35. 蘇るフェニックス
「なあ、アレってなんだろうな?」
「きっと、フェニックスね」
空が真っ赤に染まっている。
アレは、フェニックスが炎で染めた光なのか。
俺達は、ペントハウスの庭から、ただ呆然とソレを眺めている。
「住民の皆さん、今すぐに逃げて下さい! 多摩区に、大型の… は? なんですかコレ? ニワトリ!? はあ!? え? マジですか? 大型のニワトリが接近中です! ……どこに逃げるんですかね? あ! てめぇ、派遣スタッフだけ残して逃げんなよ、税金返せコラ!」
防災無線も混乱している。
「どこに逃げんだろうね。俺らは、逃げられんが。アレを退治しろって言われちゃったから」
「どう見ても、ニワトリなんじゃがー。ほんまにアレ、フェニックスなん?」
やはり、俺の幻覚ではない。
ニャア大佐にも、同じものが見えている。
のっそりと多摩区役所の陰から姿を現した巨大不明生物は、ニワトリにしか見えなかった。
ちょっとサイズがオカシイだけのニワトリだ。
ちょっとか?
多摩区役所よりは、大きいな。
トサカが無いからメスか?
卵産まないかな。
芋煮会イベントみたいな巨大な鍋で、巨大なオムレツ作れそう。
どういうわけか、建物を避け、地上の車なんかも出来るだけ避けているようだ。
さっき、川崎市バスだけは蹴っ飛ばしたけど。
川崎市バスなら仕方がない。
あ、神奈川県警のパトカーも蹴っ飛ばしてしまった。
特定の思想、もしくは偏見を持ったニワトリなのだろうか?
ウーバぁ…、実況はこれくらいにしておこうか。
俺の偏見を晒している気がしてきた。
「フェニックスで間違い無いわよ。足に嵌めている輪っかにそう書いてあるもの」
「あれは、私が書いた」
「あー、ほんとだな……、あれって、ボロアパートで飼ってたヒヨコじゃないか?」
確かにフェニックスだった。
ミーとハーが、武蔵小杉のボロアパートで飼っていた使い魔。
どういう原理で、足環まで巨大化したの知らんが。
そうか、ほんとうにアレはフェニックスだったのか。
単に、フェニックスと名付けたヒヨコかと思ってた。
ボロアパートの火災で焼失したはずが、復活してしまった。
さすがフェニックス。
不死鳥と呼ばれるだけの事はある。
もっとも、全身が炎で包まれていたりはしないし、どう見てもデカいだけのニワトリなんだが。
最近読んだなろう小説では、ワイバーンがそうだった。
魔法少女が爆撃機で空爆して討伐していたな。
魔法使わずに。
「こっちに向かってる。どうやらタマちゃんに恨みを持っているらしい」
「そうね。ボロアパートの火災が無ければ、タマちゃんに食べれらる運命だったものね」
「タマちゃんに、逆襲せに来たんじゃのう」
「おい? 俺は、あいつと会った事も無いんだぞ。生きていればオイシク頂いたかもしれんが」
倒すんだから、向こうから来るなら都合がいい。
でも、どうやって倒せばいいんだ?
ガメラのパチモンの時は、どうやったっけ?
アレは、ジャスティス・エージェントの方のフェニックスが、何かしたんだった。
エージェント世界に帰したんだよ。
「あのニワトリは、エージェント仲間じゃないのか?」
ジャスティス・エージェントの方のフェニックスに聞いてみる。
「違うよ。さっきも言ったけど、アレは魔物だからね。正義のミッションとして討伐してよ」
そんな魔物を、ミーとハーは何処で拾って来たんだろうか? まさか、縁日で売ってたの?
謎しかないなー。
そういえば、ボロアパートを爆破した犯人ってどうなったんだっけ?
謎のままなんだっけな。
半年くらい引き籠って寝てたから、いろいろ忘れてんなあ。
サナエ・トレードで逆張りしちゃってね…、不貞腐れてたんだよ。
最近、ヤクザみてえな実弾介入が来て、やっと救われたが。
そうか、実弾介入か…。
無慈悲なチャートの急落…。
それを喰らわせれば…。
うん、巨大不明生物の討伐に何も関係ねえ。
「ジャスティス・ポイントを使えば、兵器を召喚出来るけど。どうする?」
おいおい、ポイントにそんな使い道があるなら、早く言えよフェニックスめ。
あー、紛らわしいなあ! あっちのフェニックスに名前を付けよう。
名前はある事が大事だって、エライ人が言ってた。
「まず、あいつに名前を付けようぜ?」
「じゃあ、ヤキトリね」
「よし、文字通り丸焼きにしてやるぜ」
ヤキトリ討伐作戦開始だ!




