双龍の世界 我ら十四試軍団 艦爆隊員の場合
十四試は、艦爆、艦偵、局戦、水偵、水戦、と多すぎる気がします。自分で書いといて。
なので軍団にしてみました。
我ら、十四試軍団である。
十四試艦上爆撃機 愛知
十四試艦上偵察機 三菱
十四試局地戦闘機 三菱
十四試水上偵察機 川西
十四試水上戦闘機 川西
何が言いたいかというと、海軍よ、中島がかわいいのはわかるが、三菱に振りすぎだと思うんですよ。
だってこの後
一五試艦上戦闘機 三菱
一六試陸上攻撃機 三菱
なんですかこの振りすぎ感は。
確かに九試艦戦、十試艦攻、十二試艦戦とたつ続けに成功し制式化されました。十三試陸攻もエンジン次第ですが成功でしょう。
陸軍にも百式司令部偵察機という美しい飛行機を採用していただけました。
在る意味三菱の絶頂期と言ってもいいでしょう。
対して、十三試艦攻が、辛くも成功した中島。しかし、海軍の発注がありません。
十二試遠戦で懲りたのはわかります。海軍と少し距離を置きたいのかも知れません。
十二試遠戦で失敗した原因はGです。Gが仲間を動かして悪いことしたんです。
なぜアレが、十三試陸爆(注)に変身したのかわかりませんが。
でも十四試・十五試・十六試と中島はありません。
中島が陸軍さんで忙しいのはわかりますが、三菱、大丈夫か?
私、十四試艦上爆撃機と申します。通称、一四試艦爆と呼んでいただければ。
愛知航空機で十一試艦爆の成功を受け、一社指名で開発を任されました。
うん、五十番抱いて水平全速三百ノットで飛べと。そしてその速度から急降下爆撃をせよと。
ふざけんじゃねー!!!!
フー、フー、ちゃぶ台があったら空舞ってたぜ。全日本ちゃぶ台返し選手権が有ったら優勝かも知れねえ。
おっと、いけません。地が出てしまいました。愛知ですのでみゃーみゃーとかがやがやぎゃっぎゃを付けなければいけないのですが、私わかりません。
開発は難航が予想されました。当然ですが、要求水準が高すぎました。要求を満たしてくれれば後はエンジンの選定も自由と言われてもねえ。
結局、従来型の艦爆では無理だろう。
小型軽量で強力なエンジンを載せて、在る意味強引に飛ぶ飛行機で行こう。
しかし、エンジンがありませんでした。三菱金星がありましたが、大きいのです。三菱瑞星は小さいのはいいのですが、馬力不足。中島?問題外ですね。まともなエンジンがありません。
川崎で戦闘機用にドイツからダイムラー・ベンツの液冷エンジンを輸入するという情報が入りました。
「液冷なら正面面積を抑えられる。前面投影面積も小さくできるだろう」
「うちにも分けてもらおうかと思いましたが、契約上できないと言うことです」
「うちでも買おうか?でも同じところから買うのもなんか面白くないな」
「アメリカのパッカードのアリソンが優秀なのだが、最近つれないからなアメリカが」
「エンジンの協定も来年の春で切れる。最近は古いエンジンをいじったやつしか見せてくれない」
「イギリスのロールス・ロイスはどうだろう。シュナイダーカップでブイブイ言わせてたエンジンだ」
「それだ」
「売ってくれるかな」
「ベンツの名を出せば売ってくれるんじゃ無い?」
売ってくれた。
他の会社が陸軍向けの機体にベンツのエンジン載せるんだけど、うちは海軍向けだし、同じエンジン使うのは気に入らない。ロールス・ロイスのエンジンは素晴らしいと聞いたので是非使ってみたい。
お使いください。ドイツ製のエンジンなどに負けません。
「最新型のマーリン売ってくれました」
「いいのか。イギリス政府が何か言わないか」
「完全自社開発なので文句は言わせないそうです」
「こちらもエンジン自由だからな。文句は言わせん」
エンジンが決まったので、機体デザインに入る。
「問題はラジエターの位置だな。変なところに付けると、今の出力なら問題ないが出力が上がった場合、放熱不足という事態になりかねない」
「胴体下は艦爆として有り得ないから、他の場所だな」
「エンジンの前か下か。それとも主翼の下か」
「主翼取り付けは無いな。燃料タンクの場所を圧迫する」
「では、エンジンの前か下しか無いな」
「それでいこう。取り付け場所が決まっていれば後はどうとでもなる」
「胴体だが、エンジン幅に合わせていいのか、かなり狭いぞ」
「性能優先だ。かまわないだろ。でも少し余裕を持たせるか。後席の座席の前後変換がやりにくいからな」
「胴体はいいな。主翼だが、今までの楕円テーパーはどううする」
「アレ薄翼にはいいが、主翼に大量の燃料を入れるのに向いてないだろ」
「そうだな。十一試艦爆で苦労している」
「では楕円テーパーの採用はなしと」
「平面は普通の直線テーパーで、翼断面は最新流行の層流翼でいきたいと思います」
「主翼面積を上げると速度に影響が大きいからな、主翼は小さくする」
「揚力が稼げないので、離陸と着陸が大変ですよ」
「そこは高揚力装置でなんとかしろ」
「するじゃ無くてしろ、ですか。自分じゃやらないんですね」
「君に任せた」
「わかりました。思い切って主翼翼幅を11メートルとし、空母搭載時に折りたたまなくてもいいようにしたいと思います」
「やってみろ」
「やります」
「爆弾なんだが、むき出しだと速度出ないぞ。胴体内に格納する方が速度が出て良いと思うが」
「爆弾倉か」
「そうだ」
「やろう。とにかく速度優先だ」
そうして開発は進んでいった。
爆弾倉は主翼下に爆弾があるように懸荷装置の位置を工夫して、懸架装置自体は主翼埋め込みに近い形にした。もちろん作業性は考えてある。
そこに爆弾倉をかぶせるような感じの爆弾倉を胴体と整合させて取り付けた。
爆弾倉扉は、シャッター式にしようという意見が多かったのでシャッター式にした。
もっと苦労すると思ったら意外と順調。
ついにモックアップ審査である。
「え?艦爆だろ」
「小さいな」
「液冷だと」
「戦闘機に見えるが復座だよな」
「足長」
「大丈夫がこれ」
最後、失礼だな。まあ、いろんなことを言ってきてくれる。
皆一番気にしたのは前方視界だった。
「大丈夫です。エンジン幅が狭いので、正面は見えませんがその脇の視界は空冷エンジンよりも良いです。着艦時も脇から誘導灯が見やすいと思います」
でもダメ出しされて、操縦席を少し上げることになった。鮎(ひいき目に見てます)だったのが鮒になってしまう。まあいいか。
開発はさらに進み試験機が出来上がってきた。
一通り地上試験が終わり、搭乗員に聞いてみると。
「地上姿勢では正面は全く見えない。これは空冷でも同じだが。両脇は空冷より良く見える」
「足がずいぶん貧弱に見えるが、大丈夫か」
「主脚は九九艦爆同様、中島さんなんで」
「またかよ、自社で作る気ないな」
「たぶん」
いよいよジャンプ飛行だ。
おお、少し浮いた。わかっていたけど離陸速度速いな。何回か繰り返して、アレ離陸せずに戻ってきたぞ。
あれ、傾いているな。足か?
「右の主脚の油圧が突然抜けた。今日はもう終わります」
「はい、お疲れさま。中島の技師を大至急呼んで対策を練ります」
「頼みます」
主脚の油圧が抜けた原因は、切り替えバルブの強度不足で圧が掛かると変形して油圧が抜けてしまう。と言う物だった。
中島が大至急新設計で作り直すという。速いな。中島ともなると連絡用の自社飛行機でやって来て帰って行った。
一四試艦爆の主脚は、中島製だ。九九艦爆と同じだ。愛知は主脚の研究を縮小してしまっている。完全に外注にする気だろう。
胴体部分が爆弾倉になった影響で、車輪部分が胴体の外側になった。トレッドを広げるにも限界があり、後は主脚を伸縮させるしか無かった。
主翼は低翼配置に近い中翼となっていて、ただでさえ長く伸ばす必要のある主脚をさらに伸ばす必要があった。
結果、二段伸縮という面倒な機構を採用した。もちろん愛知で製作はしません。中島さんに丸投げです。
新型のバルブが来るまでに機体を入念に確認する。やる事が無いのでは無い。それまで暇なだけだ。
前縁スラットはかなりのスパンを持たせた。主脚外側に付けた13mm機銃を挟んで二分割してある。
フラップはスロッテッドフラップだ。これも幅が広い。
エルロンは幅が狭く運動性の問題が持たれたので、操縦桿に連動してスポイラーが主翼上面にせり上がるようになっている。補助的な物なので小さい物だ。
水平尾翼、垂直尾翼とも機体に対して大きめに見える。九九艦爆で初期設計より大きめになったのでこの機体は最初から大きめにしてみた。
ラジエターはエンジン下でプロペラのすぐ後ろだ。放熱面積を稼げるよう奥行きに余裕を持たせてある。将来的な容量アップにも対応できる。配管が短くなって、若干の軽量化にもなった。空気抵抗も問題ないほど小さい。
操縦席は最初のモックアップ前はエンジン上の直線部分から水平に伸びた胴体にちょこんと出ている感じだった。クレームがつき、30cm位上げた。エンジンカウリング後ろから胴体を斜めに上げたのでは空気抵抗が大きくなったので、プロペラ後ろからエンジンカウリングを再設計してスムーズに操縦席まで直線になるようにした。
胴体下は爆弾倉のせいで少し膨れたような形だ。やはり鮒だな。鮎じゃ無い。二十五番だったらスムーズだったのに五十番だしな。
中島から新型のバルブが届いた。自社飛行機ですよ。金持ちだね中島。
試験飛行は順調で珍しいほどだった。飛行成績も文句ない物だった。
水平全速 三百十ノット
高度五千まで七分三〇秒
速度、上昇力とも要求を満たしている。
これなら採用は堅い。皆そう思った。
肝心の急降下試験で問題が出た。エンジンが息吐くという物。水平飛行から急降下体制になるときに少し逆Gが掛かる。そのときに息吐くと言う事だった。
ロールス・ロイスに聞くと、イギリスでも問題になっていて改修のめどが立っていないそうだ。
困った。どうしよう。困ったときの中島さんでどうだろう。きっと何か有るに違いない。
主脚のよしみで問題解決に力を貸してくれるかも知れない。
そうだ、中島に聞こう。
「中島さん。実はこういうことで困っています」
「何々、そうですか。逆Gで息吐くですか」
「お願いできますか」
「キャブレターでしょう。外部の会社がいじっても良いかロールス・ロイスに聞いてもらえますか」
「はい、早速」
ロールス・ロイスでは「解決してもらえるならありがたい。許可します。解決したら教えてください」
「許可出ました。お願いします」
「やりましょう」
実は中島は対策ができるのを知っていた。自社技術にあるのだ。チョロいぜ。
対策品ができたのは一ヶ月後だった。
その間にも急降下以外の飛行テストは行われ、離着陸性能に問題有り以外は順調だった。
離着陸速度が速すぎるという意見だった。おかしいな九九艦爆よりも十五ノット速くなっただけなんだが。海軍では問題ないと言っていたのに、なぜ?
その意見は無しになった。その速度で問題ない。大丈夫です。またGの仲間が悪さしました。これは軍内部の問題でした。お気になさらずにお願いします。
なぜ、低姿勢?
新型キャブレターは快調だった。どんな姿勢を取ろうとエンジンが息吐く事は無かった。
ロールス・ロイスに解決したことを伝えると、すぐに教えてくれと言われ、中島の技術なので、中島と相談してくださいと、中島に投げた。
中島とどういう交渉があったのかは知らない。イギリス外務省の外交貨物として、中島の技術者共々飛行機でイギリスに行った。中島の技術者も一時的にイギリス外務省嘱託となった。
試験飛行は無事に終わり、海軍に受領される日がやってきた。
正和一六年初秋だった。
残りは空母での試験だな。一番気になるが問題ができるまで見学もできない。見学できずに終わるのが一番だ。
後日、息吐き問題解決のお礼としてマーリンエンジンの最新型が数基送られてきたのは驚いた。
マーリン積んじゃいました。
Gの仲間はどんどん航空関係から追放されます。
中島のキャブレター技術はフロート室をふたつにして逆止弁とといろいろな技術じゃ無かったかなと。
(注)十二試遠戦が十三試陸爆になった下りはまたの機会に。Gが悪いのだ。




