表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/68

小望月 ―― 因縁の相手

 その頃、宮中では――。

 夜まで続いた行事をようやく終えたばかりの帝は、弥子の姿を探した。

 待機していた随身がすかさず帝に向かって平伏した。


「主上、恐れながら申し上げます。弥子さまが、早馬に乗って、村へ向かわれてしまい……」


「聞こえなんだ。もう一度、申してみろ」


 随身は、恐怖に慄きながら、床に額をこすりつける。冷や汗がだらだらと流れ落ちていく。


「恐れながら申し上げます、弥子さまが、早馬に乗って、村へ向かわれてしまいました。お引き止めはいたしたのですが、あまりに早く」


 帝が随身の胸ぐらを掴み、鬼の形相で睨みつける。


「なんのために、行かせたと思っておる」


「お怒りは承知しております」


「主上――」


 また一人、弥子につかせた随身が戻ってきた。嫌な予感しかしない。帝は胸ぐらを掴んでいた随身を払いのけると、たった今、戻ったばかりの随身の前に行く。


「弥子はどうした」


 随身は青ざめたまま平伏し、額を床にこすりつけた。


「主上、恐れながら申し上げます。弥子さまが、自ら囮になって、賊の潜伏先に連れて行かれました」


「惟光ーっ」


 誰もが、心臓を掴まれた気がした。落雷に打たれたように全身がビリビリした。


「はっ、何なりと申しつけください」


「すぐに出かける支度をせよ」


「な、なりませぬ。明日も朝から御祈祷が」


「主上、恐れながら申し上げます。潜伏先は、道安上人がおられる寺院です。弥子さまには鷹がお傍でお守りしております。どうか、いましばらくお待ちください」


「道安だと」


 宮中を追放した因縁の相手、道安が絡んでいる。帝は、歯がゆさと、いら立ちでどうかなりそうだった。弥子の一大事に飛んで助けに行くことすらできないのか。


「ならば、今すぐに寺院へ行き、潜り込んで必ずや弥子を守れ。傷一つ、つけようものなら、そちらの首だけでは済まさぬゆえ、覚悟しておけ。惟光は、逐一私に報告しろ」


「御意」


 大きく息を吐いて背を向けた帝は、ふいに足を止め、振り返った。


「待て。私に策がある」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ