。それぞれのクラスはしっかりと準備をしてステージへと向かうように。」
組み合わせが発表された瞬間、各クラスで様々な反応が起こる。
不安そうに顔を見合わせる者、早くも作戦を話し始める者、逆に闘志を燃やしながら笑みを浮かべる者と会場の空気は一気に戦闘前のそれへと変わっていった。
そしてルール説明が終わると、それぞれのクラスは自分たちの待機場所へ戻り、すぐさま作戦会議を開始する。
そんな中、Fクラスでは自然と水瀬が先頭へ立ち、全員の視線を集めていた。
以前までなら統率など到底不可能だったFクラスだが、今では誰一人として無駄口を叩かず、水瀬の言葉を待っている。
「私達の作戦は至ってシンプルです。」
水瀬はそう前置きをすると、真っ直ぐ全員を見渡しながら静かに口を開く。
「目の前にいる敵をただ倒すだけ。小細工は一切なしの正面からの戦いです。」
その言葉に迷いはなく。奇策も罠もない。真正面から敵を叩き潰す。それこそが今のFクラスにとって最も確実で、そして最も自信を持てる戦い方だった。




