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更待月 ―― 蓬莱の玉の枝

 難題を聞いた石作が旅支度を済ませ、数人の供と一緒に都を出てから二週間ほど経った頃――。


 庫持皇子はいら立っていた。

 石作が姫のために天竺へ向かったと聞いた。戻ってくるまでには相当の年月がかかることは容易に想像できた。これでは二番くじを引いた自分の番が回ってくるのはいつになるのか分からない。


「そんなに待っておれるものか。こうなれば、明日にでも姫の屋敷に押しかけてやろう」


 先に姫の心を掴んだものが勝ちだ、と言わんばかりに庫持は竹取の屋敷へ向かった。


「分かりました、かぐやには伝えます。しかしご存じの通り、かぐやは意志が強く、説得するのも容易なことではないのです。どうか今日の所はお引き取りを」


 誰が来ても門前払いするように言われていた翁は、なんとかその場を収め、庫持を帰らせた。


「明日、また参る、と申されたそうです」


 下女から報告を聞いた弥子はさっそく、蚕の姿をした父と湯殿の隣の休憩室で作戦会議を始めた。


「庫持は蓬莱の玉の枝か」


「庫持、こいつはやっかいな相手だぞ。相当、悪いやつで、人を集めて偽物を作らせるんだ」


「ふーん。ところで、私があまり詳しくないから聞くんだけど、五人はどうやって難題を解決しようとしたの?」


「みんな本物を手に入れられず、偽物を持ってきて姫を騙そうとした。財や地位を失い、世間の笑いものになった。まぁ、自業自得ってやつだ」


「もう少し、詳しく聞かせて。偽物を持ってきた後、どうすればいいか知っておかなきゃ」


 翌日――朝早くから庫持がやってきた。翁は弥子に言われた通り庫持に無理難題を伝えた。内心、怒り出すのではないかと、ひやひやしながら。


「東の海にある蓬莱山には銀の根、金の茎、白い真珠のような実のなる木があるそうです。ぜひともその実のついた枝を見てみたいと申されております。願いを叶えて頂ければ、庫持皇子の言うことを何でも聞くと申しておりました。かぐやは自分への愛情がいかほどか知りたいのですよ」


 言うことを何でも聞く、この言葉はまるで呪縛のように庫持の体を這いずり回っていた。


(望みを叶えれば、すぐさま私を屋敷の中へ招いてくれる。そうすれば、噂に名高い姫は私のものとなる)


 清らかな肌を三日三晩撫でまわし、自分の胸の中で小鳥のように囀る姿を想像するだけで、庫持は激しく興奮した。


「よし、その願い、この私が叶えて見せましょう」


 しばらくして庫持皇子が蓬莱山へ行くと言って家来を連れ、港へ向かったことを風の噂で聞いた。





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