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『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』  作者: Lark224a


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第32話 過去との再訪。

ディアブロたちが向かった先は、かつて水瀬の父が多額の金を借りていた闇金の事務所だった。その建物を視界に入れた瞬間、水瀬の胸の奥に沈んでいた記憶が、まるで蓋をこじ開けられたかのように浮かび上がる。


あの時の光景、交わされた言葉、追い詰められていく感覚、その全てが一気に蘇り、足が止まりかける。


ここは、水瀬にとって二度と来たくない場所だった。


それでもディアブロは、そんなことを理解した上で水瀬を連れて来ている。その理由はただ一つ、水瀬の装備を作るための人材を見つけたという報告を受けていたからだ。


「そう嫌な顔をするな。お前の装備を作ってもらう為に来てるんだからな。」


軽く言い放たれたその言葉に、水瀬は小さく息を吐く。


「‥‥それは分かるけど、それでもあれだけのことがあったんだから、すぐには‥‥納得っていうか、仲良くするっていうのは難しいものなのよ。」


声は抑えているが、そこに含まれる拒絶は隠しきれていない。理屈では理解している、ここにいる人間が全て悪ではないことも、自分たちに向けられた行為が回収という目的に基づいていたことも。


だが、感情は別だ。


「そもそも、全ての原因を作ったのはこの会社じゃない。お前の父親だろ。」


ディアブロは淡々と事実だけを突きつける。


「返せもしない金を借りたことが原因で、やり方は褒められたものじゃないにしても、あいつらはそれを取り戻そうとしただけだ。」


そこに感情はない。ただの整理だ。


「分かってる‥‥」


水瀬は小さく呟き、視線を落とす。


「全てはあのクズが原因だっていうのは分かってるし、向こうがやってたことも、結局は貸したお金を取り戻そうとしてただけだってことも理解してる。だから、そこに対して何か言うつもりもないし、文句もない。」


そこまで言い切ってから、ほんの僅かに言葉が詰まる。


「ただ‥‥怖いのよ。」


指先が無意識に震える。


「ここに来たら、また家族と会えなくなるんじゃないかって、どうしても思っちゃうのよ。」


理屈では否定できても記憶に刻まれた恐怖は簡単には消えず、その言葉を聞いたディアブロはほんの一瞬だけ水瀬へ視線を向けてから、何も言わずに前へと視線を戻す。


「大丈夫だ。安心しろ。」


短い言葉だった。


「お前は俺の大事な仲間だ。誰かに奪われるようなことは、絶対にさせない。」


それは優しさというよりも否定だった。奪われるという未来そのものを、最初から許容していないという断定。


「ほら、入るぞ。」


迷いなく歩き出す背中に、水瀬は一瞬だけ見入る。


今の言葉は仲間としてのもののはずなのに、胸の奥で別の意味として受け取ってしまいそうになる自分に気付き、慌てて頭を振ってその考えを振り払う。


そして、小さく息を整えてから、ディアブロの後を追った。



事務所の中へ足を踏み入れると、以前訪れた時とは明らかに異なる変化が空間全体に現れていた。広さは拡張され、配置は整理され、内装も無機質な印象から一転して洗練されたものへと変わっており、どこか余裕すら感じさせる空気が漂っている。


その変化の理由は考えるまでもなく、恐らくディアブロが渡したドラゴンの魔石によって得た利益が、この空間そのものを変えたのだろう。


「いや~~急に呼び出して悪かったな。」


軽く聞こえるその言葉とは裏腹に、男の声音には無駄な隙を見せない抑制が効いており、場の主としての圧を滲ませていたが、それに対してディアブロは特に感情を乗せることなく応じる。


「問題ない。それで、水瀬の装備を作ってくれる人を見つけたと言っていたが?」


本題だけを投げるその姿勢に、男は小さく頷きながら視線をわずかに水瀬へと流し、改めて口を開く。


「あぁ、そうだ。嬢ちゃんの装備を作ってくれる人は見つけた。腕も間違いない。」


そこで、ほんの一瞬だけ意図的に間を置き、言葉を区切る。


「だが――その人物に会わせることは出来ない。」


その一言が落ちた瞬間、空気が目に見えるかのように沈み込んだ。


原因は言うまでもなくディアブロであり、水瀬やベガに対しては明確な価値を置く一方で、それ以外に対しては徹底して切り分けるその在り方から、この男が代えが効く側である以上、優先順位は圧倒的に低く、邪魔をするのであれば排除するという結論に迷いはなかった。


その変化を敏感に感じ取ったのか、男は即座に両手を上げる。


「違う違う!!敵対したいわけじゃない!!ちゃんと理由があるんだ。だから話を聞いてくれ。」


先程までの余裕は消え、明確な焦りが声に混じる。


一歩引いたその態度によって張り詰めていた空気はわずかに緩み、ディアブロもそれ以上圧を掛けることはせず視線を外したまま、短く言葉を返す。


「じゃあ、その理由を教えてくれ。」


簡潔だが逃げ場はない。


「あぁ、実は‥‥」


男は一度言葉を切り、思考を整理するように息を整えると、その訳を話し始めた。

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