表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/68

春待月 ―― 炬燵でみかん

 息を吐けば白くなる季節、竹取の屋敷の離れでは、初めて過ごす冬を快適にするため、準備をしていた。


 弥子は、湯殿に隣接した休憩室の中央部分の床板を捲った。四角く切り下げられた空間、それに合わせてあつらえた炬燵台。ここに父が吐いた絹糸を綿に加工してつくられた炬燵布団。木製の火入れ、陶器の火鉢に豆炭。

 しかし、父は嘆いていた。


「この私が失敗するとは、情けない。どうして床暖を思いつかなかったんだ。せっかく湯殿があるのに」

「まあまあ、いいじゃない。お父さんの出してくれる糸で壁全体を囲むカーテンもあるから、暖かいよ」

「ここで冬を越すなんて、思いもしなかったな」


 しみじみと言う父にみかんを差し出した。


「お父さん、好きでしょう。食べる?」

「おー、炬燵にみかんは欠かせないな」


 蚕が炬燵の台の上でぴょんぴょん飛びはねた。蚕の姿になって、半年。いまだに人間に戻れず、現代へ帰る術も見つかっていない。


「美味いみかんだな」

「ほんとだ。たまには惟光も役に立つな」

「惟光? あいつ、また来たのか」


 渋い声を出す父に、弥子は苦笑いしつつみかんを頬張った。


「今度、お餅も持ってくるって言ってたよ」

「餅、そうか、餅か」

「小豆があるから、煮詰めてあんこ餅にしようか」

「それいいな」


 みかんを食べる手が止まらない、気づけばみかんの皮が山になっていた。それは父も同じこと。みかんをひたすら吸っている。


「惟光にあまづらも持ってきてって、お願いしたの。そのあんこ餅の材料持って、八子の里に行こうと思ってるの。かよちゃんのおばあさんの布団も作ったから、それも持っていって、クリスマスパーティーするつもりなんだ。あ、寒いから、お父さんは留守番ね」


 絹の綿をたっぷり詰め込んだふかふかの掛布団をポンと叩いた。


「それは構わんが、暖かくしていきなさい」

「大丈夫、綿入の上着があるから」


 外や世間の寒さとかけ離れ、ほのぼの生活を満喫する弥子と父であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ