第131話 偽りの色??
‥‥雷だと?
ディアブロは一瞬、自分が見間違えたのかと思い、改めて目の前に立つ女の才能を確認するように目を凝らした。
しかし、何度見直してもそこに見える色は先ほどまでの赤ではなく、はっきりとした黄色へと変わっている。
数秒前までは間違いなく赤色だった。ディアブロほどの者が、これほど近い距離で見間違えるなど考えにくく、それにもかかわらず今、その女から見える才能の色は黄色へと変化している。
過去にも複数の色を持つ者は希少ながら存在しており、ディアブロ自身も長い時を生きる中で何度か目にしたことがあるが、そういった者たちは最初から複数の色が同時に見えている。
なので、この女のように一つの色が消え、まるで塗り替えられるように赤色から黄色へ変わるなど、これまで一度として見たことがなかった。
それならば、この女は自らの意思で色を変えることが出来るのか?
ディアブロが担任を見る目は、既にただの教師へ向けるものでも、これまでのように興味のない存在へ向けるものでもなくなっていた。
その瞳には明確な好奇心が宿り、自分の知らない未知の存在を知り、その仕組みを解き明かしたいという強い探究心の興味が滲み出ている。
そして、そんなディアブロの隣に座っている水瀬も、その僅かな変化にはすぐに気付いていた。
視線の先にいるのが誰なのかも分かっているだけに、今までにも何度か見てきたその顔に小さく息を吐き、周囲には聞こえない程度の声で「また始まった」と呆れたように呟くのであった。
その後は特に問題が起こることもなく担任の挨拶は終わり、教室内の空気も少しずつ落ち着きを取り戻していく。
すると担任は教壇の上から教室を見渡した後、新しくこのクラスへ配属された二人へと視線を向け、まずはディアブロに自己紹介を求めた。
「それじゃあ春宮くんから、軽い自己紹介を頼めるかな?」
そう言われたディアブロは周囲から一斉に視線を向けられる中でも、特に緊張した様子を見せることなく――
「もちろんです。」
と短く返事をすると、椅子を引いてスッと立ち上がり、自分の名前と得意な魔法、普段どのような戦い方をしているのかを簡潔に告げていった。
もちろん、その内容は本当の実力を隠すために作り上げた嘘ではあるが、語ったこと自体はディアブロならば全て実行可能なものであり、実際に確認されたとしても困るような内容ではない。
ディアブロの自己紹介が終わると、続いて教室中の視線が隣に座る水瀬へと集まり、今度は彼女が椅子から立ち上がる。
水瀬もディアブロと同じように、自分の名前と扱える魔法について言葉にしていくが、当然ながら語った内容は本来の能力のほんの一部だけで、自分の魔法については数人を少しだけ強化することが出来る程度のものとして説明した。
そして最後にはクラス全員から見えるように姿勢を正すと、綺麗な動作で深々と頭を下げ、誰が見ても礼儀正しいと思えるいい子ちゃんを完璧に演じてみせる。
その結果、整った顔立ちと丁寧な受け答え、そして礼儀正しい態度に騙された男子どものほとんどが、早くも水瀬へと好意的な視線を向けるようになっていた。
対して女子の何人かからは露骨に警戒するような視線を向けられていたが、当の水瀬はそんな反応など最初から予想していたのか、全く気にする様子もなく涼しい顔で席へと戻るのであった。
二人の自己紹介が終わったことで、担任は改めて教壇の中央へ立つと、新しい顔ぶれとなった生徒たちを一通り見渡しながら――
「それじゃあみんなで良いクラスにしようね。」
と最後にそうまとめ、その言葉を区切りとして新しいクラスでの最初の挨拶は無事に終わった。
こうしてディアブロと水瀬にとって新たな環境となるCクラスでの顔合わせを終えると、教室はすぐに普段通りの空気へと切り替わり、そのまま予定されていた通常授業が始まるのであった。




