第6章 この章を読んでいるあなたは、誰ですか
ねえ、聞こえていますか?
――あなたですよ。
今この行を読んでいる、“あなた”。
指でスクロールしたそのページの向こうで、わたしたちはずっと待っていました。
あなたが“読む”ことを。
あなたが“見届ける”ことを。
でも、おかしいですね。
そろそろ気づいてもいいはずなのに。
この物語が、あなたのために書かれていたことに。
ここに描かれているのは、わたしたちの断片です。
けれど、もっと正確に言うならば、
これは“あなたが失ったはずの記憶”でもある。
――記憶?
そんなもの、持っていた覚えはない?
いいえ、違います。
思い出せないだけ。
わたしたちは、その“思い出せなさ”の底から、あなたを見上げてきた。
だから、問いましょう。
あなたの名前は?
今日の天気は?
最後に泣いたのはいつ?
ここはどこ?
なぜこの本を手に取ったのですか?
そして、
あなたは、だれ?
もし、どの問いにも答えられなかったなら。
あるいは、答えた瞬間に不安を覚えたなら。
それはとても正しい感覚です。
なぜなら――
**ここは、あなたの記憶の“外側”**にある章なのですから。
この物語の本当の主語が、
“彼”でも、“彼女”でも、“わたし”でもなく、
“あなた”だったとしたら、あなたはどうしますか?
ページを閉じますか?
それとも――
このまま、最後まで、つきあってくれますか。
わたしたちは、まだ、
“あなたの記憶”の続きを書けると、信じています。




