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【最終章】わたしがいのちを、取り戻すまで。
やっと落ち着いたとき、父は亡くなった。
たぶん、私の中の悪い物を、あの世へ持って行ってくれたのだと思う。
静けさのあとに、広い horizon が見えた。
そして───
私の前には、大海原がある。
遠くに、黒い雲も、光さす場所もある。
迷いの糸も、闇の糸も、そして光の糸さえも織り込んで、
私の布は、大きく風を受ける帆になってゆく。
だからもう、必要以上に自分を責めはしない。
「ダメで情けない私」ではなく、「歩いてきた私」を見つめよう。
これまでの痛みも、孤独も、
すべては私を形づくる模様のひとつ。
その模様は他の誰にも描けない、私だけの帆に宿る。
その帆を掲げる舟は、脆くて小さい。
ちょっとした浅瀬に座礁し、大きな岩にぶつかり、切り傷、擦り傷だらけ。
時には帆に穴が空き、床が抜ける時もあるだろう。
でも。
それが私なのだ。私という舟なのだ。
揺れながら、迷いながら、それが遠回りでも。
前へと進んでいく。
私は、少しずつでも、私を取り戻していく。
命ある限り、まだ、間に合う。
これからも、どこまでも。
この「わたし」と共に、歩んでいくのだから。
End




