【第8章】光、その先へ
部署を変えても、私の中には戸惑いがあった。
元いた部署の仲間たちはどう思っているのだろうか。
私は役に立つのかと、思わず友人にきいたこともあった。
新しい仕事を山のように覚えなければならず、今思えばできなくて当然なのに、何か失敗する度に「やはり向いていないのか」「やっぱりダメだ」と闇に引っ張る声がする。
部署は違えど、パワハラの相手のいる場所を通る時は酷く動悸がし、声が聞こえると息が止まった。
「どう、新しい部署は」
明るい声で相手に聞かれた時、ほんの一瞬、殺意のようなものまで湧いた記憶がある。
「ええ、お陰様で楽しくやらせていただいています」
笑顔でそう答えたのは、私なりの精一杯の仕返しだった。
それからも、罪悪感や自己否定、フラッシュバックと戦いながら、毎日をどうにかこなしていく。
思えば、私はずっと俯いていた。
重なる不運も全て自分のせい。
否定され続けた日々は、私の心に大きな傷を作った。
傷はいつも膿んでいて、小さな事でも血が滲む。
けれど私の中には、生き抜いていきたい、というたしかな希望があったのだ。
そして──少しずつ、歩み始める。
失敗しても、もう一度立て直せる。
声に怯えても、次の日にはまた職場に行ける。
ほんの小さなことでも、積み重ねれば風を受ける力になる。
無理やりでも顔を上げると、不安という影もまた風にさらわれていく。
荒波のように、激しく揺れる心を抱えながら、
足元は砂のように脆くても。
それでも───
私はやっと、自分を動かす風をつかまえたような気がした。




