表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静かに欠けてゆく世界  作者: オクト
第一章〜嘘〜
PR
40/43

第39話 焦燥の先へ踏み込む者たち

嵐の前の、静かな時間

ホウジュンが招集したのは、自身含め5人だった。

トキにインプラントされたリストから、単騎でも戦える、動けると判断した者を選抜したつもりだ。


「行くのはいいけど、リーダーお前なのか?」


自我が強い1人が揶揄うように言う。

普段なら受け流すが、今の彼にそんな余裕はなかった。


「わかった。なら抜けろ」


別にお前じゃなくていい。そう言い捨て、ホウジュンは別の者を呼び出した。


「は?ふざけん…」

「今は言い争う時間が惜しい。わからんやつはいらん」


彼らしくない言動に、周りの空気がピリついた。

それすらも、構ってる時間が惜しい。

急遽呼ばれた者たちに事情を話し、人数が増える。

向かうのは、6人。


「先に言う。これは…救出じゃない」

「は?」

「じゃあ、なに…?」


ホウジュンの言葉に戸惑う仲間たち。

彼は一度息を吐き、決意するように言った。


「状況把握、偵察……ファルシラを倒すための情報収集だ。その過程で、助けられたら、助ける」

「見捨てるのか?」

「そう思うなら降りろ。この先、どう転んだって、地獄だ。最悪、俺一人でいい」


自身に言い聞かせるようでもあり、吐き捨てるようにでもある言葉を放ち、その場から離れようとする。

頭の中に、トキが渡してきた数々の情報が過り、その量に対応が追いついてこない。その苛立ちからか、ホウジュンの心は乱れていた。


「待てよ、ホウジュン」


一人が声をかけ、彼の足は止まる。

軽く駆け寄ると、がしっと片腕でホウジュンの肩を組んだ。


「今更、怯んだりしねぇよ。お前一人に、背負わせるつもりもねぇ」

「……悪い。どうかしてた…」


相手の言葉の意味を汲み取り、ホウジュンの体の力が少し抜けた。張り詰めている空気も、若干だが緩む。


「リスクもあるが、アクシスで飛ぶ。長くはいない。必要なものは自分で揃えてきてくれ。ここで一刻待つ。来なかったら、置いていく」


おう。や、ああ。と言い、集まった仲間が一度散った。

壁に寄りかかったホウジュンは、眉間に皺を寄せながら目を閉じ、再び仲間が集まるのを待つ姿勢だ。


「お前は、準備しないのか?」


動かない彼に、一人が声をかけると、片目だけで相手を見、ああ。と答える


「俺は、これだけあればいい」


腕に絡む重厚な鎖のブレスレット。ホウジュンのレガティマ。


「潔いな」

「本当に…長くいるつもりはない。アクシスで行って…アンカーで戻ってくる…」


本当の最短ルート。しかも、アンカーで戻ってくると言うことは、ほぼノーダメージの予定だと宣言しているようなものだ。

仲間が無意識に、生唾を飲んだ。

それには気づかず、再び目を閉じて、ホウジュンは何か考えているようだった。


「なぁ…ユウヒはどうした?」

「いない」


当然のような問いに、最低限で返す。

それだけで、相手は何か悟ったようだ。

若干の苦笑をこぼす。


「だからお前、なんか変なのか?」

「ん?いや……トキが、ちょっとな…」

「は?」

「あの天才らは、いつもこうなのか?」


曖昧に濁し、そして、最悪だな。とため息をこぼす。

そんな態度に、相手は思わず笑った。

何があったかは知らないが、ホウジュンまでもがおかしくなっているわけではない。そう知れた。

それがなんだか、救いにも感じる。


「ホウジュン!!」


軽く会話をしてると、突然呼ぶ声が響いた。

声の主が想定内だったのか、ホウジュンは軽く息を吐く。

息を荒げながら走ってきたのは、シンだった。


「俺も!連れてけ!」

「駄目だ」


即時に却下される。シンを見ることすらしなかった。ただ、変わらず腕を組み、壁にもたれる。


「なんでだよ!」

「お前はリストに入ってない」

「は?なんだよリストって」


知らんでいい。とホウジュンは冷たくあしらう。

それでも食い下がるシンに、やっと顔を上げると、腕を解き、シンの額を指で弾いた。


「…ッ痛ぇ!」

「聞き分けろ、シン」


2人の温度差に、戻ってきた仲間たちの方が戸惑っていた。

んだよ…と、シンは唇を噛み締め、ダンッ!と地面を踏み鳴らした。


「……俺が弱いからか?だから…!」

「違う」


ホウジュンは即時否定する。


「ならっ!」


引かないシンに、悪い。と断ってから、2人はその場を離れた。

連れられたシンは噛みつこうと息を吸ったが、口から言葉が出ることはなかった。

ホウジュンがまっすぐに、シンを見る。


「お前は強い」


彼から放たれた言葉に、シンは一瞬理解ができず放心した。

ポンと、ホウジュンはシンの頭に手を乗せる。


「今は、メンツが足りない。あっちもこっちも手一杯だ。だから、お前はここで、仲間を守れ」


できるな。

そう、ホウジュンが言う。

それは、信頼の証以外のなにものでもなかった。

シンはそう受け取り、歯を噛み締めた。


「………任せろ!」

「ああ、それでいい」


それでこそ、俺の弟子だ。

ホウジュンは、やっと表情を緩ませた。


次回更新予定は6/5です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ