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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
37/62

ミッドウェー西航空戦 偵察行

勇んで発艦したシャーこと西大尉は如何するのか。

付き合わされる、安室二飛曹はどうする。

 赤い彗星を操る、シャーこと西大尉はご機嫌だった。

 何しろこんな戦場での晴れ舞台だ。いくら今後彗星の生産がめどが立たないと言っても今は飛んでいる。

 ロールス・ロイス・マーリン改エンジンは快調だった。どんな敵機でも引き離せそうだった。


「大尉、変針まであと五分」


「了解、いい天気だな。安室」


「天気良すぎて、赤い機体が目立ちます」


「何を言っている、目立ってなんぼだろう」


「大尉、あなた戦場に何求めておいでですか」


「何って、私が目立って活躍することさ」


「目立っていいことあるんですか。皆迷彩で目立たなくしている中でこんなに目立って」


「妹がな、かわいいんだ」


「は?」


「私が何かにつけて活躍すると、お兄ちゃん、お兄ちゃん、と、とてもいい笑顔をしてくれる。その笑顔のためなら、どんなことでもできそうだ」


  (ダメだ、これは。とんでもない人とペアになってしまった。妹離れできないのか。早く配置換えで離れないと、俺の命が危ない)


「大尉、変針まであと一分」


「了解」


「ヨーイ、テッ」


「変針する」


「そろそろ敵の電探に掛かる頃だな」


「はい、ミッドウェー島まで百海里です」


「確認する。五十海里手前までは高度三千、ミッドウェー島上空で高度六千で航過、可能ならば複航でよかったな」


「はい、その通りです(なんか不安だな、この人何をやる気だ)」


「要するにだ、できる限りミッドウェー上空で頑張れと言うことでいいな?」


「は?」


「なんだ、写真を撮りまくれと言う事だろう。なら撮りまくってやるさ」


「それはそうですが。迎撃機や対空砲火がありますよ」


「躱してやるさ。当たらなければ如何という事は無い」


  (勘弁してくれ。命がいくつ必要なんだ)


「大尉、ミッドウェー島まであと六十海里(ん?)」


「如何した、安室君」


「何か変な気がします」


「虫の知らせか。そう言う感覚は大事だぞ。生き残るためには」


  (なにかまともなこと言ってる)


「大尉、八時上方敵機」

「了解、増速する」

「敵機二機近付いてきます」

「機種わかるか」

「まだ不明」

「少し早いが、増槽を落とす」

「敵機、液冷機機種は不明」

「アメリカで液冷ならカーチスだろう。違うか」

「そうですが、断定できません。新機種に注意するよう言われたじゃ無いですか」

「そうだな、こいつより速くないことを祈ろう」

「撃ってきました」

「まだ遠いだろう」

「でも撃ってきてます」

「全部後落しているじゃないか。ヘボだな」

「機種、おそらくカーチスP-40」

「なら大丈夫だ。振り切れる」

「でも降下増速しています。速い、近付きます」

「安室、舌かむなよ」

「え?」

「いくぞ、テッ」

  (ぐわ、なんだ、どういう機動をした) 

「喰らえい」

  (何?撃っている?)

「安室、無事か?」

「はい、怪我はありません。機体も被弾は無いようです」

「一機は喰らわせた。エルロンがバラバラだったな。低空に逃れたがもう戦闘力は無い。もう一機も低空に逃げた」

「では一機撃破ですか」

「そういうことだ」

「ミッドウェー島への侵入ですが、予定通りの侵入経路でいきますか」

「進路的に苦しいか?」

「おそらく大丈夫だと思います」

「ならいい。もう見つかっている。高度を六千まで上げるぞ。酸素は節約したい。ミッドウェー島近くまでは使いたくない」

「頭ボケますよ」

「そうだな、交代で時間を決めて使おう」

「了解」


「大尉、二時に二機、敵機接近します。同高度」

「大丈夫だ。見えている。酸素節約はやめだ。これ以上は危ない」

「了解。酸素残量二十分です」

「それだけ有れば十分だ」

「回避する。少し速度を落として、わざと敵にケツに付かせる」

「危ないですね」

「この機体の性能で無ければやらんよ」

「撮影準備します」

「頼む」

「撮影準備できました。いつでもいけます」

「よし、安室、今三百ノットだが敵機は如何している」

「敵機、近付きません」

「同じくらいか。ではあいつらは気にしなくしていい」

「了解、でも電探誘導してきますよ」

「これからミッドウェー上空だ。対空砲火が来るだろう。そこに誘導するかな」

「普通ならしません」

「奴らが普通であることに期待する」

「そうですね」

「西側から侵入、その後北東から侵入、最後に南から侵入し環礁の中を撮影する」

「大尉、一航過ではないのですか」

「このくらいやらないと、赤く塗った甲斐が無い」

「敵に目の敵にされますね」

「目立っていいだろ、行くぞ」

「カメラを覗いてますので、周辺警戒できません。頼みます」

「おう、任せろ」

  (大尉、どういう回避してるんですか。下を向いているので気持ち悪くなりそうです。うお!また揺れた。高角砲か)


 ミッドウェー島では偵察機と見られる機体が戦闘機四機を躱し、そのうちの一機を撃破したので騒ぎになっていた。

 しかもその機体は何を考えたのか、赤いと言う。


「レッドバロン気取りか、この野郎。落とせ、高射砲で落とせ」


 だが、微妙に進路を変え射点をずらしてくる。有効打は生まれなかった。

 

「おい、上にいる奴にもっと高度を上げろと言え。いくら速くても上から動力降下する方が速いはずだ」


 二機の迎撃機は六千メートルから高度を上げ始めた。だがこの基地に排気タービン付きの戦闘機は無く、彗星が北へ抜ける進路を取ったときようやく五百メートル上がったところだった。

 

 {ん?あの二機高度を上げ始めたか。降下で速度を上げてくるつもりか}

「安室、撮影はあとどのくらいだ」

「いま環礁を北へ抜ける途中の船舶を撮影中。あと十枚くらいです」

「もういい。撮影を中止しろ。少しやばい」

「了解。中止します」

「安室、機銃の用意だ」

「へ?」

「機銃だ。何を呆けている」

「了解です。酸素残量十分です」

「わかった」


  {敵が降下してくる。動力降下でかなり速度が出ている。追いつかれるな。それなら}

「安室、敵を躱したら、おそらく再上昇して攻撃してくるだろう。その時射点に付けてやるから落とせよ」

「はっ、了解」

  (いやいや、何言ってるのこの人。射点に付けてやる?落とせ?皆後席の機銃は当たれば良いな位なんですが)

「先程は大尉が撃退しましたが、今度はしないのですか」

「今度の奴はさっきの奴よりも手練れだ。それにこいつは戦闘機じゃ無い」

  (何言ってるんですか。躱したらさっきみたいにオーバーシュートさせて後から打ちまくればいいじゃ無いですか)

「きたぞ」

  (敵の13ミリの火箭がすぐそばを通り過ぎる。恐ろしい。どうやったら躱せるのこの人)

「二機が巧みに連携している、さっきみたいには出来ない。安室、やれ」

「やってみます」


 敵は、こちらが躱したあと速度を落とさずに再上昇して行く。さすがに水平飛行の彗星では追いつけない。

   (こちらも高度を上げている?高度差を稼がせない気か)

 敵は高空性能が良くないようだ。上がりが悪い。こちらも七千を超えればアップアップなのだが。

「安室、酸素残量が少ない。もうこの高度にはいれん。幸い同高度だ。敵を引きつけて緩降下で逃げる。その際、敵にケツを見せることになる。うまくやれ」

「わかりました」

 

 敵が攻撃姿勢に入ったところで、緩降下で逃げに入った。敵は追ってきた。速度差はわずかだ。また撃ってきた。手練れというのは、本当のようだ。射弾が正確だ。大尉は、正確と言うことは読めると言うことだ。と言う。いえ、そんな人いません。あ、ここにいたか。


「安室、やるぞ」

「はい」

  (何やるんですか、怖いな)

 一瞬の隙を突き、速度をわずかに落とし降下角を深くする。敵はこの機動についてこれず体勢を崩した。

  (見えた。ここか)

 引き金を握る。三〇三ブリティッシュの細い火箭がほとばしる。狙いは操縦席だが、敵が体勢を崩したせいで機体前面のラジエター部分に命中する。機首から白い蒸気を噴き出し速度を落としていった。

 あと一機はそれを見て少し離れた。

 大尉は一気に加速する。高度を下げないと酸素が切れる。

 残った敵機は追いかけてきたが、お互い緩降下で動力降下中。速度差はあまりないようだった。

 高度三千を切ったあたりで水平飛行に入る。速度は四百ノットを超えている。敵機との距離は変わっていなかった。考えてみるとおかしい。この機体なら緩降下中に引き離せたはずだ。

 速度が落ちで行く。三百ノットまで落ちた。敵機も同じように速度が落ちている。水平全速はこのくらいのようだ。

「安室、敵機はどうだ」

「距離変わりません」

「三千でこの速度か。結構速いな。高空ではしょぼいが、低空での性能は良いのかも知れない」

「どうしますか」

「振り切る。この機体はカタログでは、二千五百から六千五百まで三百三十ノット出ると言うことになっている」

「カタログですよ」

「この機体というか、最近の機体は信じていい」

 大尉は機体を加速させる。三百三十ノット出るじゃないか。敵機は見る間に小さくなっていく。

「どうだ」

「敵機見えません」

「もう少しこの速度で飛んでから帰投する」

「了解です」


 艦隊はいた。事前の取り決め通りの位置だ。少し航法がずれたが、視認できる範囲に見つけた。

 瑞鶴に着艦する。安全にと言うことなのだろう。フィルムは格納庫内で取り出すようだ。

 整備員に飛行中手を付けなかった、航空糧食、航空熱量を渡す。サイダーしか手を付けなかった。見れば西大尉も渡していた。お互い緊張していたようだ。


「西大尉および安室二飛曹、帰還しました」


「ご苦労。無事撮影できたようだな。何よりだ」


「ありがとうございます」


「迎撃されたのか」


「はい。相当遠くから迎撃されました。電探状況下では、よほどの性能が無いと偵察は難しいものと愚考します」


「わかった。そのことはあとで報告書にするように」


「了解です」


「よし、疲れたろう。解散してよし。食堂でなにか貰ってこい」


「ありがとうございます」


6月5日午後一時半


 瑞鶴の二航戦司令部では、ミッドウェー島偵察の結果を受けて驚きの声が上がった。



偵察行だけで終わってしまいました。

やはり、西と安室の組み合わせは鉄板か?

マーリン積んだ彗星は三百三十ノット以上出ます。高度五千八百くらいで。

どんな偵察結果やら。


18時に双龍の世界が一編いれてあります。

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