全方位「ドブカス」放送、世界一硬い「絆(笑)」
異世界、王立騎士団の「しごき」訓練場。
「ぐ、はぁ……っ! くるな、近づくな……!」
五味の絶叫がこだまする。目の前には、レベル30の凶暴な『アースベア』。本来なら新米勇者が戦う相手ではない。しかし、騎士団長は冷酷に言い放った。
「これも『勇者』としての試練。魔王を倒す力がない者は、ここで死ぬがよい」
後ろでは、クラスメイトたちが悲鳴を上げ、五味を見捨てて逃げ出そうとしていた。
「五味くん! 助けて!」「いやだ、死にたくない!」
五味は剣を握りしめるが、熊の一撃で剣は弾き飛ばされ、地面に転がった。
同時刻、現代日本。四月一日家の自室。
「あはは、傑作! この『仲間に見捨てられる瞬間』、全米が鼻で笑うどころか、ギネス記録もんのドブカス映像だね」
白夜は、ベッドの上に置いたゲーミングPCのモニターを見ながら、ポテトチップスをボリボリと咀嚼していた。
彼の視界(網膜)には、スキル『迷宮主宰』と『現世接続』を組み合わせた、「観測用」のライブ映像が映し出されている。
「さーて、この『最高のエンタメ』、僕一人で楽しむのはもったいないでしょ」
白夜はニヤリと笑い、スマホを取り出した。
彼は匿名掲示板に、ある「配信URL」を投稿した。
【緊急配信】異世界の勇者様、たかがクマ相手に絶望中www【ライブカメラ】
それは、五味たちが異世界で必死に戦う様子を、現代のネット掲示板に**「ライブ配信」**するという、極悪極まりない遊びだった。
「あはは、スレ立ったら一瞬で1000コメント超えたわ。みんな、『五味死ね』『絆(笑)』って盛り上がってるね」
白夜は、コメント欄を眺めながら、さらに指を弾いた。
『現世接続』の応用――異世界への「直接干渉」だ。
「ちょっとだけ、ボーナスステージをプレゼントしてあげようかな」
白夜が指を弾くと、五味の足元の地面が突如として隆起し、巨大な『迷宮の壁』が彼を分断するように競り上がった。
「うわあああ!? なんだ、これ! 壁が……!」
「五味くん! どこ!? 助けて!」
阿鼻叫喚のクラスメイトたち。白夜はそれを見て、ベッドの上で転げ回って笑う。
「あはは! 分断されたね! 絆パワー(笑)で見捨てずに助け合えるかな? それとも、醜く押し付け合って死ぬのかな? どっちに転んでも、僕にとっては最高のデザートだよ」
白夜は、スマホの画面をタップし、コメント欄に書き込んだ。
【配信主】「あ、これ僕が作った壁ね。五味くん、そこから出られないように設定しておいたから、ゆっくり楽しんでね」
「さーて、3年後が楽しみだ。君たちが死に物狂いでこの『壁』を乗り越えて、ようやく帰ってきたその場所に……」
白夜の瞳に、禍々しい紫の光が宿る。
「僕が作った、本物の地獄を招待状代わりに置いておいてあげるからさ」
現代の平和な夜景を見下ろしながら、ドブカスの悪魔は、誰よりも楽しそうに喉を鳴らした。




