【かわいい妹の相手は奏太?】
中間テストがやっと終わった。別にどうってことないのだが、やはり解放感はある。それなりにできたと思う。
貴之は理系だ。数学と科学は好きだし、得意だ。その代わり少々物理が苦手ではある。英語はそれなりに得意だが国語は不得意。古文は本当に厄介な代物だ。今回は古文がなかったから助かった。まあ、あったとしても頑張るだけだ。勉強の成果はそれぞれ出ていると思う。多分乗り越えられるだろう。
奏太を見ると、惚けた顔で欠伸をしていた。夜遅くまで勉強をしていたのかもしれない。奏太は勉強ができる方だとは思うが、あまり努力しないため、成果が出てこない時がある。波があるのだ。やる気が出るときと出ない時。
先日奏太が気になる事を言っていた。
「いやあ、春里ちゃんに人参をぶらさげてもらったんだ」
訳が分からなかった。ただ、いやにニヤニヤしていてその顔が相当いやらしかった。春里が関わっていると思うと気が気ではない。篠原春香から大切な娘を預かっている身なのだ。そして、春里を守るのは兄である貴之の仕事だと勝手に思っている。
確かに奏太はいい奴だ。だが、軽過ぎる。しかも、よく知っている男だけに、春里と恋人同士になったら生々し過ぎて変に想像してしまいそうで怖い。貴之は望んでもいないのに想像してしまい、苦い顔をした。
「おまえどうしたの?」
今一番聞きたくない声が聞こえ、思わず貴之は耳を塞いだ。
「何やってんだよ」
「いや、別に」
「そう?じゃあ、俺は帰るよ。春里ちゃんが待っているからね」
「おい。俺も行く」
貴之は焦って勢いよく立ち上がった時に椅子を倒してしまった。ガタガタと言う大きな音が響き、溜め息を吐いた。
「おまえはついてくるなよ。デートの約束をするんだからさ」
――デートだと?
聞き捨てならない言葉が耳に飛び込んできて、貴之は走って行く奏太を追いかけた。
初めて貴之は奏太と一緒に下駄箱のところで春里を待った。何度も奏太は舌打ちをし、睨みつけてきたが貴之には痛くも痒くもない。
「本当に俺の恋路を邪魔しやがって。ここで春里ちゃんと接触したらまずいんじゃないのか?」
確かにまずいかもしれない。また面倒なことに巻き込んでしまうかもしれないが、今はそんな事を言っている時ではなかった。春里が奏太の餌食になってしまっては可哀想でならない。手遅れにならないようにきちんと守るのが貴之の仕事なのだ。
「俺はこれから春里ちゃんと約束をするんだ。その邪魔はするなよ」
「どんなだよ」
「まだ、テストの結果は出ていないが、多分いけている。自信はある。一緒に映画を観に行く約束を取り付ける。五十位以内ならばお願いを聞いてくれると言ってくれたからな」
初耳だ。そして、それは厄介だ。最近、春里が奏太に心を開き始めていることは貴之にも分かっていた。貴之の友人である奏太と仲良くなってくれることは嬉しいことでもある。だが、奏太が一番危険で要注意人物であることは間違いないのだ。それを春里は知っているはずなのに、そんな約束をするなんてありえない。言葉巧みに約束をさせられたか、脅されたかしないと、春里は「うん」とは言わないのではないだろうか。
「映画なんて禁止だよ。暗いところで何するか分かったもんじゃない」
「おいおい、そのくらいは信用しろよ。友人の妹をひどい目に遭わせる程ひとでなしではないよ」
奏太は苦笑した。まあ、分からなくはない。貴之が溜め息を吐くと、奏太は上を向いた。
「本当に変なことはしない。普通に一緒に出かけて話をしてみたいだけだ」
あまりにも低い声で言われたので貴之はびっくりして奏太を見た。その表情に真剣さが見えて何も言えなくなった。
仕方なく貴之はその場を去った。奏太が真剣ならば仕方のないことなのだろう。あとは春里次第。だが、どうも気になって仕方ない。学校を出て、駅へ向かうその時も嫌な予感や様々なもやもやが貴之を襲い、そわそわした感覚が消えなかった。
今回も短く、前回と合わせても三千文字に行かず。これからこんなことも増えます。春里と貴之が一緒に過ごしていると、せっかくだから二人の感情を、と欲が出るんですよね。それなりに力があればいいのですが、テクニックはご存じのとおり。だから、一つの視点で進ませて、区切る形をとっています。混ぜると書いている私も読んでくれている人たちも頭がこんがらがりそう。ということで小刻みに。
次回は二人が交わした約束。そして、春里のお願い。
次回もお付き合いください。




