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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
47/62

ミッドウェー西航空戦 こんなこともあろうかと 火龍よ、いつの日か

分離します。

双龍でいたのは四・五・六の三ヶ月。短い命でございました。

主役なのに。酷い扱いである。


 6月6日 一六:〇〇 


 双龍艦内では、火龍分離への準備が進められた。

 乗組員の私物を雷龍側に移動させる。これは人員確認もかねていた。数十名の戦死者行方不明者が出ている。確認は当然だった。

 分離作業は、榊整備班長が中心になって行うことになった。応急長は浸水を少しでも食い止め、分離まで時間を稼がなければいけなかった。

 後藤整備隊長は「榊さんがやるなら、任しとけば良い」と言って後方支援に徹するようだ。

 榊整備班長は唇に薄ら笑いを貼り付けていた。今現在艦の危機なんですが。


 

 艦長が示した手引き書によると、この艦は八カ所のボックス構造でつなげられているという。

 そのボックス構造は船舶用鋼板と鋼鉄製の梁で構成されている。

 そこを切断すれば、分離できる。と書かれていた。

 手順は


1.梁以外の鋼板部分を切断すること。溶断でかまわない。切断箇所は指定してある。巻末参照のこと。

2.梁は指定された箇所を切断すること。溶断でかまわない。指定部分は巻末参照のこと。

3.梁の切断困難な場所は指定された場所に、隙間がある。そこに六番を挿入し、同時に爆破する。遠隔爆破用の雷管とケーブル・発破装置は指定された倉庫にある。指定部分は巻末参照のこと。


 以上で分離できるはずであるが、分離できない場合は現場の努力に期待する。


「こんなこともあろうかと」を思わず床にたたきつけたのは悪くないと思う。



 美雪が重傷者移送のために近づく。接舷は乾舷が違いすぎるので出来無い。短艇で少しずつ運ぶ。待つ間に三名が黄泉に旅立った。


 一六:五〇

 

 火災が鎮火した。周囲の熱がすごく人間が活動できる温度になるまで放水を続けるという。


 一八:〇〇


 切断作業は順調に進んでいた。懸念はガスが最後まで持つかだが、榊整備班長によると余裕で持つと言うことだ。


「柴、テメエこっち来い」

「なんすか、おやっさん」

「どこまで切れた。切る順番間違えてないだろうな」

「やだな、おやっさん。切る順番は梁や船体に書いてありますよ」

「それでも間違えるのが人間だ。いいからテメエはみんなに言い聞かせてこい」

「わっかりやした」


 浸水量が減ってきているとの報告が来た。排水量が上回るのは難しいとの報告も。艦首部の破孔を塞ぎに行きたいのだが、浸水が酷く近づけない。


 一九:〇〇


 切断作業は順調だが、そろそろ日が暮れる。夜間、照明をつけて作業するか手元だけ明るくするかで意見が分かれる。

 艦長判断で照明を明るくつけさせる。双龍ここに在りを見せてやる。

 そばに武蔵がついている。あいつは射撃管制電探を積んでいて夜間でも対空射撃が出来る。現にB-17を夜間二機撃墜している。練度が不安だが頼もしい。


 二〇:〇〇

 

 日没時間が過ぎ辺りは暗い。

 現場に行くと、榊整備班長からお願いされた。


「艦長、まかしとけなどと言って申し訳ないが、奴らの疲労が酷い。休憩させてほしい」

「休憩してないのか?」

「奴ら、目をぎらつかせていやがる。今はいいが、じきに気力・体力とも尽きる。艦長から言ってもらいたい。俺が言っても、少し休憩しただけですぐ作業に戻る」

「そうか。それはいかんな。事故を起こして分離不能になるのもまずい。艦長命令で休憩をとらせる」


 榊整備班長が頭を下げた。


 艦長命令で休憩を取らせた後は、二時間交代で作業に当たるとさせた。これ以上は睡眠をとらないと事故の原因になる。


 二二:〇〇


 応急長から、「浸水量と排水量の釣り合いがとれました」と報告がある。ねぎらった後、強制的に休憩を取らせる。


 二四:〇〇


 航海長と砲術長から「休憩してください」と懇願される。考えた後、〇四:〇〇に起こすよう言って艦長室へ。


 6月7日 〇四:一〇


 従兵に〇四:〇〇の十分前に起こされ、淹れたてのコーヒーをもらう。旨い。

 艦橋に顔を出すと砲術長が当直をしていた。航海長は下に降りたという。休憩を問うと、艦長と同じです。夜明け頃敵襲が無いとは言えませので、〇八:〇〇まで艦橋にいます。と言う。


 任せたといい、分離作業を見に行く。


 榊整備班長がいた。寝たかと問うと、六時間無理矢理眠らされました。年には勝てませんな。と笑う。


 〇七:一五


 電探より接近する敵機を捉えたと報告。直ちに艦橋に上がる。


「砲術、どうか」

「電探では小数機の編隊が複数こちらに向かってきているとのことです」

「本艦は動けん。護衛がどれだけやってくれるか。もうかなり切断が進んでいる。高角砲の衝撃も与えたくない。砲術、済まんが本艦の迎撃は機銃だけで頼む」

「了解しました。高角砲は使わない。機銃だけで迎撃します」

「まかせた」

「電探、本艦までの到達時間は?」

「あと三十分前後とみます」

「分かった」


 もう少し寝かせてやりたいが、敵機ではしょうが無い。


「総員起こし。戦闘配置」


 敵機は、六機程度の編隊が七つだった。これしか出せないのか、先鋒なのかは分からない。

 

 三航戦の戦闘機隊が迎撃にいく。昨日は三航戦にも被害があったという。頭が下がる。


 二航戦が敵空母に向けて攻撃隊を発艦させたという報告がある。分離が出来ていれば、二十機程度は出せたのだが仕方が無い。戦場で、「たら・れば」は厳禁だ。


 武蔵が撃ち始めた。直衛の秋月をはじめとした艦も撃ち始める。

 敵は戦闘機隊と対空砲火により二十機近くを撃墜されたようだ。ろくに突っ込んでこずに投弾して逃げていく。

 本艦の機銃の出番は無かった。

 武蔵が大和と合流すべく変針していく。艦隊戦をやるそうだ。敵と会合できると良いが。


 〇八:〇〇


 少し遅いが朝飯が出る。戦闘配食だった。

 分離作業だが、船体鋼板の切断は終わり、今は梁の切断だという。


 〇八:三〇


 榊整備班長が六番を設置する許可を取りに来た。許可した。

 信管を扱うな。砲術からの手伝いを出させようかと言うと、砲弾の信管とは違うのでどうでしょうね。と言われた。言われればその通りだった。整備班に任せる。くれぐれも暴発させないようにと念を押す。

 一つのボックスに十六発設置する。事故だけは起こさないでくれ。


 〇九:〇〇


 直衛艦に余剰人員の収容を依頼する。飛行科は全員移乗だ。火龍側の人員はすべて移乗させる。雷龍からも必要人員以外は移乗させる。直衛艦は人であふれている。


 一〇:〇〇


 火龍の機関の火を落とすよう命じる。これ以降排水ポンプは動かない。分離に失敗すれば海底だ。

 火龍の機関員も移乗させる。


 一一:三〇


 六番設置終わりという報告。

 雷管とケーブル・発破装置の接続も完璧だという。ただ、発破装置を見たら蹴飛ばしたくなった。艦長は見ない方がいいかもしれん。などと言われる。そう言われれば見たくなるのが人情。


「なんだこれは」

 こめかみのあたりがピクピクする。

「そうだろ。だから見ない方が良いって言ったんです」



 発破装置には妙に丸っこいドクロマークが描かれていた。


 

 発破は榊整備班長に任せた。最後まで任せるのが筋だろう。あの顔を見たせいもあるが。


 分離に成功した後、火龍の艦尾で雷龍が蹴られる不安があり、一一:四十五になったら前進最微速を出すよう命じる。航海長には、取り舵をとるよう命じた。


 一一:五十


 全員雷龍側に避難していることを確認後、発破をした。六番と言っても百二十八発の同時点火だ。すさまじい轟音と衝撃が伝わる。


 爆炎が収まった後、防空指揮所から顔を出して見ると成功したようだ。火龍が徐々に艦首を下に沈んでいく。雷龍の浮力があったので浸水が止まっていたのだろう。ゴギゴギゴンゴン聞こえる。残ったところが引きちぎれていくのだろう。最後に火龍が嫌がっているようだ。


 

 雷龍のトリムが戻る。急ぎ離れないと水中爆発などされたらこちらも被害甚大だ。



「機関、前進強速、急げ」

「前進強速、急げ、ヨーソロ」

「舵戻せ」

「もどーせー」


「艦長だ、分離は成功した。外に出て良いぞ」


 見れば火龍が艦尾を上にスクリューをきらめかせ徐々に沈んでいく。

 思わず敬礼をした。

 見回せば、皆敬礼をしていた。



「右舷バラスト注水」

「右舷バラスト注水」

「注水止め」

「注水止め」

「今は」

「0.5度です」

「左舷バラスト10トン排水」

「左舷バラスト10トン排水」

「0.3度」

「左舷バラスト10トン排水」

「左舷バラスト10トン排水」

「0.1、ほぼ水平です」

「両舷バラスト20トン排水」

「両舷バラスト20トン排水」

「トリム替わりません。前後トリムもよし。発艦可能です」


 雷龍は双龍の片割れである火龍と別れを告げた。その名残である、接合後の残骸。馬鹿にならない重量だった。バラストタンクへの注水で艦のバランスをとるのに大変だった。


 あの後、榊整備班長は疲労のためか寝込んでしまった。今は柴中尉が後藤隊長に従って整備隊をまとめ上げている。


 今、艦は直衛隊に守られて補給部隊へと合流を急いでいた。

 戦況は我が方に有利だった。

 敵新型空母は取り逃がしたものの、飛行甲板に損傷を与え発艦不能にしたという。

 敵は速力の出ない損傷艦を切り捨てて逃走を図った。結局追いつけなかったという。

 今は、ミッドウェー島守備隊に対して降伏勧告を出しているそうだ。

 ミッドウェーの航空機は朝の空襲が最後だったようだ。

  

 ミッドウェー島守備隊は降伏した。

 味方は逃げた。目の前には戦艦五隻、うち二隻は世界最大の戦艦だ。抗戦意思もくじけようというものだ。

 


ミッドウェー攻略戦というか、ミッドウェー要塞破壊作戦は成功します。

後二話で本編は終わります。


その後、双龍の世界を思い出したように不定期で上げようと思います。

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