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『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』  作者: Lark224a


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第14話 差し出される者。

あの女は『家族の奴隷』だ。


ディアブロはここ数日間、水瀬結奈の生活を観察し続けた末に、その結論へと辿り着いていた。彼女は自分の時間も金も欲望も削り取り、その全てを家族の為に費やしており、その在り方は合理性という観点から見れば歪でしかなく、理解ではなく違和感として積み重なっていった。


ディアブロにとって“家族”という存在は価値を持たない。


そもそも彼には父や母と過ごした記憶が存在せず、春宮の記憶を通して出来事そのものを知ることは出来ても、その時に抱いた感情までは共有されない以上、それはただの情報でしかなく、そこに意味を見出すことは出来なかった。


だからこそ、“家族”という概念は空虚でしかない。


笑った理由も、泣いた理由も、触れた温もりも分からない以上、それを価値として捉えることは出来ず、水瀬の行動は理解の対象ではなく“観察対象”として処理されていた。


それでもディアブロは観察をやめなかった。


学校でも、バイト中でも、放課後でも、帰宅後でさえも視線を外さず、その日常を一つも取りこぼさないように追い続けることで、いずれその本質に辿り着けると考えていたからだ。


そして今日も同じように、水瀬が家へ帰る様子を観察していた時、これまでとは明らかに異なる出来事が起こる。


家の前に現れた訪問者は、この場に似つかわしくない存在だった。黒いスーツに身を包み、周囲を威圧するように立つその姿は、サングラスで表情を隠しながらも異様な圧を放ち、革靴の硬い音が地面に響く度に、その場の空気を乱していく。


その異質さと水瀬の置かれている状況が結び付いた瞬間、ディアブロの中で一つの答えが浮かび上がる。


――借金取り。


金を貸し、回収することを生業とする者の中でも、法外な利息で相手を追い詰める連中であり、逃げ場を奪い、選択肢を奪い、最後には人間そのものを搾取する存在である以上、目の前の男たちはその典型だった。


やがて、男の怒鳴り声が家の中へと叩きつけられる。


「おい!!いるのは分かってるぞ!!今日が何の日か知ってるよな!?返済日だ返済日!!おい!!聞こえてるんだろ!!」


壁を震わせるような声に、家の奥から慌てた足音が近づき、扉が開かれると母親と水瀬が姿を現すが、その表情には既に怯えが浮かんでいた。


「すいません。その、まだ‥‥お金が用意出来てなくて‥‥もう少しだけ待ってくれませんか?」


必死に言葉を繋ぐ母親の声は震えており、視線も定まらないまま男たちの顔色を窺っている。


「はぁ?あんたも学ばない奴だな。前もそう言ったから待ってやったよな?あんたの言う“少し”ってのは長すぎないか?それとも払う気ねぇのか?」


突き刺さるような言葉に空気が張り詰める中、それでも母親は言葉を止めることが出来ない。


「違います!!ちゃんと払います!!ただ、家にはもう‥‥払うお金なんて残ってないんです!!お願いです!!もう少しだけ待ってください!!」


そう言いながら地面に膝をつき、頭を擦り付けるようにして懇願する姿には、誇りなど微塵も残っておらず、ただ子供を守る為の必死さだけが露わになっていた。


だが、その姿を見ても男は一切動じることなく、軽く鼻で笑うと次の瞬間には水瀬の腕を乱暴に掴んでいた。


「あんたが払えないなら、娘に払ってもらうしかないな。」


「やめてください!!娘だけはッ!!やめてください!!」


掴まれた瞬間、水瀬の体は強張り、逃げようとする前に恐怖が全身を縛り付けていく。


「なら選べ。この娘が嫌なら他の子供を出せ。誰かが家族の為に働く必要があるんだ。選べよ??なぁ、母親なんだろ?」


突きつけられたのは選択の形をした強制だった。


どちらを選んでも、誰かが犠牲になる。


「それは‥‥できません。みんな大事な家族なんです!!お願いです!!私が働きますから、娘だけには手を出さないでください!!」


母親の声は震えながらも必死に食い下がるが、その想いはあっさりと踏み潰される。


「はぁ?お前みたいなババアに何が出来るんだよ?その体は歳で価値もないし、臓器だってガタがきてるかも知れねぇ。だったら若い女の方が価値があるに決まってるだろ?」


その視線がゆっくりと水瀬へ向けられる。


「それにお前も‥‥家族の為なら頑張れるよな?お姉ちゃんだもんな?」


その言葉は、水瀬の思考に深く沈み込み、頭の中には弟や妹たちの姿が浮かび上がっていた。


擦り切れた服を着ながらも笑っていた顔や、欲しいものを口にせずに諦めていた表情が現実のように鮮明に蘇り、その全てが胸の奥を強く締め付ける。


それに気づいてしまった私は”自分一人が我慢すればいい”という考えが自然と形を持ち始める。自分が犠牲になることで、あの子たちが少しでも楽な生活を送れるのなら、その選択は間違っていないと、そう思えてしまった。


元々、自分は我慢することに慣れている。苦しい状況に耐えることも、欲しいものを諦めることも当たり前だったからこそ、この結論に迷いは生まれなかった。


そして、水瀬の中から抵抗という感情は消える。


――コクン、と。


小さく縦に動いた首が、その全てを受け入れたことを示していた。


「決まりだ。じゃあ行こうな?今までご苦労だったなババア。後はお前の娘が必死に働いて借金を返す。お前は残ったガキと一緒に生きてりゃいい。」


そう言って水瀬を連れて去ろうとする闇金たちの背中に向けて、一つの声が落ちる。


「少し、待ってくれるか?」


その一言が、すべて人の足を止めた。


ディアブロは闇金たちを見据えながら、そう言葉を放った。


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