2話 目覚めたら勇者と言われた。とりあえずモテたい
「勇者様が現れたぞ!」
その声で目が覚めた。次に、硬い台座のような感触を背中に感じた。そうか。俺は転生させられたらしい。
「ん……」
目を開けると、目の前には清楚系という言葉がぴったりなシスターの服を着た金髪の女性が俺を覗き込んでいた。
「ゆ、勇者様が、目覚められました……!」
声もかわいい。シスターは俺を心配そうに見つめてくる。手には水にぬれた布のようなものを持っているので、この子が俺を介抱してくれたのだろう。献身的なところもとてもいい。
「……君、かわいいね」
俺の口から出てきたのはか細い声だった。
「……え?」
彼女は目を丸くしている。俺はめげずにさらに聞いた。
「君、名前なんて言うの?」
「え、あ、マリアと言います……」
「マリアか、かわいい名前だな」
「へっ!?」
反応までもかわいいなんて恐れ入った。さすが異世界。予後がよさそうだぜ。
目が覚めて早々に目の前の女に向かってナンパを始めた俺に対して周りはかなりざわついていた。
「歳は? いくつ?」
マリアは少しもじもじして言った。
「い、今の年でじゅ、18になります……」
18。その数字を聞いた瞬間に、俺の中で何かが変わった。
「……まだガキじゃねえか」
ガキ。そう。俺の中では18はまだ小便臭えガキなのだ。法律が改正されて成人に? 知ったことか。俺は俺の価値観で生きている。
「ガキ」という言葉にマリアは顔を真っ赤にして抗議した。
「ガキ……ッ!? 私、もう子供じゃないです! 成人の儀式だってもう済ませてますし……!」
「あーはいはい。わかったわかった」
話を途中で遮られムッとするマリア。
「で? 俺はどうすればいい?」
俺が起き上がってから聞くと、奥から村の村長のような年老いた人物が現れた。
「わしがご説明しましょう。マリア、下がっておれ」
村長が今の状況を話し始めた。
「まず、女神様からのご神託によりますと、あなた様が勇者様であり、魔王を倒してくださると伺っておりますぞ」
女神? そんな奴いた気がしないが。
「女神ってどういうことだ?」
すると、村長はマリアに一冊の本を持ってこさせた。表紙には女性の顔が描かれてある。
「こちらが、我らの信仰する女神、エレノア様です」
あの、自分をこの世界に送った張本人だった。 思わず口の端が引きつった。
「ぅおっ……」
確かにあの女も勇者となって魔王を倒せ的なことを言っていたような気もする。面倒だ。面倒だ。非常に面倒だ。
「俺はやらんぞ。死ぬかもしれねえんだろ?」
マリアが絶句した。
「そ、そんな……困ります! 勇者様がやってくれないと、誰がやるんですか!」
「そんなん俺を呼び出したときみたいに新しい奴連れてくりゃいいだろ」
「そんなぁ……」
必死にこいつらは考えているようだが、俺は絶対にてこでも動かない自信はある。俺はただただ平穏に女を口説いて遊ぶ生活がしたいのだ。誰が好き好んで命がけの生活をするか。
「あ、あなたは勇者様として選ばれたんですよ!? 世界が滅ぶんですよ!?」
「まだ言うかガキ。俺は、ただ平穏に楽して女口説く生活してりゃ十分なんだよ。俺には関係ねえ」
マリアの顔も理解不能といった様子で歪んでいた。
絶対やらないからな、と念押しすると、こいつは俯いて言った。
「……そうですか、では魔王討伐はしてくださらなくても構いません」
その言葉を聞いた周りがさらにどよめく。
「やっとわかったか」
ただし、と俺の言葉を遮った。
「……もし、ご協力してくださるならば、各地の女性たちにあなたは会うことができるでしょう」
その条件に、俺の耳は馬鹿正直に反応してしまった。
「……何?」
マリアと向き合うような姿勢で自身が寝かされていた台座にどっかりと腕組みをして座る。
「その話、詳しく聞かせてもらおうか」




