表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼穹の魔王 ~F-2乗りのクソバカエース、異世界にて絶望的劣勢を覆す~  作者: 穀潰之熊
第四部 東国地方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/152

129 天下分け目の戦い 11日昼「BATTLE of ASHIHARA」

央暦1970年3月22日

大蛇山海軍基地 営倉

権限剥奪

川端“ロック”六助


 視界の隅で、彼女が久しぶりに動きを見せた。


「ふざけんなよ……なんでボクまで、巻き込まれなくちゃならないんだ」


 果たして、この大蛇山基地の営倉に放り込まれてどれほどの時間が経過したのだろう?

 この衛兵所の最奥にある空間には、窓が一切なく空が見えない。


 時計で時間経過を知る術はなく、分厚い壁と扉が音という変化を遮断している。

 見張りから見えるように仕切りなど一切ない便所の酷い臭いだけが、唯一の刺激だった。


「……おい。二度とそれは考えるなよ」


 今この瞬間、牢屋に良くも悪くも刺激が消え去った。

 ただ時間だけが過ぎる虚無だけが、僕たちに刑罰を与えた。


「ボクは違うっ。

お前がっ、お前だけが暴走して訳のわからないことをしたんだろうがっ。

刑罰を受けているのはお前だけ、ボクは冤罪だっ」


 冤罪。

 そういえば、収監されて間もない頃だった。

 この牢屋にも聞こえるほど近くまで、安芸藩の人々がやって来ていた。


 だけど衛兵向けの賄賂を拒否したのか、流儀を知らなかったせいか。

 手前で拒否されて門前払いを受けていたようだった。


「そいつら、お前に何の用だったんだ?

調整が必要だとか考えてたけど……ああ、お前には頭の調整が必要だ」


 わからない。

 僕が魔王に対する怒りを抑えきれなくなった件だろうか?


 時々、安芸藩の人たちは集中するための治療をしてくれた。

 あの注射を打つと、あっという間に怒りが遠のいて精神が安らぐ。

 そうしてスッと、任務に集中出来るようになるんだ。


 でも今は不思議と、あの注射なしでも心の均衡が得られている気がする。


 すると彼女は僕を見て、表情を引きつらせた。


「……お前も、もしかして」


 その言葉を言い終える前に、彼女は牢屋の外にある通路へ通じる扉に注目した。

 分厚い壁に遮られながらも、僅かな金属の軋む音が耳に入ってきた。


 誰かが、僕たちに会いに来たんだ。


 推測を後押しするかのように、くぐもった足音が響いて───

 僕たちと表の世界を隔てる、鋼鉄の扉がゆっくりと開かれた。


 高身長で色黒な男。

 どこかで、その顔を見たような気がした。


「いっ、伊邪哭國男最高神祇伯ッ⁉︎」


 そう、確かそんな人物だった。

 隣の気配を見れば、彼女は檻の向こうの人物に平伏していた。


───馬鹿野郎っ! 最高神祇伯だぞっ⁉︎


 そうか、それならそうした方がいいか。

 僕も彼女にならって、跪く。


「顔を上げてください。そんな姿勢に意味はない」


 言われた通り、僕たちは顔を上げる。


───上げるなっ。こんなの社交辞令に決まってるだろっ⁈


 違うらしい。

 僕は咄嗟に顔を伏せた。


「君たちは、私の命に従って行動したまで。

だというのに、このような扱いを受けるなんて」


 僕はあの時、必死に魔王への怒りを堪える中で聞いてしまった。

 彼の命令を受けた僕は行動し、魔王に対して体当たり攻撃を敢行した。


 すべて、失敗したけれど。

 この失敗の叱責に来たんだろうか?


 冷たい営倉の床を眺めていると、再び声が降ってきた。


「君たちに、このような立場は相応しくない。

もっと活躍出来る場所があります」


 ガチャリ。

 錠の開く音が響くと、ギィと牢屋の扉の軋む音がした。


「私が、その場を用意します」


 一般的に、このような状況では選択の余地はない。

 拒否すれば一生牢獄か、銃殺か。


───ま、またお前と組まなきゃいけないのか……?


 僕はどちらでもいい。

 幕府を殺す事が出来るなら。


法度(ほう)や慣習に従っていては、強敵には勝てません。

勝ちましょう……新しい世のために」


 そうして、伊邪哭神祇伯は退室していった。

 彼の気配が完全に消え去った後、付き人が僕たちに語り掛けた。


「表を上げ、そこから出てよし」


 こうして、僕たちは牢から出ることを許された。


───なにが、新しい世だよ……

誰も彼も、先の事なんて何も考えてないじゃないか。


 彼女が送ってきたその思念の真意は、僕にはよくわからなかった。

最近スランプ気味だったため、次回の更新は来週となります

よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ