第47話 唐突は訪問者。
14日に2本投稿したので、15日は休みにしました。すいません。
全てのモンスターを殲滅したディアブロは、辺り一面に散らばったドロップ品を淡々と回収していく。
先程まで無数のモンスターが暴れ回っていたとは思えないほど空間は静まり返っており、漂っているのは魔力の残滓と戦闘の余韻だけだったが、ディアブロにとってその程度の戦闘は特別なものではなく、まるで日常の作業を終えたかのような感覚で全てを片付け終えると、そのまま何事もなかったかのようにテレポートを発動した。
次の瞬間、景色が歪み、ディアブロの姿は自宅へと戻る。
「ワン!!」
その瞬間、ディアブロの姿を見つけたベガは、待ちわびていた主が帰って来たことに大きく喜びを露わにすると、尻尾をブンブンと勢いよく振り回しながらディアブロへ飛びつき、そのまま顔をぺろぺろと舐め始めた。
大型の体躯から繰り出される勢いはかなりのものだったが、ベガ自身はじゃれているつもりなのだろう。その様子は獰猛なブラックフェンリルというより、主人へ甘える犬そのものだった。
「おい、べ、ベガ‥‥少し、落ち着け。」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ‥‥」
興奮した様子で荒く息を吐きながら尻尾を振り続けていたベガだったが、ディアブロの言葉を聞いてようやく少しだけ落ち着きを取り戻す。そして、そのままディアブロの方をじぃーーと見つめながら、何かを期待するように小さく鼻を鳴らし始めた。
その視線だけで何を求めているのかを察したディアブロは、ベガの頭を雑に撫でながらキッチンの方へ向かっていく。
「さてと、水瀬母がベガの為に作り置きしてくれたドラゴン肉炒めでいいよな?」
「ワン!!」
その瞬間、ベガは嬉しそうに鳴き声を上げた。
そう。ベガが求めているのは遊びでも散歩でもなく“ご飯”であり、一度水瀬家の料理を食べてしまったベガは、その味に完全にハマってしまっている。
元々ディアブロは肉を焼くだけの簡素な料理しか作ってこなかったが、水瀬家の料理は味付けから焼き加減まで徹底的に拘られており、その差を知ってしまったベガは、今ではディアブロが適当に焼いただけの肉では満足出来なくなっていた。
そして、そのことを水瀬へ話した結果、水瀬の母がこうして定期的にベガ用のご飯を作って渡してくれているのである。
「さぁ、出来たぞ――食え。」
「ワン!!」
ベガは皿へ山盛りに盛られたドラゴン肉炒めへ勢いよく顔を突っ込むと、まるで数日何も食べていなかったかのような勢いで、むしゃむしゃと夢中になって食べ始めた。
その豪快な食べっぷりを横目に見ながら、ディアブロもまた水瀬が作ってくれていた料理を温め始める。温められた料理から漂う香ばしい匂いが部屋へ広がっていき、その香りを感じた瞬間、ディアブロは自然と視線をそちらへ向けていた。
「うん‥‥これも上手い。」
ディアブロ自身は気付いていない。
かつての彼にとって、食事とはただ生命活動を維持する為だけのエネルギー補充でしかなかった。味を楽しむという感覚も、誰かが作った料理へ特別な感情を抱くこともなく、必要だから口へ運ぶ――ただそれだけだった。
だが今は違う。
水瀬の手料理という存在を知ったことで、食事は単なるエネルギー補充ではなく、一日の中で自然と楽しみに感じる時間へ変わり始めていた。今日はどんな料理なのか、どんな味付けなのか、蓋を開ける瞬間、ディアブロの心には微かな高揚感すら生まれている。
そんな風に穏やかな時間を過ごしていた、その時だった。
――ピンポーン。
突如として家のインターフォンが鳴り響く。
ディアブロが春宮の体を動かし始めてから、この家のインターフォンが鳴ることなど一度たりとも存在していない。そもそも、両親以外で家へ人が来ること自体が春宮の記憶の中にもほとんどなく、その突然の来訪はディアブロに僅かな違和感を抱かせるには十分だった。
だからこそディアブロは、ほんの少しだけ警戒心を抱きながら玄関へ向かい、そのまま静かに扉へ手を掛ける。
――ガチャ
ゆっくりと扉を開けたその先には、春宮の幼馴染である神崎 大和と朝比奈 陽菜が立っていた。




