↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』  作者: Lark224a


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/184

第42話 探索者ではなく研究者。

そうして迎えた当日――。


ディアブロ達は、事前に決めていた作戦通りに行動を開始していた。


護衛対象者である綾小路を中心に置き、その前方には専属護衛である池田が配置に着く。そして左右にはディアブロと火神が並ぶように歩き、最後尾にはもう一人の専属護衛である高田が周囲を警戒しながら歩いていた。


前後左右を完全に囲むような陣形を取ることで、360°どこから何が起こっても即座に対応出来るようにしているのだ。


その動きには一切の無駄がなく、特に池田と高田の二人は歩きながらも常に周囲へ視線を配り続けており、僅かな物音や空気の流れ、魔力反応といった小さな違和感すら見逃さないよう、全神経を研ぎ澄ませていた。


だが、現在彼らがいるのはダンジョン第一層であり、出現するモンスターも低ランクの雑魚ばかりだ。本来なら新人探索者ですら問題なく突破出来るような階層であり、Sランクに近い実力を持つディアブロや、経験豊富な護衛二人がいるこの編成では、明らかに戦力が過剰だった。


その為、ディアブロ以外のメンバー達にも、どこか余裕が見えている。火神も周囲を警戒しながら歩いてはいるものの、その表情にはまだ焦りや緊張はなく、高田もまた静かに周囲を観察しながら淡々と歩を進めていた。


そんな中、やがて目的地である巨大な縦穴が視界に映り込む。


それは、まるで大地そのものが裂けたかのような異様な光景だった。


底の見えない暗闇が巨大な口を開けるように広がっており、ただ見下ろしているだけなのに、本能が“近付くな”と警鐘を鳴らして来るほどの不気味さを放っている。


そして、その縦穴を視界に捉えた瞬間、それまで余裕を見せていたメンバー達の表情が、一段と引き締まった。先程まで漂っていた“第一層だから問題ないだろう”という空気は完全に消え去り、その場にいた全員が、本能的にこの場所の異常さを理解したのである。


だが――そんな周囲の空気など一切関係ないと言わんばかりに、依頼者である綾小路だけは目を輝かせていた。


「おぉ‥‥!!やはり何度見ても素晴らしい!!」


その声には恐怖など一切含まれておらず、未知を前にした純粋な興奮だけが存在していた。まるで長年探し求めていた宝を目の前にした子供のように、その瞳は異様な熱を帯びている。


そして次の瞬間、綾小路は我慢出来なかったのか、そのまま縦穴へ向かって走り出した。


「ちょっ‥‥!!」


火神が思わず声を漏らす。


護衛対象者が勝手に前へ飛び出すなど、本来なら最悪の行動だ。しかも、相手は未知のダンジョンを前にした状態であり、何が起こるか分からない以上、一瞬の油断すら命取りになりかねない。


当然、このまま放置するわけにはいかず、ディアブロ達も慌てて後を追い掛けるように走り始めた。


「綾小路さん!!止まってください!!」


池田が鋭い声で制止する。


だが、当の本人に止まる気配など一切ない。まるで周囲の声など耳に入っていないかのように、そのまま一直線に縦穴の前まで辿り着いてしまう。


「池田!!私の道具を出せ!!魔力濃度を調べたい!!」


綾小路は興奮した様子でそう叫ぶ。


自分がどれほど危険な行動を取っていたのか理解していないのか、それとも最初から興味すらないのかは分からない。だが、少なくとも今の綾小路の頭の中には、“研究”という二文字しか存在していなかった。


未知を前にした研究者特有の狂気――それが今、綾小路という男を突き動かしているのである。


池田もまた、そのことを理解しているのだろう。普通なら怒鳴り付けてもおかしくない状況だったが、池田は特に責めるような言葉を口にすることなく、慣れた手付きで研究用の道具を取り出していった。


「おおぉぉ!!これは凄い!!ここからでも十分に、その魔力濃度の濃さを計測することが出来る!!」


綾小路は測定器に表示される数値を見ながら、心の底から感動したような声を漏らしていた。


その姿は、もはや危険地帯へ足を踏み入れた探索者ではなく、新しい発見に歓喜する研究者そのものだった。


「おい!!池田!!準備はまだか!?早く下に降りるぞ!!」


「もう少し待ってください!!こっちにも準備は必要なんです!!」


池田はそう返すと、一度全員を集めるように視線を向け、地下へ降りる前の最終確認を始める。その表情には、先程までの余裕は完全に消えていた。


「もう分かってもらえたと思うが、綾小路さんは自分の興味には抗うことが出来ない人だ。ただ、ここはまだ第一層だから、その興味をある程度尊重することは出来る。」


池田はそう言いながら、一度巨大な縦穴へ視線を向ける。


底の見えない暗闇。そこから漂って来る異様な空気だけでも、この先が普通ではないことは十分過ぎるほど理解出来た。


「だが、地下へ降りるなら話は変わる。何が起こるか分からないし、どんなモンスターが存在しているのかも分かっていない、完全に未知の場所だ。」


その声音には、今まで以上の重みが宿っていた。


「そんな場所へ向かう以上、俺達も今まで以上に気を引き締めなければならない。先程のような危険行為も、地下では絶対に許してはいけない。」


池田はそこで言葉を区切ると、一人一人の顔を真っ直ぐ見据えながら、低い声で続けた。


「最悪の場合、あの人を殴ってでも生還させる。――それが、俺達の役目だ。いいな?」


その瞬間、その場の空気が更に重く沈んでいく。


池田の顔には全く笑顔はなく、その声にも重々しい緊張感が滲み出ており、その空気は高田や火神にもはっきりと伝わっていた。ディアブロ以外のメンバー達は、地下へ向かうことに対して確かな警戒心を抱いている。


そんな中、池田は最後にディアブロへ視線を向けた。


「そして、俺達の目である――D。君にはどんな小さなことでもいい。何かを感じたら、すぐに報告してくれ。」


「あぁ、分かった。」


ディアブロは短く答える。


その態度は相変わらず淡々としていたが、不思議と池田はその返答に安心したように小さく頷いていた。


「よし、なら下に降りるとしよう。」


そうして俺達は、目的地である地下へ降りる準備を始めるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。