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漁師と国王
「ちょっと漁師さん、話を聞いてくれ。」
「あれ、ファンテーヌ様。今日はどうなすったんです?」
「…実は、お前と旅がしたくなった。」
私は、知人を尋ねた。旅に出るなら漁師が一番だ。
「あっしと旅に?そりゃあ大賛成でっさ。…で?行先はどちらに致しやしょう。」
「…北東だ。ラウル、ベーチェル伯国ではなく緑豊かな大地の方だ。」
「了解でっさ。」
…ラウルは方向音痴なのだが、大丈夫だろうか?
「ファンテーヌ~!」
息を切らせて走ってきたのは齢16になる少女。
「ゾエ!久しぶりだな。」
「もう、『久しぶりだな』じゃないわよ。旅に出るって司教様から聞いて走ってきたんだから!」
ゾエは同じ修道院で育った幼馴染だ。今はこの港で踊り子をしている。
「旅に私を連れていきなさい、ファンテーヌ。私がいればお金に困ることはないわよ。美味しい料理もたくさん食べれるわ。」
「…そ、それは本当でっさ?ゾエちゃん。」
ラウルがその話に食いつく。
「本当よ。私、ゼディリア王女御用達の酒場で働いているのよ!」
「…厨房係だったよな、ゾエは。」
「わあ、素敵なお嬢ちゃんたちに囲まれて、あっしは幸せ者でっさ!」
ラウルの目がキラキラして、眩しい。なんか、幼少時代をおもいだすな。父さんが生きていたあの頃を。
「…わかった、ゾエ、ラウル、旅の準備をして明朝に出発するぞ。」




