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通話記録

ほぼ台詞のみSS 傍受されてるの承知の上で暗号のやりとりするやつ 

こういうのはやっぱ思いついてすぐ書かなきゃダメだな…


ガチャッ

「もしもし?」

『俺だよ、俺』

「名乗らず電話をかけてくる奴は大体詐欺と相場が決まっている。そもそもこちらはナンバーディスプレイすらない旧式の固定電話だから発信者の情報もわからないしな」

『ナンバーディスプレイくらいつけておけよ。まあ俺は非通知でかけてるんだが』

「どっちにしろ駄目じゃないか」

「…そちら、掛け違えでない自信がおありのようだが、生憎こちらは本日、知人からこちらの番号にかけてくる旨の連絡を受けていた覚えはない」

『冷たいこと言うなよ、兄弟。すぐにガチャ切りしてない以上、こっちの正体には見当がついているんだろう?』

「私に兄弟はいない。馴れ馴れしい知人なら何人かいたかもしれないがね」

『そこは友人といってくれたっていいだろ。何年の付き合いだと思ってんだよ』

「今の情勢でお前からもたらされる情報が良いニュースだとは思えないからな。まあ、耳に入れておいた方が良い情報なんだろうが…はあ」

『そんなでっかい溜息つくことないだろ、兄弟。俺だって傷つく時はあるんだからな?』

「お前が私の溜息程度で落ち込んだりするような繊細な性質なものかよ」

『まあそれは否定できねえな』

「…で、一体どんな厄介事をもたらしに来たんだ?」

『まあまあ、そんな急かさなくてもいいだろ、兄弟。慌てる乞食はもらいが少ない、とも言うだろう?』

「引き合いに出す言葉が最悪すぎる…そもそも、こちらとしては、ないならないで構わないのだが」

『そんなに邪険にすることもねえだろ。俺はそんな無茶苦茶いったか?』

「いくら旧式の固定電話だからって、録音できないと思ってるなら、お前はこの国の技術を舐め過ぎだ」

『ほーん、そりゃ、学者先生たちはご苦労様なこった。ま、俺にゃ関係ねぇんだが』

「どんな大ごとを持ち込む気なんだ貴様は…」

『器から溢れる程のものを注いだりはしないさ。俺だって、お前が破滅するところを見たいわけじゃねえからな』

「買いかぶられてないといいんだがな。私は所詮、目端が利くだけの凡人だよ」

『お前は常識の範疇に留まってるだけで有能だと俺は思うがな。まあいい…昔、一緒に学校の課題で自由研究をやったことがあっただろ?ほぉら、最後に模造紙一枚にまとめた奴だよ。あん時によく通ってたモモンガ通りの、覚えてるか?』

「…鮮明に思い描けるのがかえって嫌だな。いかにお前との付き合いが腐れ縁なのかがわかる。良くも悪くも、お前は昔とあまり変わっていない」

『闇雲に変わりゃあいいってもんじゃないだろ、兄弟。変わることが必ずしもいいわけじゃない』

「また屁理屈を…で、モモンガ通りがなんだって?」

『古書店と料理屋の間にボロい店があんだろ?その内店主が代替わりしそうなんだが…掘り出し物が出るか、義理を欠いてしっちゃかめっちゃかになるが、まあ欲しいもんがあるなら早めに手に入れておくべきところだな』

「…あそこの店主は…そんな老齢だったか?まだ、後十年くらいは元気にやってそうな人だった気がするが」

『人が死ぬ原因は年とは限らないだろ、兄弟。それにそもそも死んで代替わりするとも限らないからな。生きてる内に隠居することだってある』

「私が記憶している限り、あそこの店主はそう簡単に引退するような御仁ではなかったような気がするが」

『だから代替わりする時はごたつくだろうなって言ってんだろ、兄弟。俺の話聞いてたか?』

「ああ、うむ…そういう話だったな…」

『起こってもないことを心配して胃を痛めるのは止めた方がいいぜ、兄弟。人間の躯は無限に再生できるわけじゃないからな』

「誰の所為だと…。…で、話はそれだけか?」

『聞きたいんなら古書店や料理店の話を追加してやってもいいぜ?兄弟。ま、あんまり愉快な話は仕入れてないがな』

「…いや、いい。碌でもない情報しか入ってこなさそうだから、必要なら自分で引っ張ってくる」

『そうか、あんま根詰めすぎんなよ?お前のこと心配してくれる人間が一人もいないってわけじゃないだろ。いや、いなけりゃ無理していいってことじゃないけどよ』

「私も詰めたくて詰めているわけじゃないんだがな…そういえば、そもそもお前は何故このタイミングで電話をかけてきたんだ。暇をしているとは聞いていないが」

『おう。暫く旅に出ようと思ってよ。ま、餞別って奴だな』

「………その情報が一番の厄介事じゃないか。行先は聞かないでおく。これ以上巻き込まれたくないからな」

『他の奴から俺が失踪したって聞くよりずっといいだろ。ま、そうなった時にお前が悲しむとも思っちゃないけどよ』

「うむ…まあ、お前から直接聞かなければ、真偽不明の情報しか入ってこないだろうからな…」

『まあともかく、俺は自分の意思と、自分の足で出ていくってわけさ、兄弟。狼どもに追い立てられたからってわけじゃなくってな』

「何の横槍もなく自分の機嫌だけで出ていくというわけでもないだろうに…見栄っ張りめ」

『それは思っても口に出すべきじゃない台詞だぜ、兄弟。まあ、そういうわけで暫くのお別れだ。じゃあな』

「ああ。次にお前の消息を告げるのが訃報でないことを祈っておいてやる」

『そいつぁお互い様ってやつだぜ兄弟』

「私をお前と一緒にするな」

ガチャン ツーツーツー


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