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俺たちの罪 ~正義のヒーローは魔法幼女と共に異世界転生を目指して悪事を働く~  作者: へるきち


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36. 正義のドラゴンアタック

「アレを倒したら1000万ジャスティス・ポイントだよ」


 あんなの倒せねぇよ、逃げちゃおうぜ、このビルが壊れても俺の懐は痛まないし、どうせ家電やら買い替えたいと思ってたんだ、怪獣被害って火災保険おりんのかな?

 などと、戦略撤退モードに入ろうとしていたら、そんな事を言い出したメカフェニックス。


 ジャスティス・ポイントは666万貯めると異世界へ行ける。

 行先はガチャらしいけど。


 つまり、ヤキトリ(肉フェニックス)を倒せば、俺の人生は一発であがり?


「男なら、負けると分かっている戦いでも……、いや、やっぱ負ける戦いはやっちゃダメだよなあ? 職務経歴書に傷が付くぞ。26年春のフェニックス討伐作戦プロジェクトに参画というのは、もしかしてニュースになったアレですか? プークスー言われちゃうよ。職場見学会という名で偽装した面接で。いや、どんな派遣先でそんな経歴を開示する必要があると言うんだ……、どのみち、正義のヒーロー業務に従事って書くか、空白にするしか……あれ? 俺の経歴ってもうゴミポンコツなのでは?」


 そうやって考えているうちにも、ヤキトリはどんどん迫って来る。

 どうすればいいんだ!?

 倒すとしても、あんなのどうやって倒す!?


「タマちゃんのドラゴンを対決させればいい」

「ダメよ。こいつのドラゴンは雑魚よ」

「魔法で巨大化させればどうじゃろか?」

「わお。ソレ見てみたい。ヤキトリの総排泄口にズドンと大きなイチモツを下さい」

「貧血で死んじゃうわよ」

「とりあえず、師匠はひとり脳内会議を声出してやるのは止めた方がええと思うんじゃがー」


 俺のドラゴンか。懐かしいネタだな。

 え? 魔法で巨大化出来んの?


「巨大化して対決? そうだ! うちには肉フェニックス弐号機が居ただろ?」

「アレなら、もう食べちゃったじゃないの」

「え? いつの間に!? お前ら名前付けて可愛がってたもん、よく食えるな!?」

「元から非常食でしょ。卵も産まない雄鶏なんだから、食べ頃になったらオイシク頂かないと。それが傲慢な人類の義務よ」


 うちにはフェニックスという名のニワトリが居た。

 ここに越して来た時から飼ってた弐号機だ。

 そういえば、いつからか見てなかったな。


「じゃあ、猫だ! うちにはコタツジュニアっていう武闘派の猫が居たはず!」

「コタツジュニアなら、父さんの仇をとるって言って旅に出たでしょ」

「ええ!? 猫エイズとかになっちゃうだろ? 外に出すなよ」

「フェ肉食べて不死の加護があるから大丈夫よ、たぶん」


 フェニックス弐号機も、ニワトリに見えるだけのフェニックスだったの?

 初号機もそうだけど、一体どこで入手してんだ。


「やっぱり、タマちゃんのドラゴンを」

「公然わいせつ罪で逮捕だよ。スマホのカメラで撮影してる連中も居るし、デジタルタトゥーまで刻まれて社会復帰が困難になるじゃねーか。却下だ」

「じゃがしかしー、肉を食べただけで不死になるフェニックス相手じゃろ? 不死の加護を得たドラゴンでもぶつけるしかないと思うっちゃ」

「いや、コタツジュニアならうちに居着いてるんだけど。猫の居る美容室として、BSテレ東の取材も受けたんだけど知らない?」

「え? うち地上波もBSも受信設備が無い事になってるからな。TVerかユーチューブでやってないなら見てないよ」


 いやいや、コタツジュニアがバンパイヤ美容室に勝手に引っ越してたのは軽くショックだが、そんな事を話してる場合じゃあないぞ。

 などと言っていると。


「ふしゃーっ!」


 巨大化してもいないコタツジュニアが、ペントハウスの屋上からヤキトリを威嚇している。

 

「コケーッ!」


 フェニックス、コケーゆうてるやん。

 

 ずどん!


 生命の危機を感じたからなのか、巨大な卵を産み落とすヤキトリ。

 川崎市バスと神奈川県警パトカーの残骸と衝突して、割れてしまった。

 ああ、もったいない……。

 もっとも、アレを回収するのは無理だったろうけど。


 どろーぐちゃー、っと広がっていく真っ黒な卵黄と、紫色の卵白。

 こんな色してても、卵黄卵白と呼ぶのだろうか?

 あ、スマホ構えてた連中が飲み込まれた。


 ドドドドドドドドド!


 突如、ヤキトリが多摩川に向かってチキンランを始めた。

 ニワトリって泳げるんだっけ?

 多摩川をバシャバシャと渡ろうとしたヤキトリは、東京都との境辺りで突如何かにぶつかったかの様に、ぐしゃっとなると水面に横たわった。


 ばしゃあああんん!!


 盛大な水しぶきをあげたヤキトリは、それっきりピクリとも動かなくなった。


「アレは…、多摩川に張られた結界にぶつかってしまったか……」


 バンパイヤ美容師が、遠い目をしてそんな事を言い出した。

 昭和の怪獣映画で、伝説を語る村の長老みたいだな。


 あー、あの死体の片付けは、神奈川県と東京都のどっちがやんだろうか。

 捜査する所轄でも警視庁と神奈川県警で揉めそうだなぁ。

 なんて思ってたら、ヤキトリは光の粒子になって大空へと舞い上がり、消えた。


 これは、完全に沈黙どころか、完全に消滅だろ?

 つまり?


「コレは、コタツジュニアが討伐した事になんのか? うちの猫、かどうかアヤシイが、俺らの手柄って事でいいか?」

「そうだね! おめでとうタマちゃん! 1000万ポイントだよ!!」


 ついにこれで、異世界に行ける!?

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