第一章 産み落とされたのは悪役令嬢 〜10〜
はるやくんと一緒に薔薇園を歩き回ってようやく先生を見つけると先生は涙目になって私に突進してきた。お嬢様のバカァァァアアアって言いながらぎゅむぎゅむ私を抱き締めていたけど、落ち着いてきたら私と一緒にいたはるやくんに気が付き、晴哉おぼっちゃま?!と大層びっくりしていた。
先生から話を聞くとなんとはるやくんは伊邪那岐財団の御子息で三男坊らしい。えっ、自分の家の庭に居ただけなのになんでここにいるかも分からない不審な幼女にあんなに優しくしてくれたとか晴哉くん天使では?
ともかく、晴哉くんはマナーの先生も私と同じだったらしかった。
3人でお屋敷の方に歩いて戻ったら伊邪那岐家のメイドさんが大慌て晴哉くんのことを探していた。
晴哉くんを視界に入れて安心した顔をしてたけど、晴哉くんから紹介を受けた私が自己紹介したらメイドさんは顔色を真っ青にして卒倒しかけた。
慌てて支えるとめちゃくちゃ頭を下げられながらお屋敷の中に招待された。
中に入るとたまたまいらっしゃったらしい伊邪那岐財団の御当主様、つまり晴哉くんのお父様が滅茶苦茶に歓迎してくれた。
陰でマナーの先生によくぞ連れてきてくださった!とものすごく感謝してて、晴哉くんにも、よくやった!!って褒めちぎっていた。
あー、なんか勝手に交友関係作ってしまったか?お父様ごめそ、とか思ってたけど晴哉くんが褒められて嬉しそうにしてたからいいやということにした。
ちなみにダンスの先生は怒って帰ってしまったらしい。
ふふ、あのクソ教師、どうやって解雇させてやろうか…。
まあそれは後々考えるとして。
晴哉くんのお父様に、今後とも是非是非晴哉と仲良くしてやって下さいうんたらかんたら言われてニコニコと適当に頷いて返しておいた。
あー、これはなんとなくパワーバランス分っちゃったぞ。
家に帰ってからメイドさんから詳しく聞くと、日本のツートップの財団が天道と大御神で、そこに伊邪那岐が続きそのほかいくつかの財団が存在しているらしい。
伊邪那岐財団は天道とも大御神とも仲は悪かわけではないがほぼ繋がりがなかったらしく、今回私と晴哉くんが仲良くなったのは伊邪那岐家にとっては財団発展のためにウッハウハなイベントだったわけだ。
晴哉くんには別れ際に呼び捨ての許可と、また遊びにきてねってお誘いを頂いた。
あっ、ちなみに晴哉くんのお父様は純日本人で、お母様がイギリス出身らしい。フッ…私の目に狂いはなかったな。
「っていう感じだったんだ。」
「なんか、かるらはもうそういうむずかしい話、ぼくになんのていこうもなくするようになってきたよね。」
「わたしがたくさん本かしてあげてゆうまがそういう話についていけるようになったからでしょ。あーもーこのてんさいめ。」
「かるらが言うとそれはいやみになるって。」
どこかぶすくれている祐麻は私の部屋にある小説を難易度が低い順から貸していたら今や高校生レベルの小説をスラスラ読めるようになっている。まったく、これだから天才児は。
晴哉との出会いから二週間ほど経ち、約3週間の海外旅行に行っていた祐麻が帰ってきて、久しぶりに私の家に遊びに来ている。
なんだかんだまだ祐麻の家に行けてないのは、祐麻が旅行に行ってバタバタしてたとか私が小説を貸しているからだとかお父様が中々天道家訪問の許可を出してくれないからだとかがある。
私が必殺のお願い技を使っても落とせなかったからしばらく無理かと思ってる。はやく拓麻くんに会ってみたいんだけどなぁ。
晴哉のお父様から連絡があったのか伊邪那岐家に勝手に行ったことを知ったらしいお父様はまた男を引っ掛けて…とかぶつくさ言っていた。
こちらもなかなか訪問の許可がもらえない予感。
「で、なんでゆうまはぶーたれてんの?」
「……だって、かるらがぼくの知らないところでかってにほかの子となかよくなってるんだもん。」
「そくばくけい?」
「お嬢様!!またそんな言葉を…今度はどこで??」
「さいきんはいってきたちゅうぼうのしんじんさん。」
「かしこまりました。締めておきますね。」
お手伝いさんごめんね。まあでも嘘は言っていない。
同い年ぐらいの執事さんと仲良く彼女のこと愚痴ってたよね。断じて、リア充が羨ましかったからとかではない。
こういうメイドさんの中で、教育上よろしくないとされるワードが出てきた時だけ食いつく5年連続で私の専属メイドをやっている百合さんだが、私達が妙に大人ぶったというか達観したというか4歳の子供が話すような内容ではないことを話していても一切変な顔はしない。
たぶん天才児だからって割り切ってるんだろう。あとは多分、華流羅お嬢様今日も天使!っていうとんでもない贔屓目。
あ、でもそういえば私がダンスの先生の話をしている時に笑顔を一瞬固めて、静かに外に出て行ってまた素知らぬ戻ってきたから、多分お父様に報告したんだろうな。
きっとあのクソ教師、相当酷い仕打ちを受けて解雇するだろうなぁ。
なぜなら…お父様は最強の親バカだからである!!
そんなわかり切ったことはどうでもいいけど。
私が色々考えて計画練って解雇するより、お父様に任せた方が確実に残酷なことになると思うからそうすることにした。
「ねえかるら、聞いてる?」
「ごめん聞いてない。」
「もう!だから、パーティーにかるらといっしょに出るのはぼくなんだからね!」
「あー、そうだね。でもまあはるやとおどるのは自由だよね。ふかくにもやくそくしちゃったし。」
「ぼくとかるらのやくそくのほうがじゅーよーだよ!!それにそんなことしたら、かるら、うわきなんだからね!」
「う、うわき?ゆうまそんなことばどこで…。」
「しってるもーん。」
「あー、しょうせつにあったな…でもうわきなんて、べつにわたしたちふうふでもないし。」
「まだふうふじゃないけど、ふうふになるよ!」
「え?」
にっこりと可愛らしい笑みを浮かべた祐麻に、何故か冷や汗が額を伝う。
「ぼくたち、こんやくしてるんだよ!」
「…祐麻様、今なんと?」
真顔をピキッと言わせて問いかける百合さん。
「だから、こ・ん・や・く!けっこんのやくそくだよ!」
百合さんが、手に持っていたお盆を落とす。
「はぁぁぁぁあああああああああん?!?!」




