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『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』  作者: Lark224a


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第12話 その信念の奥にある物。

ディアブロが狙っている女子の名前は、水瀬 結奈であり、かつて膨大な魔力を有していることで周囲をざわつかせたことのある存在だったが、その一方で致命的とも言える欠陥を抱えていた。それは、出力の無さである。


どれほど魔力を蓄えていようとも、それを外へと放つ力が伴っていなければ意味はなく、実際に彼女が行使する魔法は、どれも常人以下の威力しか発揮することができなかった。


まさに宝の持ち腐れと言うべき状態であり、その事実は彼女がFクラスに配属されていることからも明らかなように、既に学園内のほとんどの者が知るところとなっている。


そして当の本人である水瀬もまた、その現実を理解しているからこそ、既に探索者としての道を半ば諦め、別の進路を模索している最中であり、周囲の生徒たちが無気力に時間を浪費しているなかで、ただ一人だけ机に向かい続け、真剣に勉強へと取り組んでいた。


ディアブロの目に映る彼女は、どこか焦燥に駆られているようであり、余裕のない呼吸や僅かに震える指先、そして何かに追い立てられるかのような視線の動きから、その内面に抱えている切迫した思いがはっきりと感じ取れた。


なぜそこまで必死なのか、何に追われているのか、その理由までは分からないが、だからこそ余計に興味を引かれる存在でもあった。


そうして授業が終わり、教室のあちこちで椅子の引かれる音や雑談が広がり始めるなか、生徒たちがそれぞれ帰り支度を進めていくのに対して、水瀬だけは席を立つこともなく、最後までノートに向き合い続けていた。


その姿を確認したディアブロは、無駄な気配を消しながらゆっくりと彼女の元へと歩み寄る。


「水瀬さん。今から少しだけ時間あるかな?」


声のトーンも言葉の選び方も、あくまで“普通の学生”として違和感のないように整えられており、朝のやり取りでの失敗を踏まえた上での、明確な修正が見て取れる話し方であった。


しかし、水瀬はその声に対して顔を上げることすらせず、ほんの一瞬だけ手を止めたかと思うと、すぐにペンを置きながら立ち上がり、短く言葉を返す。


「すいません。この後、用事があるんで。」


その言葉に感情はほとんど乗っておらず、会話を続ける意思がないことをはっきりと示すように、視線すら合わせないまま教室を出ていった。


ディアブロはそれを追いかけることもなく、その場で静かに彼女の背中を見送る。


この結果は予想の範囲内であり、むしろ当然と言える反応であった。


ここで無理に踏み込めば、警戒を強めるだけで終わることは明白であり、今の彼女が他人の言葉に耳を傾ける状態にないことも、その短いやり取りだけで十分に理解できたからである。


自分の力だけではない、もっと別の何か――彼女の行動を縛り付けている“理由”が存在している。


それを知らない限り、どれだけ言葉を重ねようと意味はなく、当然ながら駒として引き入れることもできないという結論に、ディアブロはすぐに辿り着いた。


だからこそ、次に取る行動は決まっている。


直接ではなく、観察する。


故にディアブロは水瀬の後をつけることにした。


《飛行》と《隠密》のスキルを同時に発動させ、気配も音も完全に消し去った状態で、上空から彼女の行動を追跡していく。


水瀬が最初に向かったのは、特別でも何でもない、ごく一般的なスーパーであった。


当初は単なる買い物かとも思われたが、店内へと入った彼女はそのまま裏口へと消え、しばらくしてから店員用の制服に着替えて現れたことで、それがアルバイトであることを理解する。


レジに立ち、次々と流れてくる商品を機械的に処理していくその動きには無駄がなく、疲労の色を滲ませながらも手を止めることなく働き続ける姿は、明らかに慣れた人間のそれであった。


探索者育成学校に通う生徒がアルバイトをしているという事実は、決して一般的なものではない。


本来であれば、ダンジョンに潜り実戦経験を積む方が遥かに効率的であり、報酬も比較にならないほど高額であるため、時間を切り売りするような働き方を選ぶ者はほとんど存在しないからだ。


それでもなお、水瀬はこの選択をしている。


つまり、そうせざるを得ない事情があるということだった。


ディアブロは一切の感情を表に出すことなく、その様子をただ観察し続ける。


そして約四時間後、勤務を終えた水瀬は制服を脱いで店を出ると、休む間もなく足早に駅へと向かい、そのまま電車へと乗り込んだ。


車内においても彼女は席に座ることなく、吊り革に掴まりながら片手で教科書を開き、揺れる車内の中でも必死に文字を追い続けている。


一駅、また一駅と通過していくたびに乗客は減っていくが、水瀬の集中が途切れることはなく、その姿勢からは時間を一切無駄にしないという強い意志が感じ取れた。


やがて終電の一つ手前の電車で降りた彼女が足を踏み入れたのは、学校から二時間ほど離れた、街灯もまばらな自然の多い地域であり、周囲の景色は学園の近辺とはまるで別世界のように静まり返っている。


改札を抜けると同時に再び足早に移動を開始し、近くのスーパーに立ち寄って両手いっぱいに袋を抱えた状態で店を出ると、そのまま駐輪場に停めてあった自転車に乗り、暗い道を迷いなく進んでいく。


舗装の荒い道路を三十分ほど走り続けた先にあったのは、壁はひび割れ、屋根もところどころ傷んでいる、一軒の古びた家であった。


既に時刻は二十一時を過ぎている。


学生の帰宅時間としては明らかに遅く、それでも迷いなく扉を開けて中へと入っていくその背中には、疲労よりも“やらなければならないことがある”という意志の方が強く現れていた。


ディアブロはその一連の行動を見届けてもなお何も語ることはなく、ただ静かにその場に留まりながら、彼女という存在の本質を見極めるための観察を続けていた。

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