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望月 ―― 予感

 その頃、深夜の宮中。


 回廊の奥、誰にも邪魔されない静寂の中で、男は一人、盃を傾けていた。


 今宵は月もなく、頭上には空を流れる川がどこまでも広がっている。無数の星々が、静かに、力強く神話を紡いでいる。


 男が銀河の輝きを映した液面を見つめていた、その刹那――視界の端を、ひときわ大きく流れる星が夜空を貫いて消えた。


 風もないのに中庭の木々がざわめき、木立の奥から鳥たちが一斉に羽ばたいた。遠く離れた山から、宮中まで響き渡る狼の遠吠えまで聞こえ、男は盃を止めた。


 肌を撫でる空気が、微かに、しかし決定的に変質したことを悟ったからだ。


「……今宵は、随分と騒がしいな」


 男が虚空を仰ぐと、星々は先ほどよりも強く瞬いている。盃の縁を指先でなぞりながら、得体の知れない予感の正体を確かめるように、静かに目を細めた。

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