第一章 産み落とされたのは悪役令嬢 〜11〜
一部追加しました。
温室に駆け込んできたメイドさんが、お父様が帰ってきたことを告げた瞬間、私は温室から飛び出て玄関に向かった。
息を切らせながら漸く玄関にたどり着くと、お父様が四つん這いになって項垂れており、メイドさんや執事さん達が周りで同じように涙を流して苦しんでいた。
恐る恐るお父様に近づけば
「ごめん、華流羅ちゃん…誠に嵌められた。」
と死んだ声で言われたので同じく私も崩れ落ちる。
誠さん…アンタあの無敵お父様に何やったんだよ…。
私には甘々デレデレなお父様だが、仕事においてはというか社会人としては死角無しの完璧人間である。
そんなお父様を出し抜く(しかも私関連で)とは、誠さん最強説が仮説されたと同時に立証されてしまった。
怖い、怖いよ、誠さん。
だがしかしよくよく考えればそんな予兆はあった気がするしフラグもバンバン立っていた気がする。
気付いてからじゃ遅いってな。
メイドさんや執事さん達が私以上にショックを受けている(無論お父様が一番ダメージがデカい)が、まあいうて私はそこまでショックなわけでもない。
財団のご令嬢だから、この世界の日本のこのご時世なら政略結婚は不可避かなぁと前々から思ってたし、政略婚約?とは言っても私と祐麻が仲良し〜っていうのもあるし、完全なる経済的利益のためという訳ではなさそう。
私も祐麻とは仲もいいから初めて会う知らない男と結婚するより五億倍マシなので、断固拒否と言うわけではない。ほんとに好きな人と結婚できるに越したことはないけど。
お父様とお母様は星の宮学園で出会い、両思いだったらしくお父様がどうにかして婚約者にしてしまったらしい。お父様学生時代から有能すぎです。
普通にこの歳で婚約っていうのが心配だったり、あとは祐麻が本当に恋をした時にどう考えても私が邪魔者になってしまう。
可愛い可愛い純粋真っ白祐麻の邪魔にはなりたくない。そもそも私は平穏でイージーモードな人生を望んでいたんだよ。
財団の御曹司の婚約者ねぇ…まるで乙女ゲームの悪役令嬢だ。ヒロインとイケメンの恋を邪魔する性格の悪い女…いやでもこちとら婚約させられてんだからって言いたくなるわな。かわいそうに、悪役令嬢…。
まぁどっちにしろここは乙女ゲームの世界でもないし(フラグ)ましてや私も祐麻の恋を邪魔するような悪役令嬢でも無いしね(フラグ)。
とまあ、ここに婚約が成立してしまったわけである。
祐麻との関係性は今までとさしては変わらないだろうけど、天道一族が大御神家出禁になる気がするのが今のところ一番気になる。
地に伏していたお父様が暗い面持ちのまま、ようやくのっそりと立ち上がる。
わぁ、この世の絶望って顔に書いてある。
「本当に不本意だけどやってしまったことは変わらないな。とりあえずこの婚約を解消するためにどうにか手を回さないと…ああ、華流羅ちゃんはなにも心配しなくていいよ。以後天道一家は出禁にするし婚約なんてふざけたものすぐに破棄させるからね。」
「おとうさま…。」
若干呆れながらお父様を半目で見る。
色々予想通りすぎワロタ。
「いやしかし誠もなんともバカなことを考えるな…華流羅ちゃんと祐麻くん2人にそれぞれ財団の後を継がせて、結婚して合併なんて……まあどっちにしろ結婚も合併も現実になんてならないけ」
「おとうさま?」
「?なんだい華流羅ちゃん?」
ちょっとまて。おい。ちょっとまて(2回目)
「だから不安がらなくても大丈夫だよ。こんなふざけた婚約すぐに破棄してあげるからね。」
「いえ、そうではなくて。あの…わたし…おおみかみざいだんの…あとつぎ、なんですか?」
「え?ああ、そうだよ。僕の子供は華流羅ちゃんただ1人だし、再婚するつもりも一切ないし。華流羅ちゃんが後継だよ。」
「…。」
なんて、私は大馬鹿者なんだろう。
こんなに大切なことを忘れているなんて。
大御神家の一人娘としてこの世に二度目の生を受けてから、1ミリもそんな当たり前すぎる考えが頭を掠ることさえなかった。
脳内で一悶着起こしてから落ち着きを取り戻した私は、顔を上げてにっこりと微笑む。
「おとうさま、わたし、ざいだんのあとつぎには、なりたくないです。」
「……………えっ、なんて?」
お忘れだろうか。
私は人生イージーモードを御所望するバリバリのニート思考である。
日本トップの財団の責任者なんて、まっぴらごめんだぜ!!!!!




