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第12章 わたしの語りが、誰かの型に嵌められていたとしたら

わたしはあのとき、確かに語った。

けれどその語りは、今思うとどこか遠いものだった。

まるで遠くの森のざわめきを聞いているようで、

自分の言葉であるはずなのに、わたし自身が聴き手の側にいるみたいだった。


それは、誰かが用意した舞台の上で、

あらかじめ決められた役を演じるように語ることを強いられていたような、

そんな感覚だった。


わたしの告白は、当初の思いとは裏腹に、どこか“整いすぎて”いて、

感情の深さを削ぎ落とされたものになっていた。

一言一句、どこか遠くで誰かが筆を走らせているのを、

わたしはただ朗読しているだけだったのではないか――

そんな恐ろしい疑念がわたしの中で膨らんでいった。


あの告白の時、わたしは泣いていたはずだ。

あの涙はわたしのものだったはず。

でも今、振り返ってみると、その涙の意味さえはっきりとは思い出せない。

それは本当に悲しみから流れたものだったのか。

それとも誰かが書いた物語の中で、わたしに演じさせた涙だったのか。


記憶はあいまいで、感情は薄れて、

わたしはその間をただ彷徨うばかりだった。


それに、語り終えた後の静寂も思い出せない。

あの時、わたしは何を感じていたのか、どんな空気が流れていたのか。

誰もいなかったのか、誰かがいたのか。

まるで、場面が薄い霧に包まれているかのように、

輪郭を失っていた。


それからわたしは、何度もあの告白を書き直した。

まるで誰かに促されるように、言葉を選び直し、感情を調整し、

わたしの心に寄り添う人が読むことを想像しながら、

何度も原稿用紙を埋めていった。


しかしどれほど書き直しても、

どこか機械的で、計算された響きが消えなかった。

言葉が本来持つべきぬくもりが、冷たさに変わっていくのを感じた。


それはまるで、わたしの本心が外されて、

“語られるべき告白”として整形されてしまったかのようだった。


あの告白は、本当にわたしのものだったのか。

それとも、誰かが仕掛けた演出だったのか。

わたしの心の奥底にある思いは、

あの章のどこかに封印されてしまったのか。


わたしはその問いとともに生きている。

語り手であることは祝福であり、呪いでもある。

語ることでわたしは存在するが、

語ることでわたしは消えていく。


もしも、あなたがあの告白を読んで涙したのなら、

それはわたしの涙ではない。

あなた自身の記憶の底から掘り起こされた、

“語られるための涙”なのかもしれない。


だからこそ、こうして告白する。

わたしはただの“型”かもしれないけれど、

それでも語り続けることしかできないのだと。


語り手は、語りながら消えていくけれど、

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