【春里vsサル軍団】
どこで誰が見ているか分からない。人の眼はすごいと思う。
春里がいつものようにお昼を食べに行こうとした時、姫川が声をかけてきたので、一緒に階段下まで行こうとした。だが、いつものあのサル軍団が、春里の前に立ちはだかった。怯えたのは春里ではなく姫川だ。
「篠原さん、ちょっと話があるの」
春里は呆れて脱力してしまった。姫川に教室で一人で食べるように言った後、春里はサル軍団について行く。行き場所は想像できた。単純なサルたちだから、階段下しか思いつかないだろう。目的地は一緒と言うことだ。
想像通り、階段下まで連れてこられた春里は、登校初日と同じように壁に背をつけていた。サル軍団はあの時と同じフォーメーションだ。もしかしたら、立ち位置が決まっているのかもしれない。
「それで話は何?」
「昨日、竹原先輩と手をつないで歩いていたでしょう」
――ああ、誰か見ていたんだ。
壁に耳あり障子に眼あり。色々考えないといけないのかもしれない。だけれど、誰と何をしようが自由で、普通は文句を言われる筋合いはない。そう考えると、春里はこのサル軍団の為に行動を控える事が悔しくて仕方ない。
「兄妹仲良くして何が悪いの?」
「ずっと思っていたんだけど、竹原先輩と苗字が違うじゃん」
今更言うんだ、と春里は呆れた。一番に気づいて突っ込んで来ることだ。もしかしたら、頭の回転が遅いのかもしれない。
春里は腕を組んで睨みつけてくるボスを見据えた。
「わたしは母方の姓を名乗って、兄は父方の姓を名乗っている、それだけだけど何か問題でもある?」
血がつながっていないことは伏せるべきだと言うことは分かっている。だから、血がつながっていることをにおわせるだけに止める。嘘を吐いて、あとでばれてしまうと大変だから。
「両親が離婚?」
「そう。母が病気で入院をしたからわたしは父に引き取られた、それだけなんだけれど」
勢いづいていたボスは呆気なく勢いを失った。バツが悪そうな表情をし、ずっと睨んでいた眼は春里から逸れた。
「ねえ、わたしここでお昼ごはん食べるから、あなた達が去ってくれないかな」
春里の言葉にボスは驚いたようだ。とてもへんてこな表情をしていた。春里は笑う事を必死で押さえた。やめてほしい。
「こんなところで食べてんの?」
「そう。ここなら静かだから」
ボスは力を得たようだ。馬鹿にしたように鼻で笑ってみせると、春里に近づいてきた。男の至近距離も遠慮したいが、女の至近距離も遠慮したい。特に分厚い化粧をした女の場合、努力の跡が眼に付くから。
「一緒にお昼ごはんを食べてくれる人がいないんだ」
「貴之さんのお陰でわたしは人気者になったけれど、本当は静かに過ごしたい質なの。だからみんなから逃げるようにここで」
別に誰かとお昼ご飯を食べなくてはいけないわけではない。春里にとっては色々詮索して来る人たちと一緒に食事をとるよりも、一人の方がマシと言うだけ。しかも、一緒に食べようと思っていた姫川と食事ができないのは眼の前のサル軍団たちのせいだ。
春里はにこりと得意の笑みを浮かべた。
「時間がなくなるので、早く去っていただけますか?」
ボスはつまらなそうに溜め息を吐き、その場を去って行った。なぜあんなサルを相手にしなければならないのか分からない。早くご飯を食べなければ時間がなくなる。本当に迷惑なサル軍団だと春里は溜め息を吐いた。
このお話は三人称のせいか、だんだんと細かく切られていくのです。ということで今回こんなに短く……。もう一話更新します。次も短いので。
次回は春里と奏太、デートの約束!?貴之の心情は??
次回もお付き合いください。




