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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
41/62

ミッドウェー西航空戦 逆襲のミッドウェー

ミッドウェー島の反撃始まる

 6月5日 夕方 一機艦 旗艦 赤城


 敵機動部隊攻撃の大戦果に沸く艦内とは別に、考え込んでいる一団がいた。

 司令長官をはじめとする、一機艦首脳部だった。

 

「この損害報告は事実なのか」


「はい。それでもマーシャルの時よりはかなり少ないです」


「マーシャルは多かったのか」


「電探を使った長距離阻止迎撃は同じです。が、マーシャルの時は戦闘機の数が少なく、おまけに経験不足で容易に誘い出されて艦攻・艦爆を裸にしてしまい損害が拡大しました」


「経験不足はな。どちらも同じだろう。初めての空母機動部隊の戦いだ。あの時、お互いかなりのミスをしたと聞く。その戦訓で今回は損害を抑えることが出来た。そうだな」


「その通りです。今回は、此方の機数が圧倒していましたので、途中の迎撃による被害は大変少なくなっています」


「迎撃でどのくらいやられた?」


「戦闘機四機を含め、九機です」


「では残りの四十機は全て敵艦隊の攻撃中に失われたと」


「攻撃後、帰還がかなわなかった機体を含めてですが」


「更に帰還後、損傷がひどく修理不能とされた機体が三十七機か」(注)


「我が方が圧倒的に有利な状況で、三百六十機中八十六機が失われたと」


「そうです。搭乗員ですが、戦死または行方不明百二十四名。負傷二十七名、内負傷がひどく搭乗できない者八名」


「有利な状況でこれか。航空戦とはとんでもないな。三回もやれば全滅か」


「その代わり、攻撃力は絶大です。この戦果を艦隊戦で挙げることなど出来ないでしょう」


「なぜそんな被害が出たのか、詳しくは帰還してからの分析で行うとして、現状では被害を少なくするためにどうすれば良い」


 大和では会議が続いた。



 各空母の艦内は大変なことになっていた。全力出撃に近い機数が帰ってきたのだ。

 格納庫内を仕切る甲板士官は、どこにどうやって機体を納めるか、頭を抱えていた。それでも整備隊長と相談しながら、損傷の大きい物は奥へ、少し修理すれば出撃可能な機体はその前へ、無傷の機体はエレベーター周りへ、納めていく。

 未帰還機が有るが、絶対帰ってくると信じて場所を確保しておく。


 整備隊長はもっと困っていた。何しろ各機種がバラバラの場所に行ってしまった。帰還時間と格納庫の都合だが、勘弁して欲しかった。これから全機整備かと思うと目眩すら感じた。

 それでも金星六十四型以前のエンジンに比べれば、ずいぶん整備の手間は掛からないようになっている。

 金星の六十四になってからだ。点火装置周りが一新された。無接点型ディストリビューターや高性能プラグコード、新型点火プラグのおかげか実に手が掛からない。普段は指定された気筒の点火プラグの点検と点火タイミングの点検だけで良くなった。以前は気筒数×二個のプラグを全て外していた。ディストリビュータのコンタクト・ポイント点検等、気が狂いそうになりながら行ったものだ。格段に楽になった。

 その分機体設計に高度な技術が投入されるようになり、機体整備は格段に面倒になった。まだ機体整備の方が楽だから良いけどな。

 そう思いつつ、部下を指揮して確実に整備を進めていく。

 そう言えばエンジンオイルも最近のは良くなった。

 カストロ油は性能は良いのだが、長距離飛行から帰ってくるとドロドロ真っ黒になっている。温かい内に抜かないと粘度が高くなってしまい、なかなか抜けなかった。

 鉱物油は、粘度の変化もそうだが長距離飛行から帰ってくると、飛行時間にもよるが泡になっているものもあった。そうなると、エンジン内部を灯油で洗うか、新品のエンジンオイルに灯油を混ぜ少しの間アイドリングをして洗わなくてはならなくなってくる。軽油の方が良く汚れが落ちるのだが臭いので皆使いたがらなかった。

 専用の洗い油もあったが、洗い油のみで回すと油膜が切れることがあるせいか、オイル上がり、オイル下がりの原因になることもあった。灯油や軽油のように混ぜて使うのが一般的になり、流石に綺麗になった。ただ、洗い油がオイル循環系に残っていると油幕切れの原因になるため使用後のオイル抜きは面倒だった。

 最近のオイルは、泡にもなりにくいし粘度の変化も少ない。搭乗員からは、高空に行ってもオイルが固まりにくくなったと評判もいい。

 ペラも一頃はVDM電動恒速プロペラという、とても整備に手間の掛かるペラが付いたが最近また住友ハミルトンのペラになって整備が楽になった。

 エンジンの整備は本当に楽になった。

 この道二十年、海軍に奉職して二十二年。特務整備中尉は忙しい。



 赤城の搭乗員控え室では、


「俺一機もお目に掛かってないです」


「太田、それは無理というもんだ。あの機数でちょぼちょぼ襲ってくる敵機の相手をしたのだ。俺だって敵機を影しか見たことが無い」


「高田飛曹長、飛曹長でもでですか」


「なあ太田、敵機の方が護衛機よりも少なかったのだ。接敵出来なかった人間も多い」


「でもあそこの撃墜した人たちは」


「昼間でも星が見えるという変人坂井と、大体この方向に気配がするという人間離れした魔王西沢だろ」


「はい」


「無理だな。あと十年くらい修行すればなれる可能性は有るぞ。まあ頑張れ」


「はい。ありがとうございます」

 


 6月6日 夜明け前 一機艦 旗艦 赤城


 早朝、ミッドウェー島を爆撃すべく急いで準備が進められていた。

 ミッドウェー南西百五十海里にいる一機艦を出撃、進路を東に取りミッドウェーとの南に出たところで北に変針。一路ミッドウェーを目指す。


 気になるのは昨夜半、不審電波を二度受信したことだった。夕方見つかったのか、夜間聴音で見つかったのか定かでは無かった。


 敵機動部隊は壊滅した安心感が有り、敵はミッドウェー島だけだった。

 

 夜間再び不振電波が受信された。今度は長文だ。発信された方向へ駆逐艦が急行する。艦隊後方のごく近くらしい。


 電探が接近する敵機を探知したのは、不振電波受信から10分後だった。わずか四十海里の地点だった。相当な低空を飛んできたらしい。夜間低空侵攻できるのだ。手練れと言って間違いないだろう。単機では無く、編隊だった。


 各母艦上にはようやく戦闘機が列線に並び始めたところだった。まだ夜明けには遠く空は暗かった。

 戦闘機隊は発艦を望んだが、待てが掛かった。夜間戦闘の訓練もしていないのに、飛ぶのは無謀だった。貴重な熟練搭乗員を事故で失うわけにはいかなかった。


 各艦作業中止。爆弾を弾薬庫に戻せ。艦攻艦爆からは燃料を抜け。艦戦は発艦準備の出来た機体は、飛行甲板上で待機。後は格納庫に戻せ。 

 そんな命令が出るのは、仕方が無かった。

 後十海里というあたりでも、まだ各種作業は終了しなかった。

 

 電探によると敵機は高度を上げているという。確実に此方を認識していた。各空母は直衛艦を伴い散開していく。

 此方には夜間に航空機を迎撃できる船は、武蔵がいた。射撃管制電探を積んでいた。ただ、練度は低かった。竣工して二ヶ月。本来ならまだ錬成中の船だ。

 武蔵が撃ち始めた。

 夜明け前の闇に、突然光芒が奔った。武蔵が探照灯を照射したのだ。

 射撃管制電探のデータを元に照射をしているのだろうか。探照灯に照らし出されているのは、B-17だった。他の艦も探照灯を照射し始めた。

 十機ほどの編隊が、真っ直ぐ向かってきている。闇の中に浮かび上がったB-17に各艦から高角砲が撃ち上がる。一機に直撃したようで、爆散した。歓声は上がらない。まだ多数のB-17がいる。

 突然光芒の中から機影が消えた。敵機の進路変更に探照灯側が見失ったようだ。武蔵以外の高角砲は撃ち方を中止する。

 更に一機撃墜された。だがここまでだった。

 突然、照明弾だろう明るさが闇を追い払った。

 ようやく光芒が敵機を捉えた時には、投弾を開始していた。

 その下には、双龍がいた。



「面舵用意」

「面舵ヨーイ」

「面舵」

「オーモカージ」

「機関増速、第二戦速」

「増速第二戦速」

 エンジンテレグラフのチンチンと言う音が聞こえる。

 

 双龍の艦橋には、航海艦橋にある操舵室との伝声管があった。何回目かの改修の時、防空指揮所からも伝声管が延びた。

 今、艦長が防空指揮所で探照灯の光芒に照らし出される敵機を見つつ指揮を執っていた。


 電話で指示を出すよりも、こっちの方がいかにも艦を操っている感じがしていいもんだ。

 操舵手の復唱も気合いが入っている。舵を握っているのは操舵員長だろう。

 発砲炎で存在がばれるといけないので、双龍の対空砲火は沈黙していた。直衛艦にも撃つなと言ってある。

 他の空母も同じようだ。

 撃っているのは、戦艦と巡洋艦だけだろう。

 いくら大型機による夜間水平爆撃の命中率が悪いとしても、直線航行よりも円を描く方が当たらないはずだ。


 突然あたりが明るくなった。敵機が照明弾を投下した。しまった。目をやられた。直接見てしまった。しばらくは見えん。

 それでも、撃ち方はじめを指示する。

 防空指揮所にいた見張り員の中で見えるものに敵機の動きを聞く。


「敵編隊、本艦に向かう。三千」

「舵ちょい戻せ。機関増速、第三戦速」

「舵チョイモドーセ」

「増速第三戦速」


「敵変針、本艦に近づく」

 探照灯を照射された敵機が本艦に近付いてきた。まずいな、本艦が的か。一機撃墜されたがまだ多数の敵機が近付いてくる。

「舵そのまま」

「カージソーノマーマー」

 敵機の腹から黒い物がポロポロ落ちた。

 不味い。直撃コースか。

「対弾防御、衝撃注意」

「伏せー」


 艦進路前方に次々と着弾する。水柱が吹き上がる。頼む、当たるな。挟まれた。不味い。


 ドーン 衝撃と爆風が双龍を襲う。


 幸いなことに直撃弾は一発だった、二十五番相当と思われる爆弾一発の命中だった。

「応急長、被害確認」

「見張り、敵はどうか」

「敵機見えません」

「電探、敵情知らせ」

「只今の編隊は急激に遠ざかっています。新たな編隊を探知。距離六十海里」

「赤城から入電。各戦隊は元進路に復帰せよ。集合の必要を認めず」

「赤城からです。本艦戦闘機をもって迎撃を試みん」


 飛ばすのか。まだ天文薄明まで一時間ある。相当な手練れを飛ばすのだろう。


「艦長」

「応急長、被害はどうだ」

「直撃弾は一発。至近弾と思われる被害無し。直撃弾の被害は、命中箇所、火龍側左舷艦首。火災が起きましたが、現在鎮火しています。火龍左舷カタパルト使用不能。復旧も出来ません。周辺の構造材が曲がってしまっていて、本艦の装備では修復できません。左舷の錨鎖が吹き飛ばされました。錨鎖庫周辺がめちゃくちゃでまだ詳しい被害確定は出来ません。幸いなことに、人的被害はありませんでした」

「そうか。引き続き損害箇所の復旧を頼む」

「了解です」




毎回ひどいサブタイトル詐欺じゃないかと思います。

これだけ引っ張って、撃墜二機、被弾が爆弾一発。

次はもう少し派手になる予定です。

次回予告

続・逆襲のミッドウェー


18時に双龍の世界が一編、入ります。

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