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空母 双龍 東へ  作者: 銀河乞食分隊
燃えるミッドウェー
21/62

マーシャル殲滅戦

機動部隊同士の激突

どうなる

 損傷艦を分離した第一機動艦隊は、速力を二十五ノットに上げ敵輸送船団への追撃に入った。潜水艦が不安だが、水雷戦隊が前方を啓開してくれている。大丈夫だと信じたい。

 一時期輸送船団を見失ったが、再び潜水艦が発見してくれた。やはりハワイへ向かうようだ。

 輸送船団をやる前に、残りの空母部隊とやり合わなければならなかった。

 敵機動部隊はこちらが差し向けた索敵機を撃墜するか躱すかして位置をくらました。どのみち輸送船団を守らなければいけないだろう事は明白で、近辺に存在することは確実とされた。


 翌日、夜が明ける前から司令部では

 

「使える空母が、翔鶴・瑞鶴・雷龍・瑞鳳だが、瑞鳳の戦闘機隊は艦隊直援として敵攻撃には使わない」


「翔鶴・瑞鶴・雷龍の残存機で出撃可能なものが、戦闘機六十八機、艦爆四十六機、艦攻四十八機です。他に十三試艦攻が四機あります。これは火龍の機体を含めてです。他には現在修理中の機体も在りますが、出撃には間に合わないものとします」


「昨日出撃しなかった機体を含めても少ない気がするが、そこの所はどうなのか」


「敵も我が方同様に電探を使った遠距離阻止迎撃を行いました。戦闘機の数が多かったので、行方が判らない機動部隊からの機体も含まれていたと思われます。その際、敵は撃墜にこだわらず一連射を浴びせては降下で逃げると言うことを繰り返していました。こちらの戦闘機隊が引きずり出された後にまた他の敵戦闘機が一連射を浴びせるという繰り返しで、撃墜こそ免れましたが損傷の大きい機体が多く修理不能の機体もあります」


「戦艦と巡洋艦の水偵は全部出たな?」


「全部で三十二機出ています。零式三座水偵のみです。」


「十三試艦攻も出す。他にも艦攻を十機索敵に回すように」


「それでは攻撃力が落ちます。一考を」


「いや出す。昨日も水偵がかなり未帰還になっている。やはり速度が遅いとやられる可能性が高くなる。高速の機体を出すべきだ」


「四十六本の索敵線ですか。やり過ぎでは無いですか」


「昨日は四十八本で乙部隊を見失ったぞ。やり過ぎくらいでいい」


「艦攻の索敵線の設定はどうしますか」


「艦攻は乙部隊推定位置を中心に飛ばすように」


「直ちに手配します」


「司令長官、対艦装備を始めますか」


「まだしない。敵を見つけてからだ。昨日は敵の索敵機に爆撃を受けた。もし攻撃待機中の飛行甲板に命中したらどうする」


「しかし昨日は先制攻撃を受けました。そのせいでこちらは第二次攻撃が出来なくなりました。索敵機が発見してから装備を始めては機を逸します」


「だめだ。艦の保全を優先する。昨日は龍鳳・雷龍・翔鶴と格納庫に被害を受けた。もし攻撃待機状態の機体があったらどうなっていた。まだ先は長い。今消耗してどうする」


「長期戦になるとお考えですか」


「軍令部も海軍省も政府もそう考えている。一発やられたくらいではアメリカは屈服しない。2年後にはこちらの戦力を上回る。それまで持てば奴らの勝利だ。だから継続的に奴らの出血を強いる。これが上層部で出した結論だ」


「では終わり方はどうなるのですか」


「こちらがボロボロになるか、アメリカが損害に音を上げるまでだな。どこかの国が仲裁に入ってくれる可能性は少ないだろうという見方だ」


「こちらの損害を抑えて敵に出血を強いるですか、いささか都合が良すぎる気がしますが」


「現在は我が方が戦力的に上回っている。今は可能だ。昨日も敵が空母を二つに分けてくれた。おかげで六対四が六対二になった。護衛戦力も二分された。それであの大戦果だ。今回は敵のミスだろう。いつも相手がミスをしてくれるとは思わないことだ。我々もミスは多かった。帰投後、戦訓の分析で忙しくなるぞ」


 

 索敵機が敵艦隊を発見した。空母2隻・戦艦3隻・重巡他多数という艦隊だ。乙に違いなかった。

 今回はこちらが先に発見した。発艦準備を急がせる。

 戦闘機五十機、艦爆四十六機、艦攻四十一機が次々に敵艦隊目指して発艦していく。艦攻の一機は修理完了した機体だ。


 昨日潜水艦が見失った輸送船団が索敵に掛かった。百八十海里でなおも北東に向かって航行中とのこと。

「輸送船団上空に敵機無し。我接触を続ける」


「交代の機体を向かわせろ。接触を絶やすな。航空参謀、甲はどうなったのだろう」


「甲ですがたった今索敵機が発見しました。空母1と戦艦2他多数の損傷艦で北東を目指しているという報告がありました」


「ハワイに逃げるか」


「逃げ切れる気でいるのでしょうか」


「勿論逃がさん」


「阿賀野より通信、電探に反応、敵機、少数機、こちらに向かう、会合進路」


「会合進路か、迎撃する。直援機を向かわせろ」


 敵索敵機はついに空母上空には現れなかった。この辺りに居ることは判ったはずだ。敵はどう出るのか。

 


「上空十時の方向敵機、十機来ます」

「散開するな、固まって打ちまくれ、編隊を崩すな」

「戦闘機はどこ行った」

「戦闘機戻ってきます」

「遅い!」

「今の敵機戦闘機じゃ無かったぞ。ドーントレスだ」

「艦爆かよ、でも二機やられたぞ」

「こっちは腹に重しぶら下げているんだ。動けない的なら艦爆でも十分と言うことだろう」


 護衛戦闘機隊は、昨日に引き続き敵の戦術に翻弄されていた。電探で誘導を受けているのだろう、的確な方向と高度から襲撃を受けている。

 敵戦闘機の数はこちらの戦闘機と同数だったが、更に艦爆で迎撃という暴挙に出ていた。

 今は成功しているのが悔しい。救いはこちらの零戦の方が腕も性能も良く、戦闘になればほぼ勝ちだったことか。


「敵艦隊です」

「空母はどこだ」

「空母です、二時の方向」

「空母だが戦艦も居るな」

「戦艦ですが、新型ですか」

「アメリカの戦艦にしては速くないか?空母と行動を共にして居るぞ」

「翔鶴艦爆隊突入します」

「なに、奴らどこに居たんだ。一番槍は取られたか」

 

 空が爆発した。それほどまでの対空砲火だった。翔鶴艦爆隊は火網に絡め取られ次々に落ちていく。

「くそ、なんだアレは」

「とんでもないです。昨日はこんなに激しくなかったですね」

「あそこに行くのか」

「新型戦艦か、とんでもないな」

「翔鶴の奴らは行った。俺たちが行かんでどうする」

「艦攻隊左から突入します」

「俺たちも行くぞ」

「艦攻隊にかぶせるように行け」

「対空砲火を分散させろ。艦攻隊の突入を楽にしてやる」

「突撃」


 瑞鶴艦爆隊は、長機を先頭にきれいな一本棒で空母めがけて突っ込んでいった。

「三番機被弾」

「四番機被弾」

「高度一千、九百、八百、七百、てーっ」

 投弾後の引き起こしがきつい。

「至近弾です。二番機命中、五番機遠弾です」

「よし、ずらかるぞ」

「空母に水柱二本、魚雷命中二本です」

「やったな。何機ついてきた」

「三機です」

「二機喰われたか」

「五機で突入、命中一、至近弾一です。艦型はレキシントンに見えました」

「大物だな」


 雷龍艦攻隊はヨークタウン級敵空母の回頭によって射線を外されてしまった。

「この対空砲火の中、新たに突入やり直しは出来ん。目の前のあいつをやる」

「七番機被弾墜落します」

「全機目標、目の前の巡洋艦。的は小さいがやり直しも出来ん。突っ込むぞ」

「五番機墜落」

「もっと下げろ」

「高度五十です」

「もっとだ二十まで下げる」

「四番機海面に突っ込みました」

「何機ついてきている」

「三機です」

「このまま投雷する」

「よーい、てーっ」

 目の前の巡洋艦が回頭を始めた。

「どうだ」

「ダメです。全弾回避されました」

「くそ。高度を下げたまま離脱する。海面に注意しろ」


 レキシントン級に当てたのは瑞鶴艦爆隊と翔鶴雷撃隊のようだった。翔鶴艦爆隊は被害甚大で投弾どころの騒ぎでは無かったらしい。

 ヨークタウン級空母は神懸かり的な操艦と二隻の戦艦の援護によって無傷らしい。新型の識別表に無い巡洋艦が高角砲を山のように積んでいた。そいつは戦艦並ににとんでもない火力だったらしい。

 

「全機帰投しました」


「まだ帰ってこない機体があるのでは無いか」


「残念ですが、時間的に航続時間を超えました」


「そうか、やられたな。逃がさんと言ったがこれではな」


「集計でました。再出撃可能なのは戦闘機八十七機、艦爆二十機、艦攻二十二機、以上です」


「どうだ、四十機で防御網を破って攻撃できそうか」


「九十機で攻撃して帰還できたのが五十二機です。投弾前にかなりの機体が落とされたと言います」


「敵の迎撃は今度はなさそうなのだろう」


「攻撃終盤にはほとんど敵戦闘機は居なかったと言います」


「では対空砲火だけか」


「その対空砲火がすごかったらしいです」


「どうするかな、行かせるかどうか」


「航空参謀としては反対します」


「なぜ」


「この艦攻の数には十三試艦攻の四機も入っています。二号だけなら十八機です。今度行ったら全滅もあります」


「航空参謀、敢闘精神不足だぞ」


「鉄砲は黙ってください。まだこの先もあるなら今消耗してどうするのですか」


「今消耗してどうする、か。そうだな、確かにそう言った」


「ならば」


「そうだな、航空機での攻撃は終わりとする。次は鉄砲と水雷の出番だ」


「突撃するのですか」


「こちらの方が隻数も多い。敵新型戦艦が気になるが大和に頑張ってもらおう」


 第一機動艦隊は陣形を変更した。

今までは水雷戦隊を両翼に配し中心に空母を置き、空母前面に大和、後方に伊勢・日向。更に下がって巡洋艦部隊だったのを、空母全艦を下げ第六駆逐隊は第一戦隊付属とし、第十二駆逐隊を第二戦隊付属とした。

水雷戦隊と大和の位置関係は変わらないが、伊勢・日向と巡洋艦部隊が前に出てきた。

空母は二十海里ほど下がり、直衛艦と共に海戦の終了を待つとした。


 最後の索敵機が帰ってきた。もうすぐ日が暮れる。


 索敵最終段階では、甲部隊に五十海里、乙部隊に六十海里、輸送船団に九十海里であった。


「輸送船団との間にまず甲が居て、次に乙です。ただこの部隊は合流すると予想されます。甲も乙も空母は分離して違う航路でハワイに向かっています。損傷した空母は速力が出ていません。また周囲に損傷艦を集めて集団にしています」


「最大の脅威は戦艦三隻か。艦型は判ったのか」


「三連装砲塔三基と言うことなので、ノースカロライナ級と思われます。四十センチ砲搭載戦艦です」


「四十センチか。まともに打ち合えるのは大和だけだな。伊勢・日向では危ないだろう」


「このままの速力なら夜戦になりますが、宜しいのですか」


「敵の戦力や陣形が判らん。夜戦は止めよう。艦隊速力を巡航まで下げてくれ」


「では明日、昼戦と言うことで宜しいのですね」


「そうだ、今夜は体を休めよう」


 よく夜明け頃、艦隊後方から索敵機が飛んできた。豪勢なことに艦攻一機に三機の戦闘機が着いている。


「頼むぞ。見つけてくれ」


また、サブタイトル詐欺をやってしまいました。

さっぱり殲滅しません。

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