更待月 ―― 納涼会への招待
暑い。
朝晩は比較的涼しいが都は盆地。昼間の暑さは現代とあまり変わらない。コンクリートや室外機の熱はないのでマシではあるが。庭の木には蝉が鳴き、さらに暑さを演出する。
湯殿の隣、休憩室で暑さにやられてだらだら転がっているのは、世にも名高いかぐや姫、こと現代の女子大生、弥子である。
「エアコンほしい。せめて扇風機――」
と、望んだ所で出てくるはずもなく。
桶に水を張り、ベンチに座って足を浸し、首に濡れたタオルを巻き、柑橘系のジュースを飲んで暑さを凌ぐ。
貴族たちは夏でも優雅に過ごすため、納涼会を行うこともしばしば。そして意外な人物がかぐやを納涼会に招待した。
「宮さまのお使いがきて、明日の夕刻、迎えにくるそうだ」
浮き足立つ翁の話では、主催者は皇族の姫君、西の宮さまで、その使いの者が姫君の言葉を告げにきた。聞けば女子会なので御簾越しではなく、楽しくおしゃべりがしたい、と。
皇族の姫君となると招待というより、召喚だ。断りの返事を書くことも出来ない。これは、宮さまからの無言のメッセージ。絶対に来るのよ、と。
「また、厄介な相手に目をつけられたものだ」
「ほんと、どうしてみんな放っておいてくれないんだろう」
弥子はうんざりして溜息をついた。
姫君の夏の装いといえば肌が透ける薄い絹を重ねたものが主流。ブラがないので、胸が透けて見える。
「普段、顔を隠すのに、胸は見られても平気って、不思議だわ」
「それで、どうするんだ」
「私は普段から下着付けてるもん。今回はちょっとお洒落に見せる下着にしたけど」
じゃーん、と言いながら、紐を取り付けた桃色の胸当ての布を披露した。白く小さな花の刺繍が施されている。
下着を見せられて、父は少々困惑気味。
「父親に下着を見せるなんて、恥ずかしくないのか」
「別に見せる下着だもん。あ、そうだ。お父さんは、今夜留守番ね」
「えっ」
「だって、他の姫はこんな下着付けてないんだよ。よそ様の娘さんの胸なんて見たら犯罪だよ」
「袂に隠れていればいいだろ。何があるのか分からないのに、娘を一人で行かせるなんて」
「だめ、留守番よろしく」




