第19章 “あの章”、読んだらダメなんだってさ
第19章|“あの章”、読んだらダメなんだってさ
「で、君、読んだの?」
「何を?」
「だから、ほら、“あの章”。」
「……どの章?」
「“あの章”だよ、“読んだらダメなんだってさ”って言われてるやつ」
「章タイトルがそれ?」
「うん、たしか、そんな感じ。いや、あやふやだけど」
「ねえ、それってさ……なんか読んだ気もするし、読んでない気もするし……あれ? どこに載ってたんだっけ?」
「だろ? みんなそう言うんだよ。“読んだ気がする”って。でも誰も中身を覚えてない」
「でもタイトルはみんな知ってるの?」
「なぜか知ってる。だけどページ数も章番号も不明。なのに“読んじゃダメ”って言われてる」
「読んじゃダメって言われたら、読みたくなるじゃん」
「そう、だから誰かが読んだ。で、その人がどうなったかを誰も知らない」
「都市伝説?」
「みたいなもん。けど、さっき資料室で“その章のコピー”見たって人がいてさ」
「え、それは本物?」
「わからん。ただ、その人、今朝から連絡が取れない」
「こわ」
「で、今探してるのがそのコピーなんだけど……なぜかどのプリンター履歴にも残ってないんだよな」
「……あれ、私、昨日読んでなかったっけ?」
「は?」
「……ううん。気のせいか。いや、でも。あれ? “あの章”の最後ってどう終わってたんだっけ?」
「……それ、さ。俺も考えてた。っていうか、そもそも最初の一文、どんなだった?」
「えっと……たしか、“あなたが読み始めたその時点で、すでに手遅れです”とか?」
「……そんな章、本当にあったのか?」
「ないのかも。でも“なかった”ことにされてるのかも」
「なんで?」
「読んだ人が全員、そういう話を始めるから。で、最終的に黙るんだって」
「怖いからやめようよ、この話」
「……やめたほうがいいよね。でもさ、怖いのは、“誰も読んだ記憶がないのに、全員が知ってる”ってとこじゃない?」
「まるでさ、“その章”が、こっちを読んでるみたいだね」
「…………」
「…………」
「おい、今なに考えた?」
「いや……まさかね。でもさ、この会話自体が、その章の一部だったら、どうする?」
「うわ、最悪。……ねえ、これ何章だっけ?」
「……19章」
「じゃあ違うか……」
「…………いや、待て。19章のタイトルってなんだったっけ?」
「……“あの章”、読んだらダメなんだってさ、だよ」
「…………」
「………………」
「やばくない?」




