双龍の世界 アメリカ 南北戦争後 2 大照 まで
前回の後編
個人的には4000文字前後で1話を目指しています。
差別用語が出てきます。ご注意ください。
アメリカは、南北戦争後まず国内立て直しに苦労していたので国外に向ける力は少なかった。
日本に対しては、前話の通りであり自国有利とは行かなかった。
イギリスに対しては、表向きにはなっていないが南部に工作があったことはわかっているので北部主体のアメリカ政府としては恨みがある。外交は低調だった。
フランスやそのほかの国々は、南部憲章追加部分を褒めそやしたのでこれも恨みはある。
味方はいなかった。
メキシコが南部に押し寄せることを警戒していたが、奴らイギリスと南部の奴にしっかりと鼻薬を嗅がされていた。どんな密約があったやら。信用出来んなあの国は。
サンフランシスコでは
ハワイは、手出しすることが南北戦争中は少なくなっていたせいか以前よりもやりにくい。
だいたい日本人の奴らがどうしてあんなにいるんだ。え?病院とか学校を造っているだと。何でそんなことをするんだ。
はい、外交の一環だそうです。
あんな未開の奴らにか。
そうです。何で我が国はそうしなかったのでしょう。そうすれば今頃は。
言うな、我が国はな
まず宣教師を入れる。
布教をする。
土地を寄進させる。
寄進させた土地に移民を入れる。
移民と奴らを衝突させる。
奴らを制圧するか、圧倒的な軍事力を見せつけて屈服させる。
後に準州にしてから正式に州に昇格。
正式にアメリカ合衆国の領土。
と言う手順で行くはずだったんだよ。
古いやり方ですね。あそこは昔のアジアでもアフリカでも無いんですよ。
古い言うな。俺が決めたんじゃ無い。もう決まっていたんだ。
なぜ出来なかったんですか。
最初に接触した時、高圧すぎたらしい。その時の王様がそれが気に入らなくで布教をさせてくれなかった。
でもその頃は統一されていませんでしたから、他を当たれば。
統一されていないなんてわからなかったんだと。言葉も通じないし習慣も違う。まあそこまで見抜けというのもな。こんなこと言ってる時点で失敗の原因を探るようなもんだ。
まあ、後知恵では何とでも言えますから。
その通りだ。それで、今後どうするかその知恵を貸せ。
無理です。もう相手はこちらの狙いがわかっているでしょう。なら後は誠実に交渉をするしかありませんね。
お前、東海岸の奴らが誠実という言葉を知っていると思うのか。
最近のアフリカ系アメリカ人やネイティブ・アメリカンへの対応を見ると覚えたんじゃ無いですか。
それに我々もワシントンから来ていますが。
うるさいね、そんなこと言われんでも。俺が言うのは東部エスタブリッシュメントとか呼ばれている奴らだ。
南部ではうまくいった所もあるようですよ。それを知れば彼らもやり方を変えるかも知れません。
どうだかな。まあとりあえず置いとこう。話題を変えるが。
お前、ここに来て居心地いいか?俺はあまり良くない。他の政府の役人連中も同じような感じらしい。どうだ?
言いにくいんですけど、知っています。原因も。
何、知っているだと。言って見ろ。
南北戦争です。あの時長引いた戦争で物資が西海岸へ届きにくくなったそうです。特に食料・医薬品が問題になりました。
食料は元々不足していました。医薬品に至っては作っていません。
何度ワシントンへ陳情しても解決しないどころか時間がたつにつれて悪くなっていたようです。
戦争が5年過ぎてからか。お互い大量の軍隊を貼り付けていたからな。それの補給を優先したか。
それもありますが、戦争で男手が取られて食料生産がかなり落ち込んだようです。
そんな状態で軍の補給を優先すれば、西部に渡る分は減ります。
飢えるかも知れないのですから恨まれますよね。
医薬品も貴重なものは在庫が無くて大変だったようです。
ですから、東海岸の連中は言うだけで何もしない。信用ならない。と言う見方が多いようです。
それどうしたんだ。
言いにくいですけど、南部と共にメキシコから輸入したそうです。食料はメキシコは余裕があるそうです。医薬品はメキシコで作っていない奴はヨーロッパから入れたそうです。
メキシコは儲けたんだな。それが戦争に介入しなかった原因か。
さて、ハワイにちょっかいを出してきた日本だが、ワシントンからは「もう条約も締結されたし強硬な事も出来ん。だけど、何とかしろ」と、ひどいことを言ってきた。何か手はありそうか。
ハワイを中継地点に出来ないんですよ。軍事的には無理ですし、奴らの弱点もヨーロッパ各国から入手するしかありませんが、どこまで信じていいか。
鯨取りが補給に寄るそうですし細々と貿易をやっている連中がいますから、彼らに聞いてみましょう。でも我々には足も無いですし出来ることはありませんよ。
そうだな。後はワシントンの連中の仕事だ。
ワシントンでは
ハワイに入っている日本人をなんとかできんのか。
現状では難しいかと。日本人だけでは無くヨーロッパの連中も入っているそうです。日本人は外交官が混ざっていますし、ヨーロッパ各国の連中は皆外交官だそうです。軍を使うことは出来ません。
当たり前だ。そんな事したらヨーロッパともめる。畜生め、どのバカだ最初に接触した奴は。日本の時もそうだ。何で最初くらい穏やかと言うか友好的に接触できん。
まあ無理でしょう。神に祝福されし土地とか言って移民して、先住民族を虐殺し、他国と戦争をして広くなってきた国です。よほど冷静で頭の回る人間で無い限り、初めて会う白人で無い異民族相手に友好的にと言っても無理でしょう。全部教会が悪いのですよ。
お前、教会に恨みでも有るのか。
有りますよ。前の仕事ではほんとに苦労しました。教会は敵と言っても過言ではありません。
前の仕事とは?
アフリカ系アメリカ人の教育担当です。ほんとに苦労しました。全部教会が悪い。
外では言うなよ。この建物の近くに聖書に宣誓した人がいるからな。
アレはこの国が教会に支配されていると言っているようなものですよ。なんとかならんのですかね。
お前ほんとに教会が嫌いだな。
大嫌いです。
1893年 ワシントン
国民の不満が高まっているだと。
はい、白人ですけどね。他の連中はおとなしいもんです。
やっぱ権利を取り上げたり、いままで奴隷だった連中が同じ場所・立ち位置にいるのは不満か。
そうですね。それが大きい理由です。他には、西部の連中が東は嫌いだと言っています。南部の馬鹿野郎という連中もいます。過去に奴隷を買い出した奴と奴隷を連れてきた奴らを殴りつけてやりたいです。
国民の目をなんとかそらさねばいけないか。何か種はありそうか。
スペインがカリブ海周辺の植民地でずいぶんひどいことをやっているという情報があります。独立運動も盛んだと言う情報もあります。それを使えば。
スペインを使うのか。
使います、他に国外で近場で種にで出来そうなものがありません。
誰を使うんだ。政府関係者は使えないし、破落戸を使うのはばれた時にまずいぞ。
新聞記者を使います。奴らいつも特ダネを求めていますし、新聞社はセンセーショナルな記事で部数を伸ばそうとしています。情報が政府周辺から出たとわからないように遠回りに手を回します。
そうか、それなら良いがくれぐれもばれるなよ。俺は上司に許可をもらってくる。
カリブ海周辺や中南米で貿易をしている関係者から、新聞記者達にスペインが植民地でひどいことをしているという情報をもたらしたのはしばらくしてからだった。
新聞記者やフリーの記者がアメリカ政府に質問しても、そう言う情報は聞いているが事実は確認していないという答えが返ってきた。
新聞記者達はこれは特ダネかも知れないと思う人間と、何かうさんくさいと思う人間に分かれた。半分くらいの新聞社の上層部はうさんくさいと思い手を出すのを控えた。
残りの新聞社の中にもうさんくさいから手出しはやめようという新聞社もあったが、オーナーに特ダネを探してこいと命令され仕方が無く記者を派遣した。うさんくさいから危険には近づくなと言って。
残りのイケイケの新聞社とあまり深く考えない新聞社は多数の記者を派遣した。ただ記者の中でも優秀な者は失った時の損失が大きいので、こいつなら別に失ってもいいなという記者を派遣した。
そのイケイケ新聞社から突然「アメリカ人貿易商の妻、スペイン兵に路上で暴行を受ける」と言うセンセーショナルな記事が掲載された。
記事は、「アメリカ人貿易商の妻がスペイン兵に暴行を受ける現地人の少年を助けようとした所、スペイン兵に暴行を受け服を剥ぎ取られた」等というものであった。写真付きで。
写真では、確かに白人と見られる女性が服を剥ぎ取られた状態で路上に倒れており、暴行を受けたのか痣のようなものがあちこちにあった。イケイケ新聞社は一気に部数が伸びた。
政府部内
おい、この記事は本当か。誰か確認を取れ。
そのアメリカ人貿易商が確認できません。
スペイン兵が写真に写ってないって、かなり怪しくありませんか。
キューバのスペイン総督府では、そのような事実は無いしその女性も確認できないと言っています。
記事の少年ですが、悪事を働いて捕まったのかスペイン兵がおもしろ半分に暴行したのかわかりません。
誰か裏付けを取ってこい。
イケイケ新聞社がこの記事で部数を伸ばしたことに刺激され、他の新聞社も次々とカリブ海周辺でのスペインの悪行を書き立てた。スペイン政府から抗議か来るのは当然で、合衆国とスペインは雰囲気が悪くなった。
1897年 ワシントン
そこには普段の面々の他に海軍と陸軍の姿が見えた。
さて、皆に集まってもらったのは他でもない。最近スペインとこじれているのは知っていると思う。
国内では相変わらず、不平不満がたまっている。いつ事態が発生してもおかしくないくらいだ。国外に目を向けてもらわねば、内部が危ない。
そんなに危ないのですか。
GBK団(注)という団体を知っているか。設立当初はただの思想団体でせいぜい集会を開いて不平不満を言うくらいだった。それが最近急激に先鋭化して、アフリカ系アメリカ人に対して暴行を加えるとか過激な行動を取るようになってきた。被害者も多い。
ただ、賛同する者も多いので困る。そこで、参加するほどでは無いが賛同するくらいの者達の目を逸らす。他の不満を持つ者も、目を逸らしてもらえると思う。
と言うことは、軍人さんがいますね。戦争ですか。古来内政に失敗すると、外に敵を求めると言いますからね。違いますか。
痛い言葉だが、違いない。スペイン相手に戦争をする。ヨーロッパ諸国にはスペインの悪行を伝え、協力してもらえることになっている。
海軍さんと陸軍さんはどうなのですか。勝てますか。
我々は命令が出れば従うだけです。勝ち負けは関係ありません。勝たなければなりませんが。
ただ軍備の方が整っていません。
私は陸軍ですが、南北戦争後人員削減され、ようやく定数増の許可が出たのが、1980年です。
ただ敵はメキシコだけだと言われ、たいして増やされませんでした。未だ定数は、南北戦争前より少ない状態です。
予想戦場は西インド諸島ですが、メキシコが国境線から出てきた場合2正面作戦となります。必ず勝てますが、かなりの損害が出ることが予想されます。また国内市街地での戦闘になることも十分予想されます。ですので陸軍としては、メキシコが絶対に出てこないと言う条件を満たして欲しいです。
海軍も南北戦争後人員削減にあい、規模の拡大を始めたのが1880年です。ですがゆっくりとでしたので、戦力的にフィリピンで戦うなどとても無理です
。陸軍さんが予想戦場を西インド諸島と言ったのは、そう言うことです。戦場をカリブ海と東海岸防衛とすれば、スペインに負けることはありません。
軍の意向はそう言うことだ。フィリピンが欲しいが、戦力的に手が出せん。本当にあの戦争とその後の立て直しに要した20年がな。
そうですね。あの黒ん棒どもにあんなに金かけたせいです。ああ、そう言えば土人どもにも金掛けましたね。あんな事しなければ良いのに。
おいお前、記者に聞かれたらスペインの代わりに我々がたたかれる。苦労してスペインを悪者に仕立て上げた成果が台無しになる。たとえ思っていても絶対に口と態度に出すな。出したら首だ。
クランはいいですよ。そんなこと言わない。黒ん棒をぶちのめせという。今俺たちの景気が悪いのは奴らのせいだ。ここは神に祝福された土地だ。奴らは要らない。さあスペインなんかどうでもいい。黒をやっつけましょう。
クランて、まさかお前GBK団員か。まずいぞ。ここまで入り込んでいるのか。警備を呼べ。こいつを拘束しろ。理由は何でもいい。今の会議内容が外部に出るとまずい。とにかくスペインの相手が終わるまで誰とも接触できない所にやっとけ。
ドタドタと。
いやすまない。奴があんなだとは思わなかった。いつからああなっちまったんだろう。そういうわけでああいう奴が増えているから、なんとしても国外に問題を作って、国内の不平不満をそっちに向けなければいけない。
了解です。しかしGBK団ですか。軍の内部も思想調査が必要なようですね。軍にもアフリカ系アメリカ人は多い。問題を起こされると困る。
それでスペインとはいつやるんですか。
来年だ。各国への根回しや軍の準備にそれくらいい掛かる。
1888年カリブ海にあるスペイン植民地の港でアメリカ合衆国海軍の軍艦が爆発した。入港したのはアメリカの記者を拘束したスペイン警備隊との交渉のためだった。アメリカ合衆国はこれ以降スペインへの強硬姿勢を崩さず国内からの支持も得て、スペインとの開戦に至った。
終始アメリカ軍が優勢で、スペイン軍は抵抗したが戦力の差はいかんともしがたくスペインは敗北した。合衆国はカリブ海周辺のスペイン植民地全てを合衆国の管轄に移管するという事で決着した。
うむ、終わったな。うまく言って良かった。国内も落ち着いた。
それはいいんですが、あの島々をどうするんですか。独立派に約束した事は実行するのですか。
え、独立派。そんな奴いたか。合衆国の領土になったんだ。独立などさせんよ。5年後に合衆国が支援した上での独立と言う約束だが、5年後までに独立派をなんとかすればいい。
5年後、独立の約束をなんだかんだ理由を付けて履行する気のない合衆国に対する地元の反感はすさまじく、サボタージュ・海賊行為・合衆国施設などへの攻撃など、ゲリラ活動が激しくなっていった。
その中であのイケイケ新聞が載せた記事が、全くのでたらめでありねつ造記事だ有ったことが発覚した。
あの写真の女性は、酔っ払って路地に寝込んだ所を追い剥ぎに遭い、抵抗した所暴行を受けたと言う事だ。
更に少年は女性を助けようとしたらしい。
とどめは、貿易商の妻では無くアメリカ人相手の売春婦だったことまで暴露。
この事態にスペイン政府は、アメリカ合衆国を強硬に非難し、その他のヨーロッパの国々の視線も厳しいものになっていった。
また最初に爆発した軍艦はかなり古く、実戦には耐えられない物だったことが判明。疑惑は深まった。
合衆国がカリブ海の平定に苦労する中、1914年ヨーロッパで一発の銃弾が世界の運命を動かした。
さて、ヨーロッパであの一発がありました。
この国はどうするのか。
いろんな事で、ぼっち街道を走り始めた合衆国。
(注)GBK団 ゴッド・ブレス・クラン
神に祝福された人たち と思ってくれればいいです。
最初は不平を言い合うだけの集団でしたが、次第に先鋭化・凶悪化し神と言うことからわかるように、次第に宗教的狂信者集団になっていきます。
後には反社会的集団として国家からの監視撲滅対象となりました。




