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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
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ミッドウェー西航空戦 双龍の受難

逆襲に遭ったMI艦隊、結末やいかに。

 魚雷三本爆弾四発を喰らった双龍は、洋上に停止し排水作業と消火作業に全力を挙げた。

 本来二つの船だ。機関室も二つある。幸いなことに機関室に被害はなかった。 損傷のひどい(火龍側のみの被弾)火龍の注排水ポンプ三基はすべて排水にまわし、雷龍側の注排水ポンプを使って消火作業が行われる。

 さすがに加賀相当の注排水ポンプを三基備えただけのことはあり、消火ホースの水圧が落ちることなく海水がまかれていく。


 酷くやられた。双龍艦長は思う。

 出だしが悪かったな。

 B-17の空襲で唯一被弾し、カタパルトが一基使えなくなるという被害を受けた。こちらは灯火管制をして闇に潜んでいたのを、照明弾一発であぶり出し命中弾を与えていった。あいつらは手練れだった。

 その後空母三隻を中核とした敵機動部隊に対し大型正規空母六隻(実質七隻)の数の暴力で圧倒した。

 そして今だ。


 ミッドウェーへの第二次攻撃隊の発艦が済み、第一次攻撃隊を半ば収容したときに電探が敵編隊を探知した。

 六十海里という近さだった。5分間収容作業をし燃料のある機体は上空待機とされた。

 収容作業中止後艦隊の陣形の変更を行った。収容作業中に空襲が有った場合の対応策のうち一つに緊急陣形があり、その中の一つの陣形に変更された。


 前をいく大和と武蔵の間に殺し間を作り敵機を誘導殲滅するという作戦だが、そんなのに引っかかる敵がいたな。二〇機ほどが突っ込んできた。五機か六機はやったのだろう。結構機数が減っていた。

 そこを直衛艦の秋月・夏月・三日月・凉月の集中砲火でさらに減らす。実際には陣形の上で無理があり、射撃機会があったのは秋月と三日月だけだった。それでも二機はやった。

 その後、赤城と加賀、夏月と凉月の集中射を浴びさらに機数を減らした。後八機くらいか?

 本艦撃ち方始めを命令しようとしたところで、「左舷敵機来ます」


「撃ち方始め」

「機銃目標、急降下、高角砲目標、雷撃機」

 砲術が指示していく。それでいい。この艦には、新型の長射程・大威力の一式三十三ミリ機銃が搭載されているからな。


「目標、上空近づいてくる機体、いいか、前だぞ、機体を狙っても当たらん機体の前だ」

「射線上に味方がいないか、確認せよよ」

 陸軍さんも頑張っている。一式三十三ミリ機銃の単装型の試験だそうだが、海軍が弾倉の重量過多で採用を見送ったのに「人数をかけるから問題ない」と言って、強引にこの艦に据え付けさせてしまった。

 

 左舷だけではなく、右舷の高角砲や機銃も射界に入った機体に射撃を始めた。直衛の秋月・夏月も撃っている。左舷後方の長門も撃ちまくっている。


 雷撃機はどう躱す?艦爆では艦の行き足は止まらない。艦の行き足を止める雷撃機の方が優先だ。艦首方向なら面舵、艦尾方向なら取り舵だな。どちらに来る。六機までに機数を減らした敵機は、それでも本艦に向かってくる。いい度胸だ。相手にとって不足はない。

 

「敵雷撃機、新たな編隊近づく、四時の方向」

「敵急降下ちかづく、三時の方向」


 この艦は人気があるようだ。搭乗員連中が上から見れば異常に幅が広くて目立つと言っていたな。

前方斜め前から接近してくる雷撃機は、そのまま射点に着くようだ。艦首を正対させて面積を最小にする。


「面舵」

「おもかーじ」

 向きが変わりきる前に

「舵戻せ」

「もど-せー」

 操舵長は舵を戻すと共に当て舵で艦を直進にさせる。

 これで正対したが、何だと!

 敵が横滑りで機位を強引に変更している。まさか新型なのか?デバステーターはまっすぐ進むことしかしなかったぞ。まずい。

 敵機はさらに一機落とされた。だが、ひるまず向かってくる。左舷に回り込もうとしている。


「急降下、五時近い」

「面舵一杯」

「面舵いっぱーい」

「急げ」

「いそーげー」


 まずいな、囲まれた。どっちを向いても敵機がいる。そんなに人気があるのか。

あれをやるか。


「右舷機、前進原速。左舷機前進一杯」

「右舷機前進原速、左舷機前進一杯、ヨーソロー」

 チンチンチンとエンジンテレグラフの音が聞こえる。機関室は大変だろう。機関長の罵声が聞こえてきそうだ。これをやると後で必ず苦情を言われる。合計8本のスクリューを同調させるの大変なんです。


 艦は急速に向きを変える。頃合いか、

「右舷機前進一杯、舵面舵に戻せ」

「舵もどーせー、おーもかーじ」

「右舷機前進一杯、ヨーソロー」

 チンチンと聞こえる。あの音は何か戦場にあって落ち着く音だな。俺だけかもしれんが。


「直上、降爆きます」

「外れろ」

 誰かの声が聞こえる。そうだな、賛成だ。

「敵機、投弾」


 一発、二発、三発、外れていく。至近弾にもならない。四発目、至近弾。五発目、まずい、来る。

ドーンと言う爆音と衝撃が伝わる。


「左舷艦尾被弾、火龍側」

「雷撃機近い、投雷した」

「舵そのまま」

「かーじそのまーま」


 艦を飛び越えようとした敵機が墜落する。まずい。そこには落ちるな。

 グワシャーンというなんともいえない音と衝撃が伝わる。


「左舷前部高角砲に、敵機突入」

「左舷前部高角砲、火災発生」

「消火急げ」

「雷跡近い」


 非常識な急回頭に射点を外されたのだろう、五本のうち三本はかなり離れて外れていった。

残り二本か。


「左舷雷跡、当たります」


 ドーンと言う爆音と衝撃が伝わる。左舷中央にでかい水柱が上がった。

 もう一本は。


「雷跡、右舷通過」


 よし。


「左舷前方、雷撃機接近、機数五」

「五時上空、急降下近づく」


 舵はこのまま、速度もこのまま、変に舵を戻すと後で回頭が始まらんからな。

 いかん。左舷前部高角砲の火災煙と蒸気で雷撃機が見えない。


「雷撃機、投雷」

 

 艦首左舷機銃座から電話がきた。生きていたか。


「防空指揮所からでは雷跡も見えん。知らせろ」

「了解」

「雷跡どうか」

「三本艦首前方通過します。二本本艦に接近中」

「総員耐衝撃準備」

「当たります」


 ドーン少し間を置いて再びドーン

 激しい衝撃を受け艦の行き足が少し落ちる。


「敵機、直上」

「伏せー」


ドーン・ドーン・ドーン三発の激しい衝撃と轟音が艦を襲う。


「機関、速力落とせ、前進原速」

「前進原速、ヨーソロー」

「敵機はどうした」

「敵見えません」

「舵戻せ」

「かじもどーせー」

「電探、敵機はどうした」

「こちら電探、敵機は遠ざかっていきます。新たに近づく敵機は針路が外れています。本艦には近づかない見込み」

「よろしい、引き続き監視を怠らないように」

「了解」

「各部、被害状況を知らせ。戦闘艦橋にだぞ」

 

 ここから見ただけでも左舷格納庫の火災が酷い。

 防空指揮所を降り戦闘艦橋に入る。

 戦闘艦橋では主計長がすでに被害集計を始めていた。


「主計長、どうか」

「は、左舷艦尾への被弾です。左舷側後部格納庫火災発生、これは鎮火しました。被弾の影響か、後部エレベータが動きません。現在、火災は左舷中央エレベーターから左舷前部飛行甲板前端まで広がっており、左舷前部高角砲の火災はこの影響で人員が近づけません。格納庫の消火を優先しています。被雷か」

「少し待て、機関室、機関長」

「こちら機関長」

「機関はどうか」

「機関は両舷全力発揮可能です。左舷缶室に若干の浸水がありますが現状運転には影響有りません」

「上で火災が酷い、魚雷も三本受けた。両舷停止してくれ」

「両舷停止、ヨーソロ。艦長、浸水している缶室のボイラーを停止したいと思います。許可を」

「機関長に任せる」

「ありがとうございます」

「主計長、済まん。続けてくれ」

「被雷箇所は左舷中央部に一本、左舷前部に二本です。現在応急長が指揮を執り現状確認と排水作業を進めています」

「航海、左舷格納庫の様子を見てくる。ここを頼む」

「了解です」

 

 左舷格納庫に降りると意外に煙たくなかった。中央エレベーターを下げて排気孔代わりにしていた。よく動いたな。

 飛行長と整備班長が話し込んでいる。お仲間に加わるとするか。


「榊整備班長、近藤飛行長、様子はどうか」

「艦長。気がつきませんで失礼しました」

「いやいい。何を相談していた」

「機体なのですが、どの程度の機体まで投棄するかの相談です」


 見ると、応急要員たちが機体の間を縫うように動きずらそうに移動していた。うん、これは盲点だったな。艦橋にいてはわからないことだ。


「よし、艦長命令だ、全部投棄せよ」

「全部ですか」

「今は艦の保全を優先する。かまわないから捨ててしまえ」

「しかし、まだ使える機体も多数有ります」

「後部エレベーターが動けば、運び出して火龍側に移送するのだが、被弾の影響で動かんらしい。艦長命令だ。火龍側格納庫内の機体を投棄せよ」

「「了解しました」」


 次に会いたいのは応急長だが、どこだ?艦内放送で聞くか。


「応急長。艦長だ、概要が知りたい」

「艦長。応急長です。先に格納庫内の機体投棄の許可をお願いします」

「それだったら、先ほど整備班長と飛行長に指示を出した」

「ありがとうございます」

「で、艦底部の様子はどうだ」

「はかばかしくありません。最初に命中した奴は、防御区画で受け止めました。若干缶室に浸水がありますが、現状では排水能力が上回っており、浸水箇所の補修もやっています。缶室は問題ないと思われます」

「缶室だが、浸水区画のボイラーを止めると行っていたぞ」

「機関長ですか。それは助かります」

「問題は後の二本と言うことか」

「はい、二本の命中箇所が近く広範囲に防水隔壁が破られました。現在はこれ以上の浸水を防ぐのに精一杯です」

「前進させるとまずいか」

「まずいと思います。せいぜい微速なら隔壁が持つだろう程度です」

「艦長、榊整備班長。機体を投棄したらガソリンと思われる油膜が広がりました。引火するといけないので、船を出してください」

 応急長と見つめ合ってしまった。

「分かった。少し待て」

「応急長、どうだろう」

「引火の方がまずいですね、そろそろと動かして駄目なところで報告します」

「そうしてくれ」

「機関長、艦長だ。前進最微速、両舷だ」

「機関、了解。両舷前進最微速」



結末つきません。

今話は双龍だけでした。


次回予告


雷龍復活 さらば双龍よ

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