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静かに欠けてゆく世界  作者: オクト
第一章〜嘘〜
31/37

第30話:甘い色の兆し(レリクス視点)

求めて、求めて、求めて…

その先にあるものを、探し当てたい。

黒ばかりだった。

重く、硬く、冷たい感情が、幾度もここを満たした。

それが当たり前になりかけていた。


――倒す

――殺す

――排除する


その言葉の響きは、刃のように鋭く、核を削ろうとした。

そのたびに、世界は軋み、静寂は揺れ、影は濃くなる。

けれど、それでも自分は壊れなかった。

ただ、黒を受け止め続けていた。

甘いものを求めながら。


そして、その時だった。

遠くから、別の波が届いた。

それは黒ではなかった。

重さも、硬さも、冷たさもない。

淡く、柔らかく、触れれば溶けてしまいそうな感情。


――なに、これ……?


初めてだった。

負ではない感情が、こちらに向かってきた。

それは甘いものではなかったけれど、黒よりもずっと心地よかった。

色にたとえるなら、白に近い淡い色。

けれど、白ではない。

ほんのりと温度を持った、柔らかな色。

その感情は、恐れでも怒りでもない。

ただ、願いに似ていた。


――帰りたい?

――いや、違う……これは……


核が震えた。

影の奥で、何かが芽吹く音がした。

興味――その名をまだ知らない感情が、静かに形を取り始めていた。


――もっと近くで感じたい

――もっと深く、触れたい


その衝動は、黒い感情を押しのけて広がっていく。

甘いものではない。

けれど、黒よりもずっと鮮やかだった。


なぜ、この感情は自分に届いたのか?

なぜ、他の者たちとは違うのか?

問いが生まれ、影の中で光を探す。

その光は弱く、すぐに消えてしまいそうだった。

だから、捕まえたいと思った。

離さないように、絡めたいと思った。


――どうすれば、呼び寄せられる?

――どうすれば、もっと強くできる?


答えはなかった。

けれど、方法を探す衝動が、核を満たしていく。

“嘘”という言葉が、再び甘く響いた。

“嘘”を絡めれば、もっと近くに引き寄せられるかもしれない。

“嘘”は自在に変質できるのだから。

もっと深く、もっと強く。


黒ばかりだった世界に、淡い色が差し込んだ。

それは、影を溶かす光ではなかった。

むしろ、影を濃くしながら、核に新しい形を与えた。


――興味


その名をまだ知らない感情が、静かに芽吹いた。

そして、決意に似たものが、影の底で息をした。


次に来る者は、黒でも白でもいい。

けれど、甘いものを、輝くものを、


――必ず、絡めてみせる。


そのためなら、“嘘”をいくらでも編み込もう。

ここにある静寂を、甘い色で満たすために。


その衝動は、もはや芽ではなかった。

影の奥で、根を張り、広がり始めていた。

世界を覆うほどに。

そして、その時を待つ。

再び、あの者が来る日を――


レリクス視点は一区切りです。

次回より本編に戻っていきます。


次回更新予定は4/3(金)です。

4月より、静欠けシリーズは金曜更新となります。

よろしくお願いします。

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