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『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』  作者: Lark224a


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第23話 初めてのダンジョンは、忘れられないものとなる。

そうして放課後になり、いよいよその時を迎えるのだった。


「‥‥本当にこのままでいいの?私、何も持ってきてないよ?」


「あぁ、大丈夫だ。」


普通、ダンジョンの探索をする時は、各々が己の命を守る為に装備を整える。それは最低限の常識であり、それを怠る者など本来いるはずがない。だが現に、ディアブロと水瀬の二人だけは学校の制服のままで、その場にいる探索者達の中でも明らかに異質な存在として浮いていた。


無論、周囲から向けられる奇異の視線など、ディアブロが気にするはずもない。その視線すら意に介さぬまま、当然のように足を進め、躊躇いなくダンジョンの内部へと踏み入れていく。


「ここが‥‥ダンジョン。」


水瀬は、思わずそう呟いていた。


足を踏み入れた瞬間、外界とはまるで違う空気が肌にまとわりつく。ひんやりとした温度に加え、どこか澄み切ったような空気が肺の奥へと流れ込み、思わず息を呑む。


視界に広がるのは、どこまでも続く緩やかな草原だった。青々とした草が風もないのに微かに揺れ、足元には踏みしめる度に柔らかな感触が伝わってくる。天井が存在しているはずの空間でありながら、頭上には広大な空のような景色が広がり、淡い光が大地を照らしていた。


それは外の世界に似ているようでいて、どこか決定的に違う――現実と虚構の境界が曖昧になったような、不気味さすら感じさせる光景だった。


水瀬は一度たりともダンジョンに入ったことがなく、今日この瞬間が初めての体験なのだ。ならば、その目に映るもの全てが新鮮であるのは当然であり、その一つ一つを確かめるように視線を巡らせていた。


だが――そんな水瀬の様子など意にも介さず、ディアブロはただ前だけを見据え、一定の歩幅で迷いなく先へと進んでいく。


「ちょ‥‥ちょっと‥‥待ってよ。」


慌てて後を追いながら、水瀬は距離を詰める。


「それで、もう一人の仲間は何処にいるの?ダンジョンの中で待ち合わせしてるの?」


「いや、待ち合わせはしていない。ただ、人が少ないところに向かっている。ここはダンジョンの入口だから人の目に映り過ぎる。もう少し進んでから‥‥全てを始める。」


淡々と返されるその言葉に、水瀬は小さく首を傾げた。待ち合わせもしていないのにどうやって合流するのか――その疑問は当然浮かんだが、同時に“もし会えなかったとしても困らない”という打算的な安堵もあった為、それ以上深く問い詰めることはしなかった。


水瀬は余計な思考を振り払い、状況を受け入れるようにして、黙ってディアブロの背を追う。


そうしてしばらく進んだ先で、二人は視界が開けた場所に出ると、そこには巨大な穴が口を開けていた。


すると、ディアブロはそっと手を差し出してきた。


「手を握れ。」


水瀬は言われた通りに手を握ると、ディアブロはそのまま穴へと飛び込んだ。


「えっ――」


理解が追いつくよりも先に、体が宙へと投げ出される。


次の瞬間、水瀬の体は重力に引きずり込まれるように急激に落下し、内臓が浮き上がるような不快感と、足場を失った恐怖が一気に押し寄せてきた。視界は一瞬で闇に染まり、風が耳元で唸りを上げる。


「ぎゃああああああああああああああ!!!!」


自分でも信じられないほどの絶叫が、反射的に口から飛び出した。


だが、どれだけ叫ぼうとも落下は止まらない。むしろ、その声すら風に掻き消されていく。


水瀬は本能的に生存を求め、ディアブロの体へと全力でしがみついた。腕に力を込め、離れまいと必死に掴みつく。その過程で体が触れ合うことなど、今の水瀬にとってはどうでもよく、ただ死にたくないという一心だけが支配していた。


永遠にも感じられる数秒の後、不意に落下の感覚が消えた。


まるで時間が止まったかのように、ディアブロの体が空中で静止し、そのまま緩やかに地面へと降下していく。そして、何事もなかったかのように水瀬を地面へと下ろした。


足が地面に触れた瞬間、水瀬の膝から力が抜け、その場に崩れ落ちる。


「ちょっと飛んだだけだろ?そんな騒ぐことじゃない。それに人がいないところに行くって伝えたはずだが?」


あまりにも平然とした口調で言い放つディアブロに、水瀬の中で何かが弾けた。


「ふざけないで!!」


腰が抜けたまま、地面に座り込んだ状態で怒声を上げる。


「何が、ちょっと飛んだだけよ!!普通の人は空なんて飛ばないし!!それに人がいないところに行くとは聞いたけど、穴に飛び込むとは一切聞いていないわ!!全く‥‥本当に、死ぬかと思ったんだから、もう少し、普通の人の常識を知りなさいよ。」


恐怖と怒りが混ざり合ったその言葉は、先程までの穏やかな様子とは別人のようであり、感情のままに吐き出される。


流石のディアブロも、その勢いには口を挟むことが出来ず、わずかに顔を背けるだけだった。

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