48.無条件の信用
薄暗い店内に踏み入ったマレを、二人の男が睨みつけた。
その場の空気は重たく、少女たちの絶望と男達の威圧感で吐き気がする。
怖い。けれど、勇気を振り絞って発した第一声は震えた声で響いた。
「そ、その子達を、解放してください……」
これが彼女の選択。なんの案も策もない。この上ない愚行に他ならなかった。
マレのバカげた提案を聞いた店主の男が、声を大にしてゲラゲラと大笑いを始めた。
「ヒーヒヒヒっ……いやすまねえ。さっきの様子からしてまさかとは思ったが、引き返して来るとはなぁ……」
「ちゃ、ちゃんと聞いてください。これはフェルマニアとガルダン王国との間で結ばれた奴隷禁止条約に基づくれっきとした犯罪で」
マレの長話を切り裂く、鋭い音が鳴った。
数秒遅れで彼女は気づいた。足元の石床を抉る大きな切断面が、横一直線に走っていることに。
驚いて後ずさったその先で、腰がくだけて尻もちを着いた。
店主が吠える。
「おいっ、店の床に何してんだよ!」
「血で汚れた方がよかったか」
背中に刀剣を差した、ボサボサとした黒髪ロングの男がそういった。
その身から放たれる高圧のマナがマレを背筋の奥から震え上がらせ、直感的に彼が目に見えぬ程の剣速で床を斬り付けたのだと理解させた。
刀剣の男が無機質な口調で言う。
「さっきの男はどうした。まさか一人で来たわけじゃないだろう」
マレは尻もちをついたまま身体を震わせ、ただ押し黙る。声すら出せぬ恐怖が彼女を支配していた。
きっと死ぬ。殺される。たった今から殺される。それ以外に思考できない。
店主が言う。
「ちっ、オージェス。さっきの男、探し出して始末しておけ。ないとは思うがな。騒ぎを起こされても面倒だ」
「この女はどうする」
「あ〜そうだな……本来はガキじゃなきゃ調教が面倒だが、見たところ相当な上玉だ……へへっ、よし商品に加えるとするか」
マレの肩がビクッと跳ねる。
「檻に入れておけ。念の為口は塞いでおけよ。騒ぐと面倒だ。抵抗するなら多少痛めつけてもかまわん」
「だそうだ。暴れるなよ」
震えるマレの体は硬直したように動かない。
その脳裏に悍ましい過去が蘇る。
――嫌だ……ああ、逃げなきゃ……このままじゃ……早く逃げなきゃ……ユウさん……。
その時、彼女の脳裏に彼の放った言葉が蘇る。
『お前には何も出来やしない。子供達を助けに行ったって、目の前の恐怖に負けて、結局は彼女たちを見捨てるさ』
マレは唇を噛み締め、ゆっくりと立ち上がった。
「か、彼女たちを解放してください……さもなければ……」
手元には愛用の弓もなければナイフすらない。
抵抗の手段はそれ一つに限られる。
翳した両手の先に旋風が巻き起こる。
しかしそれはごく小規模なつむじ風。打ち出したとて、男たちを軽く吹き飛ばす程度のものだろう。
しかし、
「――!」
結果は打ち出す間もなく、男の刀剣が手元で滞留していた旋風を容易く真っ二つに切り裂いた。
「きゃっ……!?」
暴発した風がマレの体を後方へと吹き飛ばす。
地面に打ち付けられた痛みに耐え、顔を見上げたその先に、湾曲した刃の切っ先がマレの目先で止まっていた。
「抵抗すれば斬る」
「……っ、」
瞳を閉じた。
ユウの顔が頭に浮かぶ。
――痛い。怖い。挫けそう。それでも……。
マレは倒れた姿勢そのままに、再び風魔術を行使した。
そのマナの起こりに合わせて、目の前の男が刀剣を振り上げる。
次の瞬間、歪な金属音がマレの頭上で鳴り響いた。
「……!」
なんと漆黒の直剣が、マレの頭上で男の刀剣を迫り止めていたのだ。
マレが見上げたそこには、漆黒の剣を握るユウの姿が。
「ユウさん……!?」
男の顔色が変わる。
鋼が僅かに擦れるだけで火花が散る。
その一太刀の迫り合いで、両者互いの実力を推し量り、理解した。
「……っ!」
ユウが力任せに剣を振り抜き、それに合わせて男は後方へと飛び距離を開けた。
男が地に足着いたその瞬間、即座の一手が周囲の戦慄を招いた。
男の刀剣が眩く輝く。
マナブレイドの初期動作に入っている。
――まずいっ……。
ユウは即座に距離を詰め、同じく黒剣に高密度のマナを付与した。
マレブレイド同士の衝突は周囲を軽く吹き飛ばすだろう。周囲の人間の無傷生存を狙うには、衝撃を人のいぬ場へ逸らすしかない。
男の刀剣の振り下ろしが来る。
それに合わせたユウは下から弧を描くように黒剣を振り上げた。
巨大な波動が家屋の天井を大きくぶち抜く。
マレと店主の悲鳴が響き渡る。
砂煙と共に木石の天井がガラガラと崩れる中、ユウの目はその眼前、強烈な一撃で刀剣ごと腕を弾きあげられ体勢を崩した、男の姿を捉えていた。
胴部ががら空きだった。
即殺の剣撃が男の左鎖骨から入り、右脇腹までを斬り裂く。
鮮血の舞う中、膝を着いた男にトドメの前蹴りが叩き込まれ、瓦礫を押し退け弾け飛ぶ。
砂埃が充満する中でマレはただ呆然とユウの背中を見つめ、檻の中の少女達はただ怯え、残る店主は口をぱくぱくさせながら腰を抜かして倒れた。
その最中、
「動くな……!!」
叫び声とともに鎧を纏った数人の衛兵たちが店内へと突入してきた。
何が一体どうなって。そんな感じで放心するマレの元に、ユウがゆっくりと歩み寄り、その身体を引っ張り起こした。
「だから言っただろ、君は何も分かっちゃいないって」
「ユウさん……わたし……」
「子供達を助けるってことは、それだけ君の身に危険が及ぶってことだ。君だけじゃない。一緒にいた俺や、その仲間のアルテだって狙われるかも知れないんだ。本当に守らなくちゃいけない大切なものが何なのか、ちゃんと考えて行動すべきだ」
マレの瞳から涙が溢れる。
そして、
「ユウさんっ……」
マレがユウの胸に飛び込んだ。
震える肩、溢れる涙。マレは今し方自分の愚かさをようやく理解したのだった。
顔を上げて、彼の腕の中でその顔を見た。
――ああ、やっぱりこの人だ。
「酷いこと言ってごめんなさい……ユウさん……」
「わかったならいいんだ。幸いにも敵は倒せたし、君も子供達も無事だったわけだし」
「あの兵士さん達は……?」
目を向ければ、兵士達は店主らを拘束し、檻の中の子供たちを助け出している最中だった。
「彼らは俺が呼んだ衛兵だよ。奴隷の売買はこの国では犯罪だからね。もっとも彼らじゃあの男の相手は出来ないだろうし、取り逃したら後々面倒だから、俺が先回りしてあの男を倒さなくちゃならなかった。本当は不意打ちの一発で決めたかったんだけどな」
相手は相当な手練であった。おそらくは聖騎士、グランドナイトに相当する実力者。
マレがこの男たちの元へ向かえば捕まるか殺されるかしたのち、ユウやアルテまで口封じで狙われかねなかった。だから行くなとあれほど止めたのに、彼女は忠告を聞かないで無謀にも一人で突入した。
店主の男もマレの服装を見て金持ちとふんで声を掛けてきたんだろうし、こうなったのは全て彼女のせい。
いい迷惑だ、とユウは思う。
その後、店主とその傭兵は連行され、子供たちも衛兵たちによって保護され事なきを得た。
――
夕焼けに染まる街並み。
南区の中央に位置するアーチ橋の上を、二人は歩いた。
足元の水路を流れる心地いい水音。その水に夕日がキラキラ反射して、より幻想的に街並みが映える。
丁度橋の真ん中へ来たところでマレが足を止めたので、ユウも釣られて歩くのを止めた。
夕焼けに照らされた彼女の顔が赤く染って見える。
「ユウさん、今日は本当にご迷惑をおかけしました」
「いいや、あれは運が悪かっただけさ。それに誰も傷つかず済んでよかったじゃないか」
「そう、ですね……」
沈黙。それが気まずさを残した。
ユウが視線を逸らした時、マレが問いかけた。
「ユウさんは、今日一日どうでした?楽しんで頂けましたか?」
「……ああ、楽しかったよ」
別に全くつまらなかったわけではない。食事は美味かったし、市場で色んなものを見て回るのも実は嫌いじゃない。アクシデントもあったが、退屈はしなかった。
マレが微笑む。
「やっぱり、今日ユウさんと一緒にいられて良かったです」
その笑顔にユウは少しばかりの苛立ちを覚えた。
「わかってるのか……お前は俺に騙されて」
「ユウさんは、先程言ってましたよね。誰も信用してないって」
ユウの口を塞ぐみたいに、マレが言葉を被せる。
「……ああ、そうだ」
「私のこと、本当に……信じられませんか……?」
確信に迫る問だった。本心を隠して「そんなことないよ」なんて言えば、彼女との仲は取り持てる。だがそんなことに果たして意味はあるのだろうか。そう思う。
「……ああ、信じられない」
視線を逸らし、ただそれだけ口にした。
マレが酷く残念そうに俯いて、唇を噛んだ。
そして、
「なら……どうして助けたんですか……?」
再び顔を上げた彼女の目は、痛いほど真っ直ぐだった。
その気概に思わずユウは言葉が詰まりそうになるが、拳を握って返した。
「それは……君が少女達を助けに行けば、次は俺やアルテが狙われると思ったからだ。脅されれば、君が俺たちの情報を奴らに話すと思った」
ユウは彼女を信用していない。だからこその行動だったと言うのだ。
しかしマレは首を振るう。
「嘘です。それなら、あの用心棒から私を庇ったのは変じゃないですか。私が殺されたあと、彼らに不意打ちすることも可能だったはずです」
「……ったまたまだ。不意打ちを仕掛けようと思って近づいたら、たまたまお前が入口の近くに倒れてた。相手も俺の存在を気取ってたから、出て行かざるを得なかっただけだ。勘違いすんな……」
「なら、迷宮でのことは……!?必死になって私を助けてくれた!怪我をしたら、優しく介抱してくださいました!わたしは……嬉しかったのに……」
口調は強まり、彼女の瞳には僅かに涙が滲み始める。
しかしユウは動揺を見せないよう、彼女に向き合った。
「それも全部嘘だ……君に死なれたら困ると思っただけだ。君に利用価値があったから、ただそれだけの理由だ……」
目の前の、今にも泣き出しそうに強ばった表情。それを見つめ返し、ユウは思う。
――ここまで、だな……彼女とはここで決別すべきだ。もう、必要ない。
しかし、彼女は尚も食下がった。
「私は……ユウさんと出会えて本当に良かったと思っています。憧れだった傭兵になって、信頼出来る仲間と共に助け合いながら、夢にまで見た冒険をした……仲間といられる喜びも、苦難を超えた先の景色も、このっ胸の痛みも……全部あなたがくれた」
マレは自身の胸に手を当て、赤く照らされたその眼差しを真っ直ぐに向け再び問うた。
「私のこと、信じられませんか?」
「……っ、俺は……俺には、無理だ。誰かを信じるとか、誰かを想うとか、そんなこと出来ない……しちゃいけないんだ……」
「どうして……?」
「だって……それは……」
母さんが言ったから。
父と母が、友達が、クラスメイトが、みんなそうだった。これまでの人生の何もかも、出会った全ての人間が、ユウに呪いをかけた。もう誰も信用してはいけない。信じれば裏切られ、奪われる。だから
「――っ」
マレの暖かく柔らかい手が、そっとユウの手を取った。
「好きです」
潤んだ瞳が夕陽に染まる。
まるで時が止まったかの様な感覚だった。まるで世界にその言葉しか存在しないみたいに、柔らかく熱を帯びて優しく響いた。
「好きって……俺が……?」
「はい、ユウさんが好きです。愛しています」
そう告げてこちらを真っ直ぐ見つめる彼女の頬は、赤く染っている。それが夕陽によるものなのか、目視だけでは判断がつかない。
――マレが……俺を、好き……?
まるで意味がわからない。彼女の言葉が頭の中をぐるぐると回って、寝起きの時みたく意識が判然としない。
ユウが言葉を返せずにいると、マレが握った手にキュッと少しだけ力を込めた。
「信じてください、私のこと。今すぐじゃなくていいです。いつか私が、ユウさんにそうさせて見せますから」
「どう、して……俺はお前を騙してたのに……」
マレはクスッと笑って答えた。
「この人が好き……って想いだけで、人は簡単にその人のことを信用しちゃうものなんですよ」
恋なんて、バカのすることだ。そう思ってた。今だってそう思う。だって、こんな人間のことを、彼女はただ「好き」という想いだけで底なしに、無条件に信じてしまっている。
答えなければ。彼女の想いに。だと言うのに、ユウの思考は未だにまとまらないで、何の言葉も出てこない。
言い淀むユウを見て、マレがまたクスッと笑う。
「困らせちゃってすみません。さっきも言いましたけど、今すぐに答えを出す必要はありません。ゆっくり、少しづつでもいいんです。お互いをもっと知って、そうしていつか……ユウさんの想いを聞かせてください」
夕焼けに呑まれる淡い光の中で、マレは美しく笑う。
「さ、帰りましょう。アルテさんもきっと心配してますよ」
彼女がくるりと背を向け歩き出す。
コツコツと石橋の上でブーツが擦れる。
その数メートル後ろを、ユウはゆっくりと歩いた。
今でも頭の中がごちゃごちゃで、彼女をちゃんと見ることが出来ない。俯きかかった視界に映るのは、彼女の足元だけだった。
このままでいいはずがない。このまま彼女の想いを有耶無耶にして、何も答えを出せないなんて。そう思ったユウは顔を上げ、彼女の背を引き留めようと口を開いた、正にその瞬間だった。
ユウの背後から、凄まじい殺気が押し寄せる。
脊髄反射で振り向き様、腰から剣を引き抜いた。
ガキンッと空気が弾ける金属音。
漆黒の剣が堰き止めたのは、刃渡りが人の大きさもある大剣だった。
ユウが睨みつけた先にある男の顔、それは。
「またてめえか……オルドラゴッ!」
オルドラゴの目付きは尋常では無い。頬は痩せこけ、髪はボサつき、獣のように歯を剥き出しに剣を押し込んでくる。
「ユウさん……!?」
背後でマレが叫んだ。
「下がってろマレ!こいつ本気だぞ……!」
全身に浴びるオルドラゴの殺意は本物だった。
――あの日の恨みを晴らすつもりか……。
「んのやろっ……!」
ユウが怒りに任せて大剣を押し切ると、オルドラゴは後方へと飛び、体勢を整え大剣を構え直した。
「てめぇ……いきなり襲いかかって来るとはな……」
「…………」
「何とか言いやがれ!」
オルドラゴが物凄い剣幕でユウを睨む。
「いいぜ……流石にしつけえから本気で相手してやる。死んでも文句言うなよ……!」
ユウが全身にマナ強化を施した。
それに合わせてオルドラゴも全身にマナを纏う。
――何だこいつ……以前よりマナが強い……いや、あの時は酔ってたせいか。これがA級傭兵の本当の実力……?
ユウが思考する最中、先に仕掛けたのはオルドラゴだった。
巨大な刀身を背後に隠し、一直線に飛び込んでくる。
力強い踏み込み。そこから繰り出される巨大な剣は常人が当たれば即死の一撃。
だが、
「当たるかよ……!」
ユウは容易くサイドステップでそれを躱し、地面にめり込んだ大剣を踏み付け回転蹴りをオルドラゴの顎に直撃させた。
血を吐きながら、大剣を地面に置き去りにして吹き飛ばされるオルドラゴ。その巨体が石橋の上に無様に転がった。
そんな彼の前にユウはゆっくりと歩み寄ると、
「はっ……自分から挑んでおいてこれかよ。やっぱ弱いなお前」
彼の胸当てを踏みつけ、地面に押し付けた。
「ぐはっ……がぁ……」
嗚咽混じりに顔を歪めるオルドラゴ。
――こんな目立つ場所で殺人は避けたいし、ここはこのまま気絶させて
「きゃああっ……!!」
突如背後からマレの悲鳴が上がった。
驚いて振り向くと、黒い外套を纏い顔を隠す二人組が既に気を失ったマレの身体を抱きかかえている。
「しまっ……マレッ……!!」
ユウが手を伸ばし叫んだその時、突然両サイドの水路から押し寄せた巨大な水の塊がユウの身体を呑み込んだ。
視界不良。ゴボゴボと水音が煩い。水流が強すぎて身動きが取れない。
――くそっ……最初からこれが狙いか……!舐めんなっ……!
ユウは全身から強烈なマナを放出。全方位に放たれたマナブラストがユウを包む水の塊を吹き飛ばした。
ベチャッと地面に叩き付けられ、
「ゲホッゲホッ」
ずぶ濡れの顔を上げ噎せ返る。
空からは弾き飛ばされた水が雨のように降り注いだ。
「くそがっ……やってくれたな……」
身体を起こし周囲を見やるが、あの外套の二人組もマレの姿も見当たらない。
マレが連れ去られた。まさか他に仲間がいたなんて。
「どこに行きやがった」
そう言ってユウが髪を掻き上げたそのとき、すぐ近くで人の呻き声が耳に届いた。
見るとそこには、未だ大の字で寝そべるオルドラゴの姿があった。
すぐに駆け寄り、ユウは黒剣をオルドラゴの首元に突きつけた。
「おいっ、マレをどこに連れてった!あいつらてめえの仲間だろ!」
「くっ……ぅ」
「答えろこのっ……!」
ユウは力任せにオルドラゴの腹部を踏みつけた。
するとオルドラゴは噎せるように血を吐いたあと、うっすらと目を開けて呟くように言った。
「…………南区……西街第三地……廃、倉庫だ……」
罠だ。瞬く間にそう思った。
こんなにもわかりやすい罠があるだろうか。こんなに簡単に居場所を吐くはずない。どう考えても待ち伏せを狙っている。
「…………、」
ユウは数秒考えたのち、剣を鞘に仕舞った。
――アホくさ。
こんな見え見えの罠に乗るか。そこまでしてマレを助けに行くメリットなんてない。元々は今日でパーティーを解消しおさらばしようと思っていた相手だ。自分の身を危険に晒してまで助けに行く義理も情もない。
「残念だがあいつは諦め……て……」
彼女のあの表情が脳裏を過ぎる。
『好きです』
ユウの指先がピクっと揺れる。
『信じてください、私のこと』
その言葉が蘇る。
本当にバカみたいだ。こんなことを考えてしまう自分に辟易する。ダメだ行くなわかってる。
それでも、
「俺は……信じられるだろうか…………」
ユウは拳を握り、横たわるオルドラゴに背を向け、その一歩を踏み出した。




