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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
46/62

ミッドウェー西航空戦  雷龍復活 さらば双龍

さてどうするのでしょうね。

まあおわかりかとは思います。

 前進最微速という人が歩く程度の速度で前進を始めた。もちろん隔壁の悲鳴を聞きながらだ。

 これは、もう少しいけるな気がする。

 応急長も同じ考えのようだ。

 榊整備班長からは、搭載機の海上投棄は順調という返答。海上投棄が終わり次第再び停止だな。

 

 艦橋に戻り、艦長室にいると言って艦橋を去る。

 艦長室には鍵がかかった機密文書入れがある。鍵を開ける。


 なんだこのふざけた題名は。


 「こんなこともあろうかと」


 ご丁寧に三巻まである。

 この文書と言うよりは冊子だな。奴ら大真面目で渡してきた。絶対目を通してください。役に立ちます。


 雷龍艦長から双龍艦長に横滑りしたわけだが、艦の大きさや乗組員の数から言えば、大佐クラスがやるはずの艦長。

 後で海軍省にいる同期にそれとなく聞いたところ、皆敬遠したとか。

 雷龍艦長なら扱いに慣れているだろうから、そのままでいいんじゃないか?

 かくして中佐の俺がこの大艦の艦長に収まっているわけだ。

 その原因を作った奴らが渡してきたこの冊子。

 双龍艦長着任(肩書きが変わっただけだがな)おめでとうございます。などと言って渡された。

 その後機会を見ては軽く目を通してきたが、奴らの頭の中はどうなっているのだろう。

 

 その二巻を手に取り開く。

 

 片側が大破状態となったときの対処方法。まさしく今だ。

1.日本近海の場合    なんとしても持ち帰ってください。再起はできます。

2.マリアナ周辺の場合  お近くの島に乗り上げてください。後で回収します。

 ふざけたことを真面目に書いてある。

3.敵地周辺の場合    片側を分離します。

 分離とか。どうするんだ。そこまでは目を通してはいない。


 冊子の案内に従ってページをめくる。

 何だと、奴らこんな場合も想定していただと。


 どのみち火災の鎮火と浸水を止めないと始まらん。


「艦長、艦橋です」

「艦長だ」

「第二次攻撃隊が帰ってきました」

「ん、ああ、収容先か。本艦は傾斜があり無理だから、二航戦か三航戦に収容を頼んでくれ」

「了解しました」


 艦橋に行くと、主計長が被害集計をまとめたようだ。

「艦長、大凡の被害集計ができました」

「報告を」

「は、まず被害はすべて火龍側に発生しました。雷龍側の被害はありません。速力は前進微速が限界。応急長は隔壁強度が持ちそうにないと言うことです。浸水量は増えています。海水流入量は徐々に減りつつありますが、浸水を止めるのは難しいとのことです。次いで、格納庫ですが、あと一時間程度で鎮火の見込み。人が入ることができるようになるには二時間から三時間を見てほしいそうです」

「鎮火できそうなのか。三時間というのは熱か?」

「鎮火した後も引き続き海水をかけ、温度を下げるそうです」

「分かった理解した。続きを頼む」

「機関ですが、火龍側機関室で缶室を一つ、浸水が抑えきれなくなり閉鎖しました。ボイラーの温度は十分に下げてあり、爆発の心配はないそうです」

「それは最初に雷撃された場所だな」

「はい、当初は十分排水可能な浸水量で浸水箇所の補修も可能だったそうですが、二発目三発目があり、一気に浸水量が増えてしまったようです。注排水ポンプは他の缶で十分まかなえると言うことです」

「注排水ポンプが動けば良い」

「その注排水ポンプですが、火龍側三基はすべて排水にまわしてあります。消火用には、雷龍側の注排水ポンプを使用しています。消化関連ですが、火龍側の泡消火液があと三十分ほどでなくなりそうという報告がありました」

「待て、泡消火液だな。雷龍側から移送はできないのか」

「配管が無いそうです」

「無理なのか。消化責任者に泡消火液は使用を中止するように誰か行ってくれ」

「私が行きます」航海長が行った。まあ現状暇そうだしな。


「艦長、一機艦司令からです」

「替わろう」

「双龍艦長です」

「艦長か。現状はどうか」

「左舷に魚雷三本、爆弾四発被弾。復旧中です」

「分かった。艦の保全を優先せよ。艦隊は明日早朝までこの海域にとどまる。それまでに復旧することを祈る」

「明日早朝までに復旧してご覧に入れます」

「努力してくれ。必要な物が有ったら相談に乗ろう。本当に復旧できるのか」


「大丈夫です。半分でもやれます」


「半分か。何か秘策でもありそうだな。幸運を祈る」

「ありがとうございます」


 秘策か。確かに秘策だろうな。なにしろ、「こんなこともあろうかと」だ。


  ゴギ バーン ゴーン ギギギギギ


 なんだ?、どうした?


「艦長、あれを。真ん中に亀裂が」

「艦長、応急長からです。「いきなり傾斜した。現状を教えてほしい」です」

「「「「「艦長」」」」」

「うろたえるな。それでも海軍軍人か。落ち着け」

「「「「「失礼しました」」」」」


「応急長を出せ」

「応急長です」

「艦長だ、現状少しまずい。艦中央部に亀裂が入った。恐らく、火龍側の浸水量が増えて火龍側が重くなったためだと思う。対応策を練る。司令部公室に来てくれ」

「了解です。少し時間かかりますが司令部公室へ向かいます」

「頼む」


 榊整備班長がやってきた。投棄が終わったのだろう。疲れ切った顔をしている。

 この人普通ならもうとっくに退職している年だが、そのことを聞くと「最新の機械をいじれるんだ。おもしれえじゃねえか」と言って不敵な薄ら笑いを浮かべる。

 整備機関関係に人脈が広く、偉いさんも逆らえないらしい。本人は至って真面目なのだが、機械いじりについてだけは絶対に譲れないらしい。

 なぜ班長なのかと聞くと、「隊長はいいんだ。横空から来た、後藤隊長がいるだろ。面倒な書類仕事は任せている」そう言えば、目立たないが整備隊長は確かにいたな。二つ名があって「昼行灯」だっけな。昔はカミソリ後藤とか言われたらしいが、何を間違えたか、昼行灯か。


「艦長、手をつけることのできる機体はすべて投棄しました」

「ご苦労」

「機関室、艦長だ。停止してくれ。あと、機関長は雷龍の司令部公室に」

「機関室、了解」

「榊整備班長」

「は」

「ご苦労だが、後藤隊長を連れて雷龍の司令部公室まで来てくれ。あんたもだ。いいな」

「俺もですかい」

「そうだ、頼んだぞ。絶対、面白いからな」


 榊の黒縁眼鏡が光った気がした。気のせいか。


 火龍側の手空き要員を重量軽減の意味で雷龍側に移動させる。

 各科の長を雷龍の司令部公室の集合させるよう伝令を出す。

 

「皆忙しいところ集まってもらったのは、情報を共有するためだ。各課の長が現状を認識していれば、不測の事態になっても慌てないで済むと思う」

「艦長。よろしいでしょうか」

「応急長。最初に聞きたかった。頼む」

「は、本日三本の魚雷と四発の爆弾の被害がありました。爆弾による火災は鎮火の見込みが着いています。魚雷の被害ですが、缶室一基運転中止のうえ、缶室閉鎖です。また前部に二本近い位置に喰らいました。付近の防水区画や防水隔壁はかなり破られていて、現状、浸水量は減りつつありますが、今だ排水量を上回っている状態です。現在、鋭意、浸水区画の排水に取り組んでいます」

「機関長頼む」

「機関は缶室が一つ閉鎖されたほかは異常有りません。先ほどの命令で、人員をかなり雷龍側に送りました」

「ご苦労」

「主計長どうか」

「軍医によりますと、負傷者のうち本艦で措置できない重傷者が十五名いて、至急病院船への搬送が必要となっています。他の負傷者もできる限り病院船に送りたいそうです」

「負傷者か、移送手段は戦隊司令部と協議する。至急手配しよう」

「ありがとうございます」

「航海、戦隊司令部に負傷者移送に使える船を聞いて、手配してくれ。至急だ」

「了解です。失礼します」

「頼む。終わったら戻ってくるように」

「了解」

「砲術長」

「は、被害ですが、左舷前部高角砲、左舷前部高射装置、左舷二番機銃座、共に全損、操作要員は全滅と思われます。連絡も取れず近寄ろうにも格納庫の火災で近寄れません。恐らく生存者はいないものと」

「うむ、了解した」

「次いで、三番機銃座、四番機銃座、機銃用射撃指揮装置二基が魚雷の水柱による被害で使用不能になっています。こちらは負傷者はいますが戦死者はいません」

「砲術長、左舷一番機銃座はどうした」

「左舷一番機銃座は、全員無事です。現在連絡も取れており、士気旺盛です」

「そうかそれは良かった」

「ありがとうございます」

「では、航海が不在だが本艦を救うための手立てを考えよう」

「艦長。浸水を止めないと救うための手立てもないものと考えますが」

「それはもちろん」

「では」

「そう。手段はある。手段は」

「「「「おお!」」」」

「落ち着け、多少非常識だと思うが、この船自体非常識だしな、問題ないだろう」

「その非常識な手段とは、聞かせてもらえますか」

「かまわない。よく聞け。本艦を分離する」

「「「「????」」」」

「おもしれえ、艦長最高です」

「榊整備班長は分かったようだな」

「分かりました。整備班員全員で取りかかります」

「まあ待て。内容が分からないだろ」

「そうでした」

「艦長、分離するとは?」

「まあ何だ、元の状態に戻ると言うことだ。火龍側は放棄。雷龍を生かす。このままでは火龍に引っ張り込まれかねん」

「確かにそうですが、まだ浸水を止める手立てはあり、努力しています」

「それは認めるが、ここがミッドウェー南西二百海里と言うことが問題だ。本土からは遠く、敵からは至近だ。次の攻撃があれば動けない本艦はいい的だ。」

「それで分離ですか。可能なのですか」

「可能らしい。この船を作った造船士官が手引き書を作っている」

「何ですか、そいつらは」

「まあそういう奴らだと思え」




サブタイトル詐欺もここまで来れば立派なもの。

分離するまでは行きませんでした。


次回予告


こんなこともあろうかと

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