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『世界を統べた覇王と一心同体になった俺は最強の仲間【駒】を揃える』  作者: Lark224a


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第100話 親友の助け。

「おい!!開けろ!!俺だっ!!いるだろ?」


ギルドマスターが車をぶっ飛ばしてやって来た場所は、街中から離れた場所に建てられた巨大なドーム型の施設であった。


普段なら厳重な警備を前に勝手な真似など出来るはずもないが、今の彼にそんなことを気にしている余裕はなく、必死に体を張って止めに入る警備員たちを振り切ると、そのまま施設の入口まで駆け寄り、分厚い扉を拳で殴りつけるように何度も叩いた。


「おい!!聞こえてるんだろ!!ここを開けろ――綾小路!!」


巨大な施設の入口にギルドマスターの怒鳴り声が響き渡り、しばらくして重厚な扉がゆっくりと左右へ開いていくと、その奥から姿を現したのは、この場所の管理者である綾小路秀人本人であった。


綾小路とは、忘れている人も多いかもしれないが、以前ディアブロが水瀬の装備を作る為に仕方なく引き受けた仕事の依頼者であり、ダンジョンの研究に自らの人生そのものを懸けているイカレタ研究者だ。


そんな綾小路とギルドマスターの付き合いは、綾小路が日本へ戻って来た頃からであり、本人たちは決して口にすることはないものの、互いにとって数少ない”親友”と呼べる関係であった。


「そんなに叫ばなくても聞こえている。一体、何の用だ。俺はお前らと違って研究で忙しいんだぞ?分かっているのか?」


突然押しかけて来たギルドマスターに対し、綾小路は露骨に不機嫌そうな表情を浮かべながら答えるが、今のギルドマスターには、その機嫌を窺っている余裕など欠片もないからか、いつもなら皮肉の一つでも返すところだが、今日はそんなやり取りすらせずに息を整える間もなく本題へと入った。


「今、俺が管理しているダンジョンでスタンピードが起こっているんだ!!」


「なに‥‥スタンピードだと?」


それまで面倒そうにしていた綾小路の表情が、その一言を聞いた瞬間に変わった。


すぐさま近くにいた部下へ指示を飛ばすと、施設内の巨大なスクリーンに問題となっているダンジョンのマナ数値を表示させ、次々と更新されていく数値を鋭い目で追っていく。


「‥‥確かにマナ数値に異常が発生している。この数値ならスタンピードが起こっているとは思うが、この程度なら、そこまで大きな物じゃないはずだ‥‥お前ら探索者でも対応できるはずだろ?一体何があった?」


スクリーンに表示された数値を僅かな時間確認しただけで、綾小路はスタンピードのおおよその規模を読み取ってみせた。無数の数値と過去のデータを頭の中で瞬時に照らし合わせ、そこから現在の状況を導き出すその頭脳は、やはり天才と呼ぶ以外にない。


そして、だからこそ綾小路には分からなかった。


この程度の規模なら、目の前の男がわざわざ車を飛ばし、警備員を振り切ってまで自分のもとへ駆け込んで来る必要などなく、それを理解出来ないほど、この男が無能ではないことを知っているからこそ、綾小路はスクリーンから視線を外し、改めてその理由を問いかけたのだ。


「‥‥あぁ、もちろんギルドでもお前と同じで、そこまで大規模なスタンピードではないと判断した。だが、いくらドローンを回してもスタンピードの発生層が分からないんだ。一層~三十層の隅々まで確認したが、スタンピードは確認出来なかった。」


「何だと?」


その言葉を聞いた綾小路は僅かに眉を寄せると、今度は部下に任せることなく、自らPCの前へと移動した。素早くキーボードを操作してシステムのアクセス先をギルドへと変更すると、ダンジョン内部を飛び回っている複数のドローンから送られてくる映像を次々とスクリーンへ表示し、一層から三十層までの状況を自分の目で確認していく。


しかし、どれだけ映像を切り替えても結果はギルドと同じであり、スタンピードの発生源どころか、それらしい異常すら確認することは出来なかった。


ただ、その中で一つだけ、明らかに異質な場所が存在していた。


――二十層。


そこには本来なら徘徊しているはずのモンスターが、一匹たりとも存在していなかった。


「おかしいぞ。この層だけモンスターが一匹もいない‥‥」


スクリーンに映し出された二十層の映像を前に、綾小路は目を細めた。ドローンがどれだけ通路を進み、広い空間を映し出しても、そこに動く影は一つとしてなく、本来ならモンスターの気配で満たされているはずの階層が、不気味なほど静まり返っている。


「そう。俺たちギルドも、そこがおかしいと思った。だから、わざわざお前のところまでやって来たんだ。スタンピードが起こっているからといって、モンスターがその層から消えることってあり得るのか?」


「いや、あり得ない。そんな話は今まで聞いたことも、起こったこともない。その層からモンスターの姿が消えるという現象に説明を付けるとするなら、あり得るのは一つだけだ。」


綾小路はそう言いながら、無人となった二十層の映像を睨み続ける。その言葉にギルドマスターも自然と息を呑み、僅かな沈黙が二人の間に流れた。


「それは‥‥何だ?」


「簡単だ――倒されたんだ。その層にいるモンスターが何者かによって全て倒された。だから、その姿を消した。」


その答えを聞いた瞬間、ギルドマスターは言葉を失い、反論するよりも先に口を閉じた。


確かに説明としては筋が通っている。そこにいるはずのモンスターが一匹も存在しないのであれば、何者かによって全て倒されたと考えるのが最も単純であり、最も分かりやすい答えだ。


だが、それを実際に行えるかどうかは全く別の話だった。


一つの階層に存在するモンスターを、文字通り一匹残らず倒し尽くすなど、世界中のどの探索者にやらせても不可能に近いし、ましてや二十層ともなれば、そこに生息するモンスターの数も強さも、それまでの階層とは比べ物にならず、説明として筋が通っていたとしても、それを実行出来る人間が存在しない以上は簡単に受け入れられる答えではなかった。


「いや、それは‥‥不可能だろ!!そんな探索者がいるわけないだろ?お前もうちの探索者のレベルは知っているだろ?」


「いや、何も探索者だけに限った話じゃない。」


「何?」


ギルドマスターが眉を寄せる中、綾小路は何かを思い出したようにスクリーンから視線を外すと、そのまま踵を返した。


「待ってろ‥‥面白い物を見せてやる。」


それだけを言い残して何処かへと姿を消した綾小路は、しばらくすると一枚の紙を手に戻って来た。その表情からは先ほどまでの不機嫌さが消えており、代わりに研究者特有の、未知の現象を前にした時の鋭い光が瞳に宿っている。


「これを読んでみろ」


差し出された紙を受け取ったギルドマスターは、訝しげな表情を浮かべながら、その内容へと目を通していく。そして、最初に書かれていた一文を目にした瞬間、その表情が僅かに強張った。


そこには、こう書かれていた。


『ダンジョンに開けられた縦穴に関する調査結果。』

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