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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
35/62

ミッドウェー西航空戦・序章

まずは空中戦から

 6月5日朝

 

 大和の電探がいくつかの輝点を映し出した。


「敵少数機編隊、方位120度より複数接近中。ただし、飛行方位は複数」


「方位は複数?」


「どういうことだ。電探室」


「どうも平行してというか、分かれて飛んでいるような感じがします。索敵攻撃かも知れません」


「わかった。引き続き警戒を頼む」


「敵はこちらの位置を正確につかんでいないようですね」


「それで索敵攻撃か」


「三航戦と四航戦に迎撃指令を出せ」


「まだ発見されていませんが」


「発見させる。敵戦力を拘束し戦力をすりつぶす。その後に反撃を行う」


「了解」


「一航戦と二航戦は如何しますか」


「まだ待機だ」


「もう一度一航戦と二航戦に確認を出せ。待機は戦闘機隊のみ」


「待機は戦闘機隊のみ。確認取ります」


「二航戦なら敵艦隊発見即発艦をしかねませんからな」


「機が大事なのはわかるが、どうせなら合同で挑みたい。その方が損害も少ないだろう」


「山口二航戦司令なら理解していると思います」


「参謀長、同期だったな。なら押さえて見せろ」


「努力します」


「頼むぞ」


 三航艦と四航艦の戦闘機隊は、奇妙な命令を受けた。

 一機艦に向かってくる編隊は迎撃するな。一機艦の脇を抜けようとする編隊を迎撃せよ。

 一機艦は見せる気か。後方の補給部隊を敵の目にさらしたくないか。


「三航戦は右の編隊。四航戦は左の編隊だ。後ろに通すな。補給部隊を発見させるな」

「了解」


 三航戦二〇機、四機編隊五個小隊が右に向かう。四航戦も二〇機四機編隊五小隊だ。

 これまでは三機編隊だったが、マーシャルで欠陥が判明。

 熟練の搭乗員ならきれい且つ素早く編隊を崩し攻撃態勢に入るが、若が混じると途端に動きが悪くなる。下手をすると空中衝突を避けるためにかなりの時差で長機について行くような機体もあった。

 そのせいかわからないが、若の損害が目についた。いつに間にか若が付いてきていない。若がはぐれた。若を待っていると危険。などの証言があり、空戦での編隊のあり方を空母部隊の戦闘機隊中心で研究した。

 横空は練度が高すぎ、三機編隊の練度差による危険性を理解できないようだった。


 研究の結果、二機を最小単位とし分隊とし二個分隊四機で一個小隊を編制。四機編隊四個で中隊、四個中隊で大隊という物だった。四の倍数というのはとっさの場合、瞬間的に判断を下せるのが二から三の相手という観察結果からもたらされた。

 士官編隊長も研究対象になり、はっきり言って下手とか空中判断の遅い者は地上ではともかく、空中では熟練者に従うべしと言う勧告がなされた。強制では無いが、皆命が掛かっている。多くは従った。

 

「敵発見、十一時の方向、上」

「全機、上昇して上に出る。続け」


 瑞鳳戦闘機隊長の指示に全機上昇する。


「敵、上昇します」

「なんだ、やけに上がるな。戦闘機か」

「いえ、アレはB-17に見えます。上がりますね」


 じりじりとしか高度差は詰まらなかった。最初から高度差があったのも確かだが、B-17の上がりが良かった。


「佐々木、貴様、母艦にこのことを報告しろ。電信は得意だったはずだ」

「了解、電文は」

「B-17は上昇力極めて良好なり。だ」

「送ります」


 高度が五千近い、夢中で追っていたらこうなっていた。


「全機酸素マスクを使え」

「了解」


 ようやくB-17編隊の上に出た。いつから追っていたのか。いかんな、飛行機乗りの三割頭か。これでは他の奴のことを笑えん。


「しかし速いな。二百五十は出ると聞いていたが、この高度でも出るのか。こっちはこれから苦しいのに」

「現在六千五百です。速度二百四十。さらに上昇中。敵機速度落ちません」

「全機機銃の試射をしろ、20ミリもだ、ケチるなよ」

 案の定、安全装置を解除するのを忘れた奴がいた。


 敵編隊は四機編隊だった。


「瑞鳳一小隊、目標先頭機。瑞鳳二小隊、目標右の奴。翔鳳一小隊、目標左。翔鳳二小隊、後方の機体」

「了解」

「瑞鳳三小隊は予備。撃ち漏らしを頼む。あと敵機の様子をよく観察しておくように」

「了解」

「攻撃方法は、後上方から分隊単位で挟み込め。防御力がすごいという情報だ。無理をするな。一撃したら反復攻撃など考えるな。そのまま前下方に抜けろ。いいな。」

「了解」

「よし、いくぞ。全機、掛かれ」

「了解」


 敵先頭機に突撃していく。そういえば、目見当を信じるな、照準器のレクチルを信じろ。と言ったっけ。やはり三割頭か。


「坂本、左だ。俺は右からいく」

「坂本、了解」

「行くぞ、鈴木、付いてこい」

「了解」


 高度差三百ってところか。行くか。

 と思ったらもう撃ってきた。機銃の性能がかなり良いと言う情報だ。遠いが届くのか。案の定少し前で垂れて落ちていく。だがあの弾道と太い火箭は危険だな。しかも連装ときた。


「敵の火力は強力だ、気をつけろ」 

「わかりました。当たったら痛そうですね」

「そうだな、お前の頭は当たった方がいいのかも知れんが」

「酷いこと言わんで下さい」


 もっと前へ出るか。坂本も同じ事を考えたようで左側を前へ出て行く。10時くらいに敵が見えたところで、降下増速する。

 

「鈴木、敵はでかいからな。ションベンするなよ」

「了解」


 すでにスロットルは全開、スロットルレバーの機銃発射把柄に指は掛かっている。敵機が迫る。

 でかい。もう撃ちたい。レクチルではまだだ。

 機銃の火箭が迫る。怖い。ガンガン。当たった?頃合いか、把柄を握る。ドンドンと20ミリは強烈だ。いかん、主翼後方に後落している。照準のやり直しは間に合わん。そのまま撃ちっぱなしで敵上空を前下方に抜けるよう少し操縦桿を引きつける。ガンガンとうるさい。速度は四百ノット近くまで上がっていた。なんだ?振動がひどい。敵機前下方に抜け高度差五百で引き起こしをかける。

 鈴木の様子を見るため後方を確認する。良かった。後ろにいた。


「鈴木、無事か」

「無事です。隊長が上部銃座を潰してくれたので、坂本一飛曹以下無事に敵機後上方からの攻撃に成功」

「敵機は、どうした」

「撃墜成功です」

「やったな」

「はい」

「それよりも隊長、主翼に穴開いてますよ。帰投された方が良いのでは」


 確かに左主翼に弾が当たったのだろう穴が開いていた。


「そうだな降下で振動が出る。一応状況を確認してから帰投できるのなら帰投する」


 三機撃墜だった。二十機掛かりで四機中三機か。ずいぶん頑丈な奴だ。

 一機は爆弾を投棄して逃げたと言う。その際さらに高度を上げたと言う。速度も二百六十は出ていたようだと言う。

 反復攻撃禁止の言いつけを守り深追いはしなかったそうだ。


 全機集まってきた。やられた奴はいない。被弾した者を問うと、自分を入れて6人だった。

 母艦に連絡を取り、帰投可能か問い合わせる。残弾の少ない者と被弾した者は帰投対象とする。

 交代するよう発艦したそうだ。瑞鳳三小隊は被弾無し、残弾多し。と言うのでここで待機。一小隊と二小隊は帰投することにした。

 翔鳳一小隊と二小隊も交代するようだ。

 皆口をそろえて、

「ずいぶん手前から発射してしまった」

「撃ちっぱなしで降下した」自分と同じだ。

「目測を誤りぶつかりそうになった」

「あの弾道は恐ろしい」うん、俺もそう思う。

「火が付かん」


 三航戦の瑞鳳と翔鳳には、マーシャルで戦った者も多い。それでもこれだ。


 四航戦は未帰還機も有った。それでも四機撃墜する奮闘を見せた。


 

「三航戦と四航戦で七機撃墜一機撃破です」


「一航戦と二航戦で五機撃墜。艦隊の対空砲火で二機撃墜です。五機逃げられました」


「その五機も損傷は与えたのだろう。アレは逃げたのでは無く、逃がしたのだ」


「一航戦と二航戦に全部落とすなと言われていましたね」


「艦隊の対空砲火の威力を知りたかったからな」


「本艦と直衛艦はさすがでしたが、武蔵と二十一駆が振るいませんでした。練度不足はいかんともしがたいものがあります」


「仕方ない、本来練度不足で実戦に出られるような状態では無いのを承知で引っ張ってきたのだ」


「B-17の対処方法もだいたいわかりました。いくら強力な防御火力と言っても限りが有ります。上部銃座を潰してしまえば、あとは上からたたみかける。と言う手段です」


「三航戦と四航戦は、B-17一機に四機で掛かりました。それでも一機逃げられたと言います。これは、現場指揮官が反復攻撃禁止を厳命したためだと思います」


「相当高空性能が良いという報告も来ています。高度を取られると、そこまで上がるのに時間が掛かります。零戦の性能が落ちるのはだいたい七千メートル以上です。一万くらいで来られると対応困難という報告も有ります」


「では、八千以上の高高度を飛ぶ機体に少数機の攻撃では効果が薄いと?」


「相当頑丈なようです。それでいて高空性能が良いのですから、厄介です」


「一万か、八十九式高角砲改二は届かなかったな。長十センチと一式高角砲か。帰ったら、戦訓として検討するよう報告書を書くか」


「長官、ミッドウェーの予想される機体数ですが」


「おお、大事なことだったな」


「軍令部の判断では、駐機場の規模から言って、B-17のような大型機五十機から百機、小型機が百五十機から五十機程度の予想を立てています。先ほどの空襲で二十機はB-17を失いました」


「しかし、敵情がわかりません。その予測を鵜呑みにするのは、迂闊では」


「そうだな、距離も近くなった。航海、あとどのくらいだ」


「三百五十海里です。攻撃隊を出すには遠いと思われます」


「いや、攻撃隊では無く偵察だ。あいつを出す。十四試艦爆だ。彗星だったな」


「あの機体なら高速です。無事帰ってこられるでしょう」



 瑞鶴格納庫では、偵察機の発艦準備が進められていた。


「こんなのいいのですか」


「心配するな。許可は取った」


「誰からですか」


「司令だ」


「良く面会できましたね」


「士官食堂でたまたま会ってな。提案してみたら面白そうだからやって良いと」


「すごいショートサーキットなんですが、あとで飛行長や艦長からお目玉食らっても知りませんよ」


「その時はその時だ」


「はいはい」


 そこには赤く塗られた、十四試艦爆、制式名称「彗星」が有った。赤い彗星である。

 

 赤い塗料は日の丸用の赤だ。国籍標識と区別が付かないので日の丸の白い縁は残した。

皆あきれた顔で見ている。


「西大尉、ずいぶん派手な機体だな」


「飛行長」


「ふー、説教はあとだ。シャーよ。こんな機体にしたのだ。自信はあるのだろう。きっちりミッドウェーを撮影してこい」


「は、ただいまより西大尉および安室二飛曹はミッドウェー島偵察に向かいます。戦果多大なるを期待して下さい」


「よし、行ってこい」


「「はっ」」


 赤い彗星は、カタパルトセット後「シャー出る」とかかっこつけて発艦していった。


 

空中戦と言いながら、その行数の少なさ。期待された方、ごめんなさい。

もう一度、「ラバ空」を読み返すとするか。


赤いのは、まあそうですね。ネタです。彗星が出た以上、やらずにはいられない。

ロールス・ロイスのエンジンです。


18時に双龍の世界が一編入れてあります。

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