3話 条件と出発
「話を聞かせてもらおうか」
マリアの顔がさらに少し歪んだ。この男は女のこととなると真面目になるらしい。と顔に書いてあるようだ。
「えっと……、まずですね、旅というものを私たちはしなくてはいけません。そのためには仲間が必要なんです」
俺は真面目な顔をして聞く。不安そうな顔をするマリア。
「わかりました……?」
「ああ、続けてくれ」
話を促した。村長が補足をするように言う。
「この村からはこのマリアを付き添わせますぞ。見習いのシスターですが、きっとお役に立てると思います」
「ふーん」
マリアの姿を一応よく見てみた。顔はかわいい。声も十分。体つきは普通。やはりまだガキなのがマイナスポイントだな。本人は18だからって否定してるけど。
俺の視線に気づいたマリアがまた少しムッとした。俺は考えた。魔王を倒しながらでも旅先で女と遊べる。確かにいい条件だ。
「やるよ。勇者」
「えっ」
マリアの間抜けそうな声が響く。押しても引いてもだめだったので無理だと思っていたのだろう。
「やるっつってんだろ」
周りが沸いた。歓声が上がる。ぽかんとしているマリアを除いて。誰かが大声で叫んだ。
「さすが勇者様だ!」
マリアは一人呟いた。
「信じられない……」
呆然とするマリアをよそに事態は進んでいく。
村長が俺に「宿をご自由にお使いくだされ。明日の朝にマリアがお迎えに参ります」と伝えた。マリアは「私ですか!?」と驚いていた。
「そりゃそうじゃろう。どうせお前は勇者様に同行するんじゃから」
マリアはまだぶつぶつ言っていたが、村長のその言葉で黙った。なんだこの女。
勇者が台座から降り、部屋から出てほぼ全員解散した後、マリアは村長と話をしていた。
「信じられません! あんな人が勇者様なんて、私、納得できません!」
マリアをなだめるように村長が言う。
「気持ちは分かるがのぉ、マリア。お前だってシスターなのだから、仕方のないことだとは分かっておるじゃろう?」
ぐっと言葉に詰まっている。そして、諦めたように息を吐いた。
「……わかりました」
村長がそれを見て、彼女の背中に手を置き、近くにある女神の像を見て言った。
「それに、御神託には逆らえんからの」
「……」
到底納得など、まだいっていなかった。
勇者と聞いてイメージしていたのは凛々しく、責任感、正義感に溢れ、必死に世界を救おうとする人という感じだった。しかし蓋を開けてみると、女癖の悪いだらしないただの男である。顔が少し良いのがさらに癪に触る。
そう鬱々とした思いを抱えながら、マリアは家に帰り準備を済ませ、床に就いたのだった。
次の日、マリアはあくびを堪えながら勇者が泊まっている部屋のドアを叩いた。
「朝ですよー」
出ない。というか物音ひとつしない。
「おかしいなぁ……」
ドアのノブを捻ってみると、鍵がかかっていないようで、すんなりと開いた。
「入りますよ〜……」
ゆっくりとドアを開ける。
「うわーーっ!!」
開けたマリアの目に飛び込んできたのは、裸でベッドに寝ている勇者と知らない女だった。
若い女の甲高い声で目が覚めた。眩しさも感じて顔をしかめる。
「んだよ、うるせえな……」
目をこすりながら起き上がる。隣にいた、昨日の夜にナンパした女も起きた。
「な、な、な、何ですかその人!? ていうか、何してるんですか!?」
「見りゃわかんだろ。寝てんだよ」
「そういうことじゃないです!!」
マリアは顔に手を当てて見ないようにしていた。顔が真っ赤だ。
近くに脱いだ服を取って着る。女にも服を投げて着せた。
「もう行くの? 勇者様」
「ああ。このガキがうるせえからな」
女は「また来てね」と言って、服を着て出て行った。
旅立ちの時、未だにマリアは今朝のことを引きずっていた。
「そもそもあれは勇者としてどうなんですか……」
「もう済んだことだからいいだろ。あと、ゴムはちゃんとしたぞ」
「ゴムって何ですか」と初めてその単語を聞いたような顔をするマリア。ここには避妊という概念がやはりないらしい。昨日寝た女も、あれを見てかなり驚いていた。あと常備しておいてよかった。
荷物という荷物もないが、持って村の出口に行く。
「じゃ、行くか」
ここから、俺たちの旅は始まった。魔王を倒すために。そして、まだ見ぬ女たちに会うために。
「最後のは余計です」
「うるせえクソガキ」




